コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 魔法使いの宝物 ( No.9 )
- 日時: 2011/05/02 08:57
- 名前: 桜野兎姫 ◆hGvsZemfok (ID: 6fmHesqy)
〜第五話〜
「あーこの古い紙切れ一枚が50万ルスだなんて」
シウルはさっきからずっとこの調子で、ぶつぶつ言っている。しかし、そんなことを言っているわりに、地図は気に入ったようで、ずっと地図の場所について、ぶあつい本で調べている。だが突然私のほうを向くと
「忘れてた!」
と叫んだ。びっくりしてびくっと身を震わせる私に、シウルは驚かせて悪いと軽く謝り、話し始める。
「あの後、部屋に入ったか?」
部屋とは、あのホコリだらけの部屋のことだろう。
「行ってないけど」
「行ってみてくれ! きれいになってるはずだ! あと、家具は俺が適当に選んだから、気に入ってもらえるか分からないが、そろえておいた」
いつの間にそんなことをしたのだろうか? シウルが帰って来てからずっと、私もシウルも、この部屋にいたはずだ。不思議に思いながら、私は例の魔法というやつだろうと、本を奥へ押し込む。
スッと開いた本棚の間を通ると、何も言ってないのに、シュネが明かりをつけてくれた。
「ありがとう」
お礼を言って上へのぼる。階段はさっきとまったく変わらず、狭くて薄暗いままだ。
階段の一番上までのぼると、ここにもさっきとまったく変わらない、ドアがあった。私は期待をこめてドアノブをまわす。
カチャっと気持ちのいい音がしてドアが開くと、そこは別世界だった。
明るい色を貴重とした、かわいらしい部屋は、さっきまでホコリだらけだったなんて思えない。
さっきまで家具がひとつもなかったはずなのに、ハート模様のカバーがかかった、ベッドやクッションもあり、しまっていたはずの灰色のカーテンも、かわいらしいピンクに替わり、開いている。
私は急いで階段を駆け下りると、シウルに向かって叫ぶ。
「ありがとう!」
まだ、分厚い本で調べ物をしていたシウルは、本から顔を上げると、
「喜んでもらえたならよかった」
と少し笑った。
「そういえばシュネの部屋はどうするの?」
私はふと思いついたことを口にする。
「魔神の私に部屋は必要ありませんよ」
答えたシュネは、悲しそうな目で、ペンダントを見た。
「でもあったほうが便利なら、下に一部屋空いてるけどな」
「えっ、いいんですか?」
シュネの顔がぱっと輝く。こうして笑うと本当に天使のようだ。
「ああ、下におりて一番奥の部屋だ」
「ありがとうございます」
「ねえ行ってみようよ!」
私は、うれしそうなシュネの手を握り、本棚に手をかける。
すると、まだ本を押し込んでいないのに、本棚がスッと開いた。