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Re: 魔法使いの宝物 ( No.1 )
日時: 2011/03/29 17:10
名前: 桜野兎姫 (ID: 6fmHesqy)

〜プロローグ〜

ある冬の晴れた日、雪が一面真っ白に降り積もった森の中を俺は一人、紙でできた買い物袋を抱えて家へ向かっていた。吐き出された白い息を眺めながら俺はあの日のことを思い出す。

あの日、俺はいつものようにこの道を歩いていた。この先にある、巨大樹の下で待っているはずだった少女に会うため、まっすぐ巨大樹に向かっていたのだ。しかしその日、いくら待っても少女が現れることはなかった。それどころか、三日、四日、五日、と時がたっても結局少女は現れず、いつの間にか何年もの時がたってしまっていた。

もう巨大樹の下にあの少女が現れることはないだろうと分かっていても、いつかまた何もなかったかのようにあの木の下で待っていて、ゆっくり歩み寄っていく俺を見つけると「遅いよ!」と少しほほを膨らませた後でにっこり笑い、大きく手を振りながら駆け寄ってきてくれるのではないかと考えずにはいられない。

しかしそんな思考もそこで打ち切られることになる。驚きのあまり俺の手を離れた買い物袋が地面に転がるが、まったく気づかなかった。