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Re: Cherrytree road 〜桜の道〜 ( No.59 )
日時: 2011/04/11 19:20
名前: ハルナ (ID: WPJCncTm)

運動会 後半

運動会の前半が終わり、後半が始まった。
借り人競争の後の騎馬戦は私たち紅(あか)組が勝利した。
「おねーちゃん 頑張って!!」
「俊っ! 来てたんだ。」
弟の俊まで…頑張んなきゃ!!

後半一発目100M走。結果はまたもや2位。
いいんだか悪いんだかよく分からない順位である。
幸い、足の痛みは午後になって引いていったような気がする。
前には樹里が3位のところにいる。
どうやら、同じ列の人2人が休んで運よく入賞できたのだという。
—パンッ。
次に走ったある人に、2つの視線が向けられていた。

—樹里が元の場所に戻ろうとした時のこと。
こんな会話が耳に入った。
「ウチのクラス、リレーで一番になればしばらく宿題ナシじゃん?それで、いい方法考えてきたんだ。」
話してるのはおそらく2組のリレーに出る女子2,3人だ。
「3組は潰しておかないと…だから莉菜の代わりの補欠に足引っ掛けようと思って。
あたし、同じ第5走者だから。タイム的にも僅差だし、バレなきゃ大丈夫。」
さすが!とその女子達は騒いでいた。
樹里は気づかれないようにその子達から離れた。
…花苗ちゃんに教えなきゃ—!
この考えに自分の中で反対したのは、途端だった。
花苗ちゃんに教える気にはなれない—というのが本音だった。

それから、何もないままリレーを迎えた。
3組は、足の速い人がけっこういるので1位候補とされていた。
だが、2組ともいい勝負なのだ。

ピストルがパアンと鳴り、第一走者が駆け出す。
第二第三・・・とここまでは順調に1位。
第四走者が私の近くにまで来る。
2組との差は縮まっている。
—私で逃げ切れなければ。
真琴から教えてもらったバトンの受け取り方。
紅(あか)色のバトンをしっかり握って、走り出す。
…!2組の子が迫ってきてる。足音が近くで聞こえる。
カーブで差を広げ—。
っ!2組の子が私の左足に・・・蹴るようにぶつかる。
なんとか転ばずに済んだが、—追い越されるっ!
追い越される直前、もう一度足がぶつかり、ふらふらと転ぶ。
ああ、わざとだ—。
今度は絡ませるようになったので、それは、はたから見ればそれは私自身が 足がもつれて転んだようだろう。
2組の声援と、3組のがっかりした雰囲気が伝わってくる。
立たなきゃ…いたぁっ!!
今まで経験したことの無い痛みで、立ち上がれない—
最近 降り続いていた雨でぬかるんだ地面のせい—?!
足首をひねったみたい・・・
もうヤダ、助けて—。
「帆原、あと少し。立て!」
待っていた真琴が声を上げる。
そして1組がのんびり越していく。
遠のく意識の中、足をひきずっていたのか、ジャンプしてたのか、覚えていない。
ただ必死に、真琴に、3組の人たちに迷惑をかけたくない その一心で走った。

すぐさま出番が終わった選手達から批判の声が上がるのは、目に見えていた。
「俺たちの練習はっ、水の泡かよ…お前一人のせいで!!」
「拓! そこまで 花苗を責めることはないじゃん? でも選手だって自覚は持って欲しかったな。」
……返す言葉が無い。
結局、アンカーの真琴が1組は抜いたが、2組は抜けず、ゴール。

—私には強烈な足の痛みしか残らなかった。
   ☆   ☆   ☆
—私は感情をどこかに置いてきてしまったの?
何かを思ったりしたくないっていうか思ったり出来ない……
次の休憩時間。
花苗は水道にやっとの思いで行った。
「帆原…ほんとうは2組の奴に、転ばせられたんだろ?よく考えてみたら—たった今、分かったんだ。とにかく、ごめんな…!しかも足—」
ま、真琴くんっ?
ぽろっ、ぽろぽろっ…
抑えてた感情が、どっと溢れ出る。
「大丈夫か…?!お、い!帆原!!」
体から、力が抜ける。その場に、ぐったりと膝をつく。
「っ!保健室に—圭吾! 待ってて、すぐ戻ってくるから—!」
真琴に抱えられた肩だけが—熱かった。

………
花苗ちゃん。
貴方と私は—やっぱり 友達ではいられないのかもね。
樹里のなかには、しっかりと「疑惑の種」が植えられていた。
そろそろ時間—戻ろう。
—? 誰かに肩を叩かれた。
—桜音芽衣?