コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Cherrytree road 〜桜の道〜 ( No.76 )
- 日時: 2011/04/11 19:08
- 名前: ハルナ (ID: WPJCncTm)
第九章 手紙
パッン!パン!
この音で私は目を覚ました。
「お姉ちゃん お誕生日おめでとぉ!!」
弟とお母さん、お父さんみんなでクラッカーを持ってお祝い。
つぅんと火薬の匂いと夏の湿った空気が鼻の中に入ってくる。
「ほ、ほぇ?」
第一声がコレだとは……誰が予想しただろうか。
香ばしいパンの匂いがぷうんとする。
もうそろそろ 朝食かなと思ってると、母がバタバタと私のほうへ来て言った。
「花苗。これ、花苗にでしょ? ポストに今朝、入っていたわよ。」
新聞をとりにいった母の手元には、白い封筒があった。
宛先は帆原花苗と書かれている。
差出人は、書いてないが、住所はこの学区らしい。
でも、全然ピンと来ない・・・
封を切ってみると、見たことのある丸い字が目に飛び込んできた。
「拝啓 花苗ちゃん
……久しぶり。 そしてお誕生日おめでとう。
突然でびっくりしたと思います。 急ですが今日お祝いと話したこともあるので空けといてください。
私のお屋敷で待ち合わせをしましょう。 場所は地図のコピーを同封しておいたはずです。
午後ご飯食べたら来てください。
来たら正門からインターホンを押してくだされば、家の者がご案内します。
お金は、念のため持参してください。
それでは 今日会いましょう。—尾崎樹里」
……樹里!?
しかもなぜ手紙……
「お母さん! 今日午後ちょっと出かけてくる!!」
そう言って準備をする為に自分の部屋に戻っていった。
☆ ☆ ☆
というわけで来ちゃった私。
同封されていた周辺の地図のコピーを頼りに来てみたけれど間違い、ない。
そう断言できるのは、ここが「お屋敷」にふさわしい場所であるからだ。
敷地は庭もあり、古風な雰囲気を漂わせている。
お屋敷は時代劇にあるような「縁側」がありそうな感じがする。
そういえば樹里とは3年生の時からの付き合いだけれど、一度も家へ行ったことはなかった。
そして、黒い、立派な門がお出迎え。
ここが正門だろう。
横のスペースには言っていた通り、画面の大きいインターホンがあった。
—そうだよね、アメリカに何回も行っているほどの大金持ちだもん。
インターホンをつけるかつけないかで言い争っているうちとは大違い—。
まずはインターホンを押してみることにした。
ピーンポーン……
お決まりの音が鳴る。
少しだけ待つと、女の人の声が聞こえ、私を確認すると正門が開いた。
石段の階段を上り、綺麗に手入れをされている庭はラベンダー、百合、水仙、紅葉の木・・・
いくら見てても飽きない気がする。
そしてお屋敷のドアが開き、おそらくインターホンごしに応対してくれた女の人が姿を現した。
樹里みたいな、綺麗なロングヘア。 でも樹里とは違い、茶髪。
「花苗さんですよね? わたくし、樹里の母です。」
私もつられておじぎをする。
「今 樹里の部屋にご案内します。2人でごゆっくり。」
こうして案内された部屋のドアを、とりあえず開ける。
中には樹里が、広い部屋の白いソファーに座っていた。
「樹里…来たよ。」
……こうして、これが花苗と樹里との最後になる「友達」での対面だった。