コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 古本少女! ( No.56 )
- 日時: 2011/03/22 20:56
- 名前: 月読 愛 ◆o9WCM38pVQ (ID: OJbG5PHc)
『恋は友達から!』を購入したののかと一緒に、
僕は近くにある公園へと向かった。
僕たちは時計の下のベンチに腰掛けて、ののかは漫画を、僕は空なんかを見上げながら三十分ほど、特に
会話もせず、ぞれぞれのことに没頭していた。
やがてののかが声を出した。
「終わった。これ」
「どうだった?」
「なんか……どうしてかわからないけど……すごく、すごく……
せつなくなってきて、すごく心臓がどきどきするよ!
あたし滅多にしないことしたから、病気になったのか?」
「お、落ち着け、ののか! それこそ、恋ってもんだ」
「恋?」
ああ。と僕はいかにも物知りのような言い方をしているが、
経験者でもなく、自分で身に着けた知恵でもない。
これも古本少女から吹き込まれたのだ。
『こういっておけば、きっと大丈夫』
と。
「恋っていうのは、なんでだか知らないけど心臓が張り裂けそうに痛くなるんだ。それから、ドキドキする相手のことを見れなくなる」
「そ、それで、もしそうなったらあたしどうすればいいの?」
「告白だな!」
「ここここ告白ぅ!?」
「そうだ。そうしなきゃ相手に気持ちは伝わらないんだ。
ただ見てるだけ……きっとあたしなんか……っていう気持ちは
きっぱり捨て去るんだ!それが重要だ」
あまりの僕の力説に疲れたような表情が浮かぶののか。
そりゃそうだ。
考えてみろよ、僕がののかの立場だったらもう限界きてるって。
「でもさ……」
それでも不安げな声をだすののか。
「何だよ」
「……これ、漫画でしょ? あたしが恋したいのはリアルの子なの!」
僕の幼馴染の口からリアルだって!
僕も油断は禁物だな、うん。
「でも、少女漫画面白かっただろ? これを読んでると、恋の仕方が自然と分かるって話しだし、もう少し集めてみたらどうだ?
友達に借りてみるとかさ!」
「うん……湊が言うなら」
日が暮れてきたので、僕はののかを自宅に送り、(といってもすぐそこなのだが)自宅へと帰った。
鍵を差込み、まわすとガシャリと軽やかな音を立てた。
(あれ?)
もう一度今度は逆へとまわす。
ガチャリ。
どうやら鍵は最初から開いていたらしい。
僕意外に鍵をもってるのは……
固唾を呑んだ。
しかし、家の前で立ち尽くすのもアレあので、玄関へと入り、
居間へと足を進める。
電気もついていなく、真っ暗で、ここにはいないらしい。
すると二階から物音が聞こえた。
———誰かいる。
僕は犯人の正体を確かめなくても分かった。
二階へと上がり、その部屋の扉をゆっくりとあける。
ドア付近にあるスイッチを押す。
暗闇から急に明るくなったので、僕自身も目をやられたが、
犯人はもっと驚いているようだった。それもそうか。
その顔は、やっぱりあの顔で……
僕はさすがにあきれた。
「今度は何? 母さん」