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Re: 魔法使いの宝物 ( No.6 )
日時: 2011/04/06 10:59
名前: 桜野兎姫 ◆hGvsZemfok (ID: 6fmHesqy)

〜第四話〜

トントンとドアがノックされたのは、シウルが出かけて少したったときだった。することもなく、難しそうな本の立った本棚の前を、私の読めそうな本がないかな? と探しながらもう10回も往復したころにその音は聞こえた。

「はーい?」

シウルはだれも来ないと思うといっていたハズなのになぁと思いながら、私は恐る恐る戸をあける。

すると相手が見えるより先に、バラのいい香りがドアの隙間から入ってきた。ドアの外に立っていたのは20代くらいの男性で、少しカールした金髪は肩くらいまで伸びている。よくバラの香りが似合う男性だ。

「こんにちはかわいいお嬢さん、シウルはいるかな?」
「いっいえ、今はちょっと出かけてて……」
「そうか……。じゃあちょっと待たせてもらおう、お邪魔するよ?」
「えっ? ちょっと……」

男性は私の返事など聞かず、ずんずん部屋へ入っていく。とめるべきなのか分からずあたふたしているうちに男性は、いつものことだとでも言うようにイスに座ってしまった。あわてた私の代わりにシュネが口を開く

「失礼ですが、あなたはいったい何者なのですか?」
「おっこれはすまない申し遅れたね。僕はジャックって言うんだけど、君は魔法使いじゃないね。いいのかな? おかしな侵入者からご主人様を守らなくて」
「いいんですよ、その気になれば今からでもあなたを1秒以内にこの部屋からたたき出す自信がありますから」
「こわいねぇ」
「やってみますか?」
「いや、遠慮しとくよ。伝説の魔神と戦って勝つ自信はさすがにないからねぇ」

さっきからいったい何の話をしているのだろうか? 伝説の魔神とはシュネのことだろうか? 疑問が次々と浮かんでくる。しかしそんな疑問はジャックの言葉で打ち切られた。

「あれ? 彼女はあの様子だと何も知らないって感じだね? 誰かに記憶でも取られちゃったのかな?」

冗談めかしく言うジャックの言葉に私は驚かされる。

彼女とは私のことをさして言っているのだろう。しかし私が記憶を失っていることをジャックは知らないはずだ。それになぜ私が何も知らないと分かったのだろうか? 動きだけで分かったというのならすごい観察力だ。

「ジャックさんいい加減怒りますよ?」
「ははは、怖いねぇ」

ジャックはシュネの言葉に降参という風に両手を挙げる。シュネは一回じろっとにらんだがそれだけでもう何もいわなかった。

重い沈黙が部屋を支配する。時計がどこにかかっているのか分からないため、何分たったのか分からないが、すごく長い沈黙だった気がする。沈黙に耐えられず私が口を開こうとしたそのとき、ドアノブがひとりでに周り、ドアがゆっくり開いた。

「おまたせ、何もなかっ……。バラの香り? ジャックが来てるのか」

ドアから入ってきたのは用事から帰って来たシウルだった。シウルが帰ってきてくれた事により、沈黙が破られ、私はひそかに安堵する。

「やあ、おかえり」
「ジャック、今日は何の用だ? また怪しげな地図とか情報とかを売りつけに来たんじゃないだろうな?」
「ひどいなー怪しげだなんて……。僕が提供した地図の場所に行って宝物が出なかったことがあった?」
「お前は紫色のわけの分からないはにわや、口がものすごく小さくて、豆くらいしか入らないくせに、無駄に大きくて重いツボが宝物だというつもりか? 仮に宝物なのだとしても怪しくないとは言わせないぞ?」
「わけの分からないって……。僕的にはあのはにわかわいいと思うけどなー」

心底傷ついたという大げさな動きをした後、咳払いをして、つづける。

「本題に入るんだけど、実はさぁいい地図が手に入ったんだよ」
「やっぱり地図か」
「今度のは怪しくないって!」

今までの地図が怪しかったことを認めているうえに言い訳になってない気がするが本人はきづいてないようだ。

「これなんだけどね! どう? 気に入った?」

シウルは差し出された少し古い地図を、言葉とは裏腹にじっくり見ていた。シュネも地図に興味があったようで後ろから覗き込んでいる。

「面白そうな地図だな、ここってピート山の遺跡か?」
「ビンゴ! よく分かったねぇ」
「一回行ったことがあるからな、でもたいした物はなかったと思うぞ?」
「そう!それなんだけどね、どうも隠し扉があるらしいんだよ。その奥に宝物があるらしいんだ! そのばつ印のところだよ」
「面白そうだな、この地図いくらだ?」
「50万ルスだよ」
「高いな」
「そんなことないよ、あのはにわだって売ったら250万ルスにはなったろ?」
「正確には251万だ! まあいいそれをくれ」
「まいど!」

この会話の後、即金で50万ルスを払ったシウルを見て50万ルスがとほうもない大金だと気づくまでに長い時間がかかった。