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Re: 魔法使いの宝物 ( No.2 )
日時: 2011/05/01 21:19
名前: 桜野兎姫 (ID: 6fmHesqy)

〜第一話〜

コトコトとポットの温まる音が聞こえる。私は、まだぼんやりしたままの頭で、重い瞼をゆっくり開く。

そこはおとぎ話に出てくるような小屋の中だった。
あたたかな木の壁にドアがひとつと窓がいくつかついている。少しはなれたところにテーブルと小さなキッチンがあり、壁際には、難しそうな分厚い本がたくさん並んだ本棚がある。

「よかった気がついた、買い物からかえったら家の前にルミが倒れてたんだ、びっくりしたんだぞ」

そこには、いつの間にか知らない少年がたっていた。
海のようにすんだ青色をした髪と瞳で、なぜか真っ黒なローブを身にまとった、どこか不思議な少年だ。

はっとしてぴょんととび退くがそこに床はなかった。正確には『ベッド』がだ。ゴツンといやな音がして目の前を星が舞う。

「いったぁ——」

一気に目が覚める。後頭部の激痛と戦っていると上から

「大丈夫か?」

と本当に心配そうな声がふってきた。

ベッドに座りなおすと少年はかわいらしい模様のマグカップに温かい飲み物を注いでくれた。軽くお礼を言って受け取るとその甘い香りが鼻をくすぐる

「いい香り」
「だろ? 今日買ってきたばかりなんだ」

カップには、赤い色をしたどこかでかいだことのある香りの飲み物が入っていた。見た目は紅茶のようだが、香りは紅茶とはまったく違っていた。

その甘い香りに誘われて一口くちに含むと、口いっぱいに甘みが広がる

「おいしい」

初めて飲んだはずなのに、どこか懐かしくて、暖かい味、
夢中で飲むとカップはすぐ空になった。

「そうそう、これ返しとかないとな、引っかかると危ないからはずしといたんだ」

少年はポケットから見慣れないペンダントを取り出し、こちらに差し出してくる。少年の手の中では、銀色のチェーンがついたダイヤ形の黄色い石がキラリと光る。

「私、これ知らない」
「えっ? そんなことないだろ……よく見てみろよ」

もう一度差し出されたペンダントを今度はおとなしく受け取り覗き込む、
すると突然黄色い光が部屋を包み込んだ。あっけに取られて見ている間もだんだん光は強くなる。ひときわ大きく輝いて光がおさまると、さっきまで光の中心だった場所に一人の女性が立っていた。

まっすぐな金髪を長く伸ばし、やさしそうに笑う口元は女神という呼び方が最もふさわしく思える。大きめの青い瞳はサファイアのように美しく輝き、冬であるにもかかわらず肌を見せた服は、不思議なことに少しも寒いという印象を与えない。とても美しい女性だ。

「誰だ!」

少年は私をかばうようにして立ち、さけぶ

「そんなに警戒しないでください 私、シュネライアと申します。長いですからシュネとでもよびください。私は、本日……いえ正確に言えば三年前からルミ様にお仕えするものです。」
「知ってるのか?」

少年の問いかけに黙って首を振り考える。
三年前……それは——。