コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Cherrytree road 〜桜の道〜 ( No.13 )
- 日時: 2011/05/03 12:12
- 名前: ハルナ (ID: aEqZL8P4)
第四章 真琴との接近
5月。いよいよ部活が始まった。
部活といっても本格的にやるのは中学校からだからまあ体験的なものだ。
最近は新しく入ってきた4年生に教えるのに力をいれている。
部活は週2、3日と少ない時間だが充実したハードな練習を行っている。
最初は遊びみたいなものだったけど、今では中学校で本格的にやる為に練習を積んでいるようなものだ。
でもバレーが好きだから、飽きっぽい私がこんなに頑張れる。
今日も疲れたなあ・・・。
校門を出ると、夕日の中誰かが校庭でひたすらサッカーの練習をしている。
—あの人は真琴君だ。
私は瞬時にそう思った。
しばらく見ていると、私に気づいたようで一時中断した。
「あれ、帆原 部活帰り?」
こくん、と頷く。
「真琴くんはサッカーの練習?」
しばらく間をおいて真琴が話し始めた。
「・・・おれ、キャプテンになっちまったんだ。クラブとはいえ、指導する立場にあるから、教える前に自分のプレーを見直さねえとって。これが一昨日の話」
私と真琴くんはお互いのクラブや部活についてよく話す。
お互い、共感がもてるからだ。
「私も、今は4年生が入ってきたんだけど、やっぱり教える立場って難しいよね。でもその分やりがいがあると思う。」
「そうだよな…。」
しばらくして真琴がはっとしたようにこちらを向いた。
「そうだ 帆原。10分でいいから、練習に付き合ってくれないか?1人だとパスからシュートまでが身につかないし。」
やってもいいかな、別に断る理由もないし。
—でも。
真琴の真剣な眼差しに、いろいろ考えているうちに口が動いていた。
「10分、だけだよ・・・。」
実は私、サッカーは得意中の得意だったのです。
—週末は弟とお父さんと遊びだけどサッカーやってるもんね!!
真琴のプレーが見たかったのと、久しぶりにちゃんとしたサッカーをしたかったから。と自分に言い聞かせながら校庭に足を踏み入れる。
「—んじゃ帆原は・・・。」
私はエナメルバッグとランドセルを置いて、ちょっと遠いところから真琴のサッカーボールの上に足を乗せ、軽く蹴るふりをしてみる。
腕まくりをして本気スイッチON!!
えいっ!と真琴にパス。サッカーボールは硬くて、本格的なボールだと私は思った。
—サッカーというものを甘く見ないほうがよかった・・・
そんな飛ばないし、方向がめちゃくちゃになってしまった。
それでも真琴はぴたりと止め、さくっとシュートを決める。
私も部活をしているから分かる。
あれは努力してるからこそできることだ。
キャプテンになるのも分かるような気がする・・・。
やってるうちにふと以前、サッカーの試合であるものを見たのを思い出した。
「ね、ヘディングシュートってできる?」
しばらくの沈黙。
やっぱり図々しかったかな?
やっぱりいいやって言ったほうが・・・口を開きかけたとき、真琴が言った。
「難しいな・・・ じゃ、3本お願い!!」
私はさっきよりゴールに近いところからまずは一発、力を込めて蹴る。
ダンッと心地よい音を立て、ボールが曲線を描いて飛んでいく。
っ、もーちょっと・・・!
あと少しのところだ。
・・・2発目。・・・おっしい!!
あと、一発。
心なしか、気まずい雰囲気になっている。
「ラスト一本、頑張って!」
私が言うと、
「任せとけ〜!」
真琴はいつものように笑う。
ゆっくり、ボールに力を込めてける。
バシッ。
数秒後、私は目を疑った。
ボールはゴールネットに入ってる。奇跡だ!!
ピースサインをする真琴と夕日のバックがとても美しい。
—かっこ、いい。
私は不覚にも、こう思ってしまった。
「す、すごい、真琴くんすごい!!」
「やった! って帆原、時間結構オーバーしてるけど・・大丈夫か?」
時計台を見ると、ほんとだ、10分くらいオーバーしている。
私は再び真琴の方を向き、笑顔で言う。
「今日はとってもいいものが見れたから、よかった!私も頑張るから、お互い、頑張ろう!!じゃ、また!!」
私はくるっと向きを変え、家の方向へ走る。
背後から真琴の声がする。
「帆原、今日はつきあってくれてどーもな!」
私は振り向かなかった。
—本当は時間なんてどうでもよかった。
ただ ずっと見ていたいと思っただけなのに。
でも これ以上は—駄目な気がしたから。
もうすぐ梅雨の季節です。