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Re: †he legend of story【カキコの書き手登場】 ( No.26 )
日時: 2011/03/30 20:37
名前: 凡(ぼん) (ID: CbmxSfx3)

Ep5




近くで見れば見るほどその門は高く、巨大であった。さらには合金でところどころに細工がしてある。いかにも鉄壁…という雰囲気漂うそれは、まるで入られることを拒んでいるようだ。
その立派な門構えに見入っていた3人はしばらくしてハッと気付く。
どうやって、この門を開ければいいのだろう…——-と。
萌恵が地図をカバンにしまって門に歩み寄り、コンコンと叩いてみる。

「う…だめです。これ簡単には壊せそうにないですよ?どうしましょう」

萌恵がそう言って落ち込むと、今度は黒兎が門に蹴りを入れながらぼやいた。

「ちょっと、ここまで来て何だよコレ〜!…ねぇ、どうにかなんないの?僕ハラペコで死にそうなんだけど!そると君の魔法でバーンっとヤっちゃえないわけ?」

話を振られたそるとくりーむはぼーっと門を見つめながら言う。

「えー…あー、むりむり。自分、魔法は魔法でも幻術魔法しか使えないですしー…。それに、この門———……アレですね、対魔法用の漆が塗っているようですー」

無気力な声が響いた。黒兎は聞き終えるとすぐにムッカーと呟きながらバンバンと門に蹴りを入れ続ける。それを横で見ている萌恵はおろおろするばかりだった。

「ああぁムカつくなあ、もう!対魔法用だって?それじゃあ僕の魔剣『ブラック・ラビット』も使えないじゃないか!あー…腹たつー!萌恵君、別ルートはないのかい?」

萌恵は急いで仕舞った地図を取りだし、広げる。しかし近くにルートはない。

「だ…だめです。たぶんここからだとあと二日は歩き続けなきゃ他のルートには入れませんっ」

「なんだって?二日?そんなの待てるわけないじゃん、え?」

「……うっ。す、すいません〜……」

なんで謝ってんだろ、私…。

と萌恵は一瞬思ったが、あまりにも黒い笑みを浮かばせる黒兎に怖気づいて再び頭を下げる。その間も、そるとくりーむはずっと何かを考えているようだった。そして、ポンと手を叩く。

「黒兎サン、萌恵サン、良い考えがあります」

そるとくりーむが落ちついた声で言い放つ。

「この門、昇りましょう」

それを聞いた萌恵と黒兎はお互いにポカーンと口を開けた。え?何?この空まで続いてるような高い外壁を登る?萌恵は想像もしたくなかった。あんなところから落ちたらひとたまりもない。第一に、体力的な技能としても無理だった。

萌恵が反対する前に、黒兎が叫ぶ。

「はぁ?何言ってんの?無理に決まってるじゃん!そると君みたく、僕は器用なこと出来ないの!」

「えー…でもいい案だと思ったのになー」

「ダメダメ、ぜーんぜんダメ!もっと現実的に考えてよこういう時ぐらいっ」

「……うーん。でも幻術師が現実見ちゃあ終わりですって」

「ごたごた言わないの!」

「ちぇ、はーい…」

ひとまず、そるとくりーむの提案は却下された。萌恵はよかったよかったと、胸をなでおろす。しかし、結局また振り出しに戻った。どうすればこの門を超えられるのか…。高さもあるし、強度もあるし、それに加えて魔法も使えない。…やっぱ物理的な大きな衝撃を与えなければ、壊せそうもないらしい。
もういちど細かく観察してみても、鍵穴も取っ手もないのだからどうしようもない。

萌恵はふう、と溜め息をついた。あれだよね、これRPGゲーでいう難解パズルに直面してるみたいなアレだよね。もうどうしていいかわかんないし。どっかに隠れレバーとかないのかなぁ…?それか門番がいて、話しかけたら開けてくれるパターンじゃないのかなぁ…、あ、門番いないけど。

もういちど溜め息をつく。他の2人にも絶望の色が見え始めていた。


そんな時…『ガタンガタンガタンガタン……』


「……?黒兎さん、そるとさん…何か、聞こえませんか?」

何か、重層的な大音量が近づいてくる音がする。黒兎は門に耳をつけて、静かに耳を澄ませる。そるとくりーむも門に近づいた。

「たしかに…変な音がする。大型のトラックが移動してるみたいだ」

「なんでしょうねー…?門の向こう側から聞こえているのは間違いなさそうですがー……って。…この音…」


『ガチャリ……ガタン、シュ——-------…ッ』


——-----------ガガガガガガガガガガガッッ——---------------


「黒兎サン!萌恵サン!離れてください、この音は—————ッ」

そるとくりーむが彼女らしくもなく焦りを見せ、叫ぶ。

「「え?」」

萌恵と黒兎が同時に首をかしげた——-------------その瞬間。



——-----————ドッカーンッッッ!!!!!!!——--------------



門の外壁が強烈な爆風と爆音と共に崩れかかる。萌恵、黒兎、そるとくりーむは唖然としながらそれを見上げる。
しかし呆けている場合ではなかった。次々に壊された外壁の塊が降ってくる。3人は全速力で走り切った。

「な、なななな何が起こったんですか!?」

「僕にもわかんないよっ!!早く逃げろーーッ」

「うわーーーーーーーーーーーーーー(笑)」


荒れ地の手前まで戻ってきた3人は、振り返り、漆黒の門を見つめる。
砂埃が舞い、門は門とは言えないまでに破壊されている。
悲惨な光景だった。いったい何が起こったのだろう。萌恵は砂埃の奥に人影が見えるのに気付いた。

「あ、あそこに誰かいますよ…!」

黒兎とそるとくりーむもその様子をうかがう。
砂埃がだんだんと薄れて行き、視界がクリアになっていくにつれ、その人物が現れた。

白衣に看護婦帽子の少女と、その隣に一見注射器のような形の巨大な大砲が門の向こう側にたたずんでいる。
コホン、コホンと少女が咳き込む、その様子を3人で傍観していると、少女がこちらに気付いた。

すると、「あ」と呟いて、それから慌てて服の乱れを正す。そして正面を向き直すと看護婦帽子を取って。


「へへへ…火薬の量間違えちゃった。あ、私、魔界都市グリモアの案内人を務めさせていただきます、友桃です!以後お見知りおきをーっ」


頭をちょこんと下げると、ニコリと笑って言い放つ。
その明るさとは逆に、3人は青白い顔でポカーンと立ちすくんでいた。