コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: くだらない為、無題! ( No.4 )
- 日時: 2011/07/05 22:31
- 名前: 仁都 (ID: qcI1n3YR)
第1話 「入部式」 Part3
とうとう放課後になった。
私は今、例の「別館」の前にいる。
「別館・特別授業用室」なんて立派な名前だったから、大きな校舎の中にあって、それなりの雰囲気のある建物を想像してたんだけど......
「小屋、だよね」
まるで倉庫に使われていそうな小さな小屋がそこにはあった。
一般生徒の生活する校舎の裏、敷地の端にポツンとあるそれは、綺麗なわけでもなく、ただただ寂しげな雰囲気を醸し出していた。
そしてそれは丁度、今朝私が近道の為に通った道筋に位置していた。
運動部が、「練習でおそくなったー」なんて言って帰り始める頃には、この場所はとっくに暗くなって、とてもじゃないけれど1人ではいられないだろう。
もしこの場所のいい点をひとつ挙げろと言われたならば、小屋......別館の窓のそばにある、ちいさな花壇くらい。
豪華さこそないものの、その一角だけは綺麗に手入れされていて、「小奇麗」という言葉がこれ以上ないほどに似合っていた。
一体、こんなところにある花壇を、誰が手入れしているんだろう......?
一瞬そんな疑問が頭の中で渦を巻きかけたけれど、今はやるべき事を済ませようと私は頭を振った。
やるべき事ーー
それはすなわち、私の入部した部が一体どんなもので、これから私はその部についてどうすればいいのかをはっきりさせる事。
不安は拭いきれないものの、ここまできたからにはやってしまおう。
ふう......
一呼吸置くと、私は気持ちを奮い立たせて、扉をノックした。
するとすぐに扉が開かれて、目の前に背の高い人物が現れ、
「何か」
無表情に、単調な口調でそれだけ告げた。
その人を見上げ、瞬間、私は目が離せなくなった。
外国の人かと思うほどに白く滑らかな肌、見るからに柔らかそうな長めの髪。
そして何より、綺麗に整った顔立ちをもった男の人。
薄汚れた此処にはおよそ不似合いに思えた。
ううん、彼がいればどんなに美しい場所でも、くすんで見えてしまうんだろうな......
そんなことを考えていると、彼は困ったように
「......何か」
と、それだけ繰り返した。
「あ、あの、ごめんなさい。私、今日からーー......」
「どうしたの、雅くーん? ......あ! 新しい部員の子!?」
説明しかけたその時、部屋の中から女の子の声が聞こえて来た。
いきなり聞こえて来た大声に驚いていると、その人物はひょっこりと、雅と呼ばれた彼の脇から顔を出す。
まんまるの大きな眼鏡をかけ、ショートの髪はパーマをかけたようにふんわりとしている。
大きな瞳は見開かれ、私をニコニコと見つめていた。
「新入部員だよね!? どうぞどうぞ、ようこそ我が部へー! ほら、雅くん、入れてあげて!!」
「ああ。......どうぞ」
スッと彼が脇によると、その女の子は私の手をとって部屋へ招き入れた。
......「招き入れる」というよりは、「引きずり込む」といったほうが正しいのかもしれない。
「いやぁ、今年は2人も新入部員がいるなんて! 安泰ね、雅くん部長っ」
「そうだな。最低人員はそろっているか。」
「はぁ......」
意味も分からず部屋を見回すと、もう1人の人間がいることに気付いた。
男の子にしては小柄なその子は、几帳面に制服を着て、眼鏡をかけた、いかにも真面目そうな子。
優等生との違いといえば、鞄を胸にかかえて不安そうにキョロキョロしているところくらい。
いや、まあ、それって結構おおきな違いだったりするんだけども。
「うーん、冬真はまだ? せっかくだし、部員そろって始めたいんだけど」
困り顔で、でもやっぱりニコニコしながら丸眼鏡の女の子は言った。
「始めるって、何を......?」
不意に口をついてでた疑問に、またもやにこやかに彼女はこう言う。
「それはもちろん、『入部式』だよん!」
「入部、式......?」
それってなんですか、と聞きかけた私は、いきなり開かれた扉に口をつぐんだ。
そして、そこから入って来た男子生徒にまた、愕然とした。
「冬真ー、遅いよっ」
「いつもと同じ」
「今日は新入部員ちゃんたちが居るんだからね!」
「新入部員? 此処の部に」
そういってこっちを見た彼と、目が合ってしまった。
「お前、今朝の......?」
ヤバいヤバいヤバい!
どうしよう!?
今朝の迷惑男子がまた睨みつけて来た。
「ふむ、知り合い? ......まあいいや。では、全員そろったところではじめまーす!」
彼女は「それ」をとりだしながらこう言った。
「入部式、かいしーき!!」