コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 魔法使いの宝物 ( No.15 )
- 日時: 2011/05/01 21:25
- 名前: 桜野兎姫 ◆hGvsZemfok (ID: 6fmHesqy)
〜第九話〜
「朝だよ! ルミおきて!」
私はシウルの声で目を覚ました。眠い目をこすりながら寝袋からでる。
「おはようシウル」
「おはよう」
寝起きでボーっとしている私の寝袋を、昨日の大きな荷物の中に片付けながらシウルはテントの隅を指差す。
「朝ごはん、早く食べてくれ」
「あっ、うん」
私は急いで昨日とは違う味のサンドイッチを食べるとテントから出る。テントの外にはもうみんな集まっていた。立てたときと同じようにテントをたたむと、早速歩き始める。
少し歩くと思ったより早く、石できた建物が見えてきた。とても大きくて古そうなその建物は冒険にぴったりでうきうきしてくる。
入り口にある二体の女神像の間を通ると、いよいよ冒険らしくなってきた。薄暗い廊下の中を足音がこだまする。いくつかの部屋を通り抜け、大きな部屋まで来たところで行き止まりになった。
「行き止まりですの?」
「いや、ジャックの話ではこの部屋に隠し扉があるらしい」
「この辺にスイッチがあるんじゃない?」
私は近くの壁に手をついて答える。
ガタッ
「ひゃっ」
その手に力を入れたとたん、手をついていたレンガが奥へ引っ込んだ。ゴゴゴゴと重い音を立てて近くの壁が開く。
「すごい」
「まさかここがスイッチだったなんて……」
しばらくその場に立ち尽くす私だったが、状況がつかめてくると、
「いこっ!」
と壁にあいた穴の中へと駆け出した。
壁の奥は、さっきの部屋の何倍もの広さがあり、なかなか奥へとたどり着けない。少し行くと部屋の一番奥に宝箱のようなものが見えてきた。私は振り向くと叫ぶ。
「宝箱あったよーっ」
それを聞いた私以外の全員の表情が曇る。
「ルミ、すぐ戻って来い」
シウルの言葉の意味が理解できなかった。宝箱はもう見えているのだ。
「どうして?」
私は首をかしげながら聞いた。
「いいから早く!」
いつになく必死なシウルの言葉に、私は戻ろうとゆっくり足を一歩踏み出した。そのとき。地面蛾が大きく揺れた。突然私の周りが暗くなる。その理由はすぐにわかった。振り返るとそこには、巨大な三つ目の狼がいたのだ。足だけでも私の二倍はあるだろう。狼はその巨大な足を大きく振り上げ、今にもその鋭いつめで私に襲い掛かろうとしている。
「逃げろーっ」
シウルの大きな叫び声が聞こえる。逃げなくては、そうわかっていても、体が動かない。そんな私の上に容赦なく大きな足が振り下ろされた。もうだめだ。私はぎゅっと目をつぶる。キンッと部屋中に乾いた音が響き渡った。