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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 魔法使いの宝物 ( No.13 )
- 日時: 2011/05/02 08:59
- 名前: 桜野兎姫 ◆hGvsZemfok (ID: 6fmHesqy)
〜第七話〜
私は今、山の中を歩いている。斜め前を歩くシウルは、ありえないほど大きい荷物を背負ってずんずん歩いていく。私は荷物を何も持っていないにもかかわらず、もう山登りに疲れてしまっていた。
「ねえ、はやいよ」
「もう疲れたのか?」
「うん、だってあんまり山のぼりはしないもん」
「山登りは嫌いか?」
「ううん、好きだよ? 冒険みたいで面白いじゃん」
「じゃあもう少しがんばるか。そうだ! いい物をあげよう」
私を振り返って立ち止まったシウルの足元に、青い魔法陣が開く。とたん、シウルの手から白い煙が出はじめた。白い煙は5秒間ほど出続け、収まるとシウルの手の中に、氷でできたハートが出現する。
「なにこれ……。すごい……」
目を丸くする私にシウルは優しく笑いかけた。
「元気が出るお守りだ」
「ありがとう!」
かわいらしいハート型の氷を受け取ると、前を歩いていたジニアスたちが振り返る。
「おーい遅いぞーっ何してるんだーっ」
「あー、今行くーっ」
「行こう!」
シウルは大きい声で返事をした後、私の頭をくしゃっとなでてまた歩きはじめた。私は、ハート型の氷を右手で包み、その後を追う。しかしそこで、ふと前にもこんなことがあった気がして立ち止まった。
「どうした?」
不思議そうに立ち止まるシウルに、
「ううん、なんでもない」
と答え、もう一度歩き出す。確かに前にもこんな事が会った気がする。しかし私には、山登りをした記憶などない。これが失った記憶の一部なのだろうか? 気のせいかもしれない、だがもしも記憶の一部なら……。
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