コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 白泉荘のひまつぶし(鬼ゴッコ開始しました♪ ( No.74 )
- 日時: 2011/08/16 10:51
- 名前: 紗夢羅 (ID: PR3Fak4z)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode
1deyz17 オレンジ色の乾杯—後篇—
「金時、茶。」 「どうぞ。」
ゴキュッ・・・
「金時、茶。」 「・・どぞ。」
ゴキュッ・・
「金t「だぁーっ!もうっ!いくらなんでも飲みすぎですっ!」
「いいじゃないか。酒じゃないんだから。」
中曽根君の活躍に見染められた梓君は体からの火照りを覚ますかのごとく、金時君からの麦茶をガブ飲みしていた。
今日は麦茶の消費が多いらしい。
先程コウスケ君と颯君の方を見ると、コウスケ君も何度か金時君に麦茶を貰っていた。
あれは多分、今日1日ユウリ君の自転車2人乗りの刑で酷いめに有ったからであろう。
「・・・倖さん、何かいります?」
梓君からの麦茶係から解放された金時君は、ボク達の輪に入りきれていない様子・・いや、入らず寝ようとしている倖君の隣に座り尋ねる。
「いえ。おかまいなく・・・・。」
すると、倖君の胸ポケットから静かなクラシック音が流れる。
「携帯なってますよ?」それに気付いた金時君が倖君の胸ポケットを指差した。
「あ、そうですか。」ピッと携帯の通話ボタンを押す・・のを、どうやら眠気眼の彼女は押し間違えたらしい。
倖君が押したのは通話ボタンではなく、今どき固定の電話にもめずらしいはずの「スピーカーホン」のボタンを押していた。
ここで知らない人のためにスピーカーホンの説明をしておこう。
スピーカーホンとは、押すと携帯のディスプレイ横、または裏にあるスピーカーを通し、携帯を耳にあてなくてもスピーカーを通して相手とやりとりできる機能である。
話に戻る。
倖君がボタンを押したとたん、ながれてきたのは80年代アイドルのヒット曲のような、軽快なユーロビートだった。
携帯を耳にあてていた倖君は、ビクッとして自分がボタンを押し間違えた事に気付いた。すると倖君は黙って携帯を開いたまま、椅子に置く。
「もしもし。」
「あー!水獅っち?」
「「「水獅っち!?」」」
その言葉にその場にいた全員が反応する。
そして全員が倖君の携帯の周りに集まって来た。
「あ、中井さん・・・」
「おっ!その声は白泉さんかいっ?鬼ゴッコは楽しんでるー?」
「はぁ、でも今は第1ステージの打ち上げ的な事を白泉荘で行っているところです。」
中井さんのテンションが正直ついていけそうにないボクは、隣にいたナオ君の肩を軽く叩く。
「へ?」ナオ君が拍子抜けしたような声でボクを見る。
「君もこの編集部の社員だろう?ボクは正直彼のテンションにはついていけないらしい・・・。倖君もあの様子だと、後2,3分で眠りにつくだろう。お詫びに君達2人にもルナ君のお隣の空き部屋を貸すからさ。
後の対応は君を中心とした住民諸君に任せる。・・じゃ。」
ボクは慌てるナオ君と、初めて聞く中井さんのテンションに興味を示す住民達を残して自分の部屋に向かった。
部屋に戻ると、消し忘れた机の灯りがオレンジ色に光っていた。
「あぁ・・朝出る時に消し忘れたのか・・・。」
ボクは机に歩み寄り灯りを消そうとする。
だが、その時。ボクの視線に1つの写真立てが映った。
その写真は、事故で亡くなったボクの父であり白泉荘の創立者。
「白泉幸太郎」
そして現在は単独渡米に成功し、プロの服飾デザイナーを務めている母。
「白泉ミヤコ」
この2人がまだ生まれてまもないボクを抱き上げ、創立当初の白泉荘で微笑んでいる姿だった。
ひまを持て余すのが苦手なこの性格は母譲りのもの。
そしてそれを打ち消すような対策を思いつくのは父譲りのものだ。
ボクはその写真を軽く撫ぜながら微笑み、呟く。
「父さん、ボクは今皆とのひまつぶしで有意義な夏を過ごしているよ・・。貴方達から譲り受けたこの性格はまだまだ発揮している途中の段階だからね。・・・・・明日のボクの活躍も期待してくれて構わないから、存分に楽しんでくれよ?」
ボクは静かに灯りを消してベッドに入る。
窓の外からは、まだにぎやかに楽しんでいる住民達の声が聞こえる。明日のゲームはどのような過程で、どのようなハプニングをおこしてボクを楽しませてくれるんだろうね・・?
期待しているよ。