コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 魔法使いの宝物 ( No.12 )
- 日時: 2011/05/01 21:07
- 名前: 桜野兎姫 ◆hGvsZemfok (ID: 6fmHesqy)
〜第六話〜
「きゃっ」
中から出てきた少女と、危うくぶつかりそうになる。出てきたのは、きれいな栗色の髪を、見事なたてロールにし、黒いドレスを身にまとった少女と、二十代くらいの男性だ。
「だれ!?」
「本日よりここでお世話になることとなりました、シュネライアと申します。シュネと呼びください」
男性の分かりやすい問いかけに、シュネはあわてることなく淡々と答えた。さすがシュネというべきか。そんなシュネの斜め前であたふたしている私を、シウルが紹介してくれる。
「そういえばまだ紹介してなかったな。そこであわててるのがルミだ! 二人ともここで暮らすことになったから、仲良くしてやってくれ」
「私、ジェラーニと申しますの。仲良くしてくださいな」
ドレスの子が手を差し出してくれる。私はその手を握り、
「こちらこそ」
とにっこり笑った。
「俺はジニアスだ! よろしく」
こっちはさりげなくシュネに手を差し出す。
「ジニアス、鼻の下が伸びきてるぞ?」
シウルの言葉で、ジニアスは残念そうに手を引っ込めた。
「それにしても、シュネライアってどこかで聞いたことがある名前なような……。どこかであったっけ?」
「そういえば、私も聞いたことがありますの」
シュネはそんなに有名人なのだろうか? 私は不思議に思いながら、シウルを見る。すると本を片付けようと立ち上がったシウルが、その疑問の答えを口にした。
「ニュースで聞いたんじゃないのか? 三年位前にテレビが大騒ぎしてたからな」
「あ! あの時の! 大ニュースだったもんなーって本物!?」
また三年前という言葉が出た。何か私に関係あることなのだろうか? 三年前、私がなくした記憶の中に何が隠されているのだろうか? 今となってはそれを知る者は数少ない。
「ねえそのニュースって?」
シュネはよく知ってるはずだ。きっとこの部屋にいる全員が同じことを考えたのだろう。より正確な情報を求めて、視線がシュネに集中する。しかしシュネは少しうつむいて黙ったままだった。
「まあそんなことより、バラの香りがするということはあいつが来たのでしょう? 今日は何の用でしたの?」
シュネの気を察したジェラーニが話題を変える。それにしてもあいつという表現は、上品なジェラーニらしくない。
「また地図を持ってきたんだよ。買ってみたけど昼から一緒に行ってみないか?」
「おお、それはいい賛成だ」
「私も賛成ですの」
「ルミとシュネさんはどうだ?」
「えっ?つれてってくれるの?」
私は思わず聞き返す。一緒に行けるなんて思っても見なかったのだ。
「当たり前だろ? まあ行きたくないなら仕方ないが」
「いくっ! いきたいっ!」
「シュネさんは?」
「もちろん行かせていただきます」
「よし! 決まりだな! 昼を食べたらすぐに出かけよう!」
シウルの言葉を合図に全員がそれぞれ準備に取り掛かるのを、私はうきうきしながら見ていた。