コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: トゥモロー&トゥモロー&トゥモロー ( No.34 )
日時: 2011/05/21 11:33
名前: そう言えば、こしょうの味しらない (ID: lZRL.MZu)

 そのまま校門まで例の妹事情を話してなんとか盛り上げようとしたけど、残念ながら清水の俯きがちな表情を崩せなかった。はっきり言って気まずい。校門についても元気なさげな調子は続いていた。

「じゃぁ、ここで さよならしますか」

右手へ次第に隠れてゆく夕日がまだまだ眩しい。グラウンドに備えられた銀色の時計塔は時刻は4時をさして、帰宅部の生徒たちの姿を今日も惰性の中で見守り続けている。

「清水?」

 緑、青のペンもフィリップの上を走っていない。彼女は何も答えずに、何か言いあぐねているような姿の半分だけを夕日の恩恵で赤く染めている。

 俺は清水に向き合って彼女の意見が纏まるのを待つことに。その時吹いた夕方のひんやりとした風に自分の気力を奪われないように耐えながらも、清水を見据える。

「どうしたんだよ。いきなり元気なくしてさ」
— つめたい —

 ……やっとペン先が動き、こちらを見つめてくる。表情は……笑っているというか微笑んでというか? 強いていうなら、いつかの諭し笑みといったところか。俺はさっきまでの気まずい空気を払拭するようなそれには思わず見とれてしまう。

— それだけ 今回は —
 諭し笑みMAX。
「……え?」

 ぶんぶん、何かに気付いたのか大きく清水は首を振った。

消し
書き書き

— でも 仕方ない かな まだ —
「えーと、何のことかさっぱりなんだけど」

意味深過ぎる翻訳不可な彼女。人類の根源的な何かを握っていそうな立ち位置だなぁ。
まさかそれが俺ってこたぁ…ねーよな?

— まぁ 精進 したまえ 細かすぎるのも 厳禁 だし —
「……はい」

 色々不可解だが、納得してみた。


それから清水はそのまま俺に手を振り、帰って行ってしまった。



               ○
 


 何のためなんだろう? 何のために参加してくれるのかな? 

私は雄次の相変わらないデリカシーの無さに呆れるずっと前、今日の昼休みからそんなことを考えていた。

帰り道。用水路と一車線道路がガードレールで仕切られている道に歩いている私がいる。
一人だけの下校にもうなれてしまっている。だって誰かと居ても……話せないし。

さっきの自問が頭の中をぐるぐる旋回している。

雄次はどう思っているんだろうなぁって

……あれ?

 用水路の向こう側へ行くコンクリート製の橋の中央に見知った顔を見つけましたぞ? 
すたすたと軽快に靴をならしながら走ってその人の方へ。


 近づいてみると、やっぱりそれは真田先輩だった。
そのままどんどん近づいていって横に並ぶことに。その間会話用のフィリップに“部活おわったんですか”と書き書き。

真田先輩は隣で歩幅を合わせている(これきつい!)私に気付いたのか、少し不意をつかれたような挨拶をする。どうもごめんなさいです。

「あれ? 美玖ちゃん」
— 部活 おわったんですか —
上げたフィリップにはそう書いてあるはず。

「あぁ、まぁね。バスケは……」
文末を濁すようにぼそぼそとしている。

「美玖ちゃんってこっちなの? 家」
— いいえ 先輩 見かけたもの ですから —
「そっか」
— 先輩は こちらなんですね —
「違うよ」

先輩が首を横にふる。
じゃぁ、お互いなんで道草くってんの? そんな心情を読み取ったのか先輩が説明を追加する。

「これから病院に向かうんだよ。バスで20分くらいの、ほら臨海の総合病院」
— なんでですか? —
「弟が入院しているから、そのお見舞いみたいな」

へぇ。

「……ついてくるかい?」

え? そんなお荷物……じゃなかった。全く用ないし。

「おいでよ。あいつも喜ぶから。俺に彼女ができたってね」

……はぁ、ジョークかなぁ? 雄次のより酷い……同じくらいだから、抗体ある。
というかなんかの口実に利用されそうな気もするんだけどなぁ。私、今回の話では何するんだろう?

 こんな感じで、とりあえず先輩の後ろをてくてくついて行くことになりましたとさ。