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Re: 魔法使いの宝物 ( No.3 )
日時: 2011/04/04 11:03
名前: 桜野兎姫 ◆hGvsZemfok (ID: 6fmHesqy)

〜第二話〜

三年前、私はおじいさんの家で目を覚ました。私にはそのときより昔の記憶がない。気がついたらおじいさんの家のベッドで眠っていたのだ。おじいさんは倒れていた私を拾ってくれたそうだ。自分が何者なのかすら分からない私におじいさんは優しくしてくれた。思い出せないならムリに思い出さなくていいとやさしく笑い、素性の分からない私を家族として認めてくれた。

しかし、私はそのとき大きな不安のようなものを感じていた。何かとても大切なことを忘れている、そんな気がしてならなかったのだ。それが今から3年前のことだ。

そして今、もう一度強く感じた。私はとても大切なことを忘れているのだと。

ふと気になり少年のほうを見ると、さっきより警戒を強めたような険しい表情でたっていた。そんな少年に対しシュネライアと名乗る女性はどうどうと口を開く。

「オルガ様からお二人に手紙が届いております、お受け取りください。」
「へ? おじいちゃんから?」

オルガとは私のたった一人の家族である、おじいさんの名だ。渡されたかわいらしい桃色の封筒にはおじいさんの字で、『ルミちゃんへ』と書かれている。

なぜ家へかえればいつでも会えるおじいさんから手紙が届くのだろうか? 私へとどくだけならまだ分からなくもない。だがなぜ今日はじめてあったはずの少年にも届くのかどうしても分からない。しかし今は、中身が気になり、封筒にはってある桜の形をしたシールをそっとはがす。中から出てきた封筒と同じような桃色の便箋を急いで開き、目を走らせた。
手紙には、とても急いで書いたというような字でこう書いてあった。

——ルミちゃん、突然のことに混乱しているかもしれんが、分かってほしい。わしは娘と暮らすことになってもうルミちゃんと暮らすことはできなくなった。じゃからルミちゃんには、そこにおるであろう少年と暮らしてほしいんじゃ。少年に話は伝えてある。きっと力になってくれるじゃろう。ルミちゃん元気でのう——。

あまりのことに、手紙を持ったままその場に立ち尽くしてしまう。会ったばかりの少年と一緒に暮らせといわれて混乱しないほうがおかしい。どうしていいか分からずそのまま立ち尽くす私に、少年は遠慮がちに話しかけてきた。

「あの、ルミ? えっと自己紹介がまだだったな……。俺の名はシウルだ! よろしく。部屋に案内しようと思うんだがいいか?」

反射的にこくりとうなずいてから首をかしげる。さっき見たとき、ドアは一つしかついていなかったからだ。

シウルは本棚の前まで来たところで、突然振り返り

「早く!」

と大きめの声で言った。私が小走りで本棚の前まで行くと、

「推理小説とかでよくこういうのあるだろ?」

と自慢げにつぶやきながら、何冊かの本を同時に奥へ押し込んだ。