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Re: 魔法使いの宝物 ( No.4 )
日時: 2011/04/03 21:34
名前: 桜野兎姫 ◆hGvsZemfok (ID: 6fmHesqy)

〜第三話〜

ガタッと音がして本が奥へ押し込まれると、スッと音もなく重そうな本棚が左右にスライドし、間に上下へのびる暗い階段が出現した。人がやっと一人通れるくらいの広さの階段を上ろうとしていたシウルが、突然振り返る。

「シュネさん、明かりはありますか?」
「ええ、もちろん」

答えたシュネを見るが、明かりなどもっていない。ポケットにでも入ってるのかと考えたが、それもなさそうだ。そんなことを考えていると信じられないことが起こった。シュネの足元に黄色い魔法陣が開き、電気のスイッチを入れたかのように、天井に明かりがともったのだ。しかしいくら天井を見ても電球は見当たらなかった。何もない天井に明かりがともったのだ。

だが私はそんなに驚かなかった。ペンダントが光りだしたときもそうだったが、確かに最初は驚いたものの、飛び上がるほど驚いたわけでもなかった。
それどころか、こんなことは日常でいつも起こっていることで、珍しくないように感じる。

シウルも驚いた様子はなく、

「ありがとう」

と一言いってそのままトントンと狭い階段をのぼっていってしまう。シュネもその後につづき、私たちは三人縦に並ぶようにして階段を上っていった。

階段の一番上までのぼり、左側についていたドアを開いてパチッと電気のスイッチを入れたシウルは、ため息混じりに

「まいったな」

とつぶやく。

中をのぞくと本当に「まいったな」といった状態だった。そこらじゅうにくもの巣がはり、それなりに広い部屋はどこもホコリだらけだ。

「すまん! もう何年も使ってない部屋だからこんなことに……」
「う、ううん」

あわてて首を振るがそれにしても部屋はすごい状態だった。

「これはもう掃除系の魔法が使えるやつに頼んだほうがいいな」
「魔法?」

シウルは確かに魔法といった。聞き間違いなどではない。しかしなぜ魔法という言葉が出てくるのだろうか?

「そうか、ルミは知らないんだったな」
「?」
「こんなことを言われても信じられないかもしれないが、ここは魔界だ。この辺にいる人間はみんな魔法使いだ」
「私は魔法使いじゃないですよ? 魔法は使えますが」

突然シュネが会話に入ってくる。いつもの私なら、魔法がなんだとか俺は魔法使いだなんていわれたら笑い飛ばしているだろう。だが今は違った。すでにもう2回も不思議な出来事を見たのだ。もうここは魔界だといわれても信じてしまうことができる。

「シウルも魔法使いなの?」
「ああ、そうだ」
「じゃあ私はこれから魔界で暮らさなきゃならないの?」
「まあそういうことになるだろうな」
「そっか」

その一言しか出てこなかった。突然魔界で暮らさなくてはならなくなるなんて考えたこともなかったのだ。

「それにしても意外だな、もっと信じてもらえないかと思ってたんだが」
「そりゃあもうここに来てから二回も不思議なことがあったんだもん信じるしかないよ」

そういって無理やり笑うが自分の笑顔に自信が持てない。幸いシウルは気にした様子もなく

「それもそうか」

と一言いっただけだった。

「ルミちょっと出かけてこようと思うんだが留守番たのめるか? まあ留守番って言っても誰もこないとは思うが」
「うん、分かった」

三人で一階におりてからシウルを見送った後何かが引っかかっていたのだが、気のせいだろうとすぐ忘れてしまった。