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Re: Cherrytree road 〜桜の道〜 ( No.99 )
日時: 2011/05/01 14:56
名前: ハルナ (ID: 4to6kJuE)

第十二章 試合会場での出来事

体育館、ギャラリー。
上から見るバスケは、いつもとは違ってなんだか新鮮だった。

タイマーは、残り1分と表示されている。
試合はデットヒート。
2人によると 篠小4点、相手が0点だそうだ。
激しい競り合いの後、長身の相手からマークがいない隙にシュートが放たれた。
うは!ボールは、くるくると回り 運悪く入ってしまった。
スリーポイントラインを越えているので、3点。
こっちのチームからすると、わいわいいってる相手がすごくムカついてくる。
保田はというと、白いユニフォームを着て、巧みにディフェンスを振り切っている。
シュートを何度も試みてはいるのだがパスができず、どうしてもロングシュートになってしまう。
そうなると、なかなか入らないのが難点だ。
それでもさすが、水城から来たバスケだ。
保田だけが輝いて見えるほど同じチーム内でも違うなと私は思った。
悪く言えばどちらのチームもレベルが低い—といってもこれは保田と比べてだけれど。
コートに視線を戻す。
あと20秒、30秒。
どれも、シュートには繋がらない。
お互い、息をはずませながら踏ん張っている。
15、10・・・。
相手は力ずくというか…そんな荒っぽいゲームのような感じがする。やっぱり、差を縮めようと必死になるよね。バレーだってそうだし・・・。
守りきれば勝てる!あと少し頑張って・・・!
手を合わせて、心から祈った。
9、8、7・・・あっ! これはもしや・・・。
ピピー!
この音は、試合終了の合図ではない。
ファール。相手がダブドリ、つまりダブルドリブル。
こちらに、フリースローの権利が与えられる。
私たちはひやひやしながら見ていたが、ほっとした表情になる。

スッ・・・緊迫した雰囲気の中、篠田最初の一発。
惜しくも(?)入らず。
2、3人目は全然届いていない。
スカッ・・・綺麗な音を立て、4人目の人から放たれたボールは見事にゴールネットを揺らした。
その人の周りには、仲間が勝利は決まったようなものといわんばかりに喜んでいる。
それも当然だろう。
真琴が「けいごぉー ナ・イ・ス!!」という声が聞こえたのかその人—保田は、ギャラリーを見てピース。
フリースロー5人目 ボールはクルクルと回って、何とか入った。

残りの時間は相手も諦めた様子もあり、パスを何度かしただけで試合は終了。
私たち応援に来ている3組は自分達の勝利のように 喜んだ。
   ☆   ☆   ☆
圭吾におめでとうと言いに行こうと、体育館の入り口に来た蓮華と私はばったり対面してしまった。
今一番会いたくない当の二人に。
樹里と、芽衣。
まさかこんな所で会うとは・・・予想もしていなかった事態だった。
「帆原…花苗っ。」
と芽衣が鋭い目つきで睨み、小声で言ったのははっきりと聞こえた。
前言撤回。
先程「予想もしていなかった事態」と思ったが、芽衣が圭吾のバスケが見たくて、(好きだから)樹里を誘ってきたといえば予想もなんも容易に出来たではないか—。
私はどちらかというと計算型だから予想して物事を進める方がいいんだけど。
心を落ち着かせて、3人の様子を見てみる。
樹里は、これでも焦っているようだ。
携帯でメールでもしていたのか、携帯を持つ手が小刻みに震えているのが分かった。
樹里の服装は腰にパーカー、ジーンズのパンツ。いつもの服だ。
芽衣は、ジャージ姿というラフな格好。

チャンスだと思い、思い切って口を開く。
「樹里、桜音芽衣・・・今日はなぜ??」
「なぜって…あんたには関係ないでしょっ。」
私の問いに、芽衣とは初めてまともに話したとは思えないくらいずいぶん敵対視な喋り方をしてくれた。
私があのことを知らなかったら、絶対不信感を覚えただろう。
—今、思い出した。
芽衣は男子にモテるために吹奏楽に入ったという噂や、男子にたやすく触りかけてくるらしい。
これをぶりっことうのがふさわしいだろう。
その瞬間、憎悪の気持ちが込み上げてきて、私は耐えられなくなった。
「そんなに保田が好き—??」
甘ったるい声で話す。
芽衣の表情に変化があったのはいうまでもない。
「なっ・・・蓮華か!? ぶぁっかじゃねぇの??」
ふっ—私が息を吐くのと同時に、笑みがこぼれた。
「まぁ、そう怒らずに?」
強気な発言を繰り出す。
「アホ原、蓮華ぁ よくも! くっそっ。」
近くの壁を、目はこちらに向けたまま叩く。
ドンッ!
予想通りの音が響く。
学年で頭が悪いトップ10に入る芽衣に「アホ原」とよばれたのは気に入らないが、なにか心の中ですかっとした気持ちがあった。
蓮華は、芽衣と私を交互に見ていた。
樹里は微動だにせず、どういう気持ちなのかどこか一点を見つめている。
私は黙って芽衣だけを睨んでいた。
「っはぁ、どん底に突き落としてやる—!地獄の日々が—」
そう言いかけて急に身を翻し、樹里とつかつかと帰っていった。