コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: †he legend of story【カキコの書き手登場】 ( No.3 )
日時: 2011/03/30 20:41
名前: 凡(ぼん) (ID: CbmxSfx3)

Ep1


桃源郷ノスタルジアの最北端。魔界都市グリモアとの国境に近い荒れ地に、その3人の姿はあった。最前で歩む黒兎はイラつきはじめ、中間を歩むそるとくりーむは腕を組んでぼーっと景色を眺め、最後に歩む萌恵は地図を持ってきょろきょろと辺りをみまわしている。
だんだんと魔界都市に近づいているせいか、空は暗い。さびれた森のようにところどころ木々が生えている荒れ地にはいっさい太陽の光は届いていなかった。
そこで、黒兎はピタリと歩みを止める。
それにつられて立ち止まる後ろの2人。イラついていた彼女は2人のほうに振りかえり、ドスのきいた声で言った。

「……ねぇ、まだ着かないの?僕もう疲れちゃったんだけど」

やつれた笑みで言い放つ彼女の姿に、慌てて萌恵が答えた。

「あ、ち、地図によればですねーたぶんあと少しでグリモアの領地に入れると思われますです」

地図を持つ手が震える。あきらかに黒兎はキレ気味であった。彼女は怒ると手がつけられない。
萌恵はにっこりと、ぎこちない笑みで返した。すると今度はそるとくりーむが。

「でもー、それにしてはさっきから景色が変わりませんよねー…もしかして」

と、不審の目を萌恵に向ける。萌恵はギクリと身体を震わせた。すると、そるとくりーむはキラリと目を光らせて言う。

「萌恵サン、もしかして迷っちゃったりしてますー?」

…ば、バレている。

萌恵は地図で顔を隠してアハハと笑ってみせた。

「な、何言ってるんですか、そるとさん。わ、私はそんな…迷ったり…してな…いですよぉ」

そるとくりーむの視線が痛い。
弁解しながらも萌恵は内心ドキドキしていた。そう、本当はそるとくりーむの言うとおり、まったく地図が読めずに迷ってしまったからだ。
だが、迷ったなんて言ってみろ。短気で、今にもキレそうな凶暴兎に何ヤられるかわからないぞ。
怒った彼女は手がつけられない。とさっき言った通り、黒兎はたとえそれがチームの仲間であっても、一度キレたら持ち前の『ブラック・ラビット』を野球のバットを振り回すようにして追ってくるのだ。
その恐ろしさといったら……。

「…言っときますけど、萌恵君。迷ったなんて言ったら半殺しだからね、てへっ☆」

満面の笑み。

手には長剣。

……こ、こえええええええええええええ!!!

まるで心の中を読まれた様だった。地図を持つ手が震える。やばいって。まじでやばいって。むりむりむりむり!絶対言いだせない状況だってこれ!
萌恵は半泣き状態で「は、はい…っ…」とうなづくしかなかった。
それを横目で見るそるとくりーむが、萌恵に近づく。そしてポンと萌恵の肩を叩いて、あわれみの視線を向けながら。

「ん。まぁ、どんまーい。せいぜい頑張ってー(笑)」

と耳打ちする。おま、ちょ、おま!めっちゃ他人事じゃないですか!ってか(笑)ってなんですか!馬鹿にしてるでしょ絶対!こういうときこそ仲間なんですから助けてくださいよ!…って、まぁ黒兎さんも一応仲間なんですけどね。でもあの人、恐いもん。仲間としても恐怖だもん。さらにドSだし…。

萌恵はふう、と溜め息を吐いた。こんな考え事をしている場合じゃない。とにかく地図を読まなきゃ!現在位置がわかればいいんですけど…。
もういちど、辺りをみまわす。何か手掛かりがないだろうか。なにか、なにか……

——-------その時だった——---------

『ガゥゥゥゥ……』

獣の唸り声。それも、近い!萌恵はバっと後ろを振り返る。黒兎とそるとくりーむは気付いていないようだった。息を止めて、木々の隙間を凝視する。
…が、何もいない。動く影すら見えなかった。
気のせいか?でも、確かに…。不安をぬぐい切れなかった萌恵は懸命に近くの草むらを覗き込む。…でも、いない。
萌恵が動かないのに気付いて、黒兎とそるとくりーむが再び後ろを振り向いた。

「萌恵君、さっさと行くよ——-----…って」

「も、萌恵サン——-----------ッ」

「……え?」

なんだろう。2人がなにか、驚いた顔をしている。
そるとくりーむがそっ……と指差した。

「え?私?なんのことですか?」

「じゃ、じゃなくって……」

「う、うううう後ろ見て!!」

後ろ…?そろり、と振り向く。目の前には、なんだかフカフカしたものがあった。
茶色い、獣の毛のような…?萌恵はすーっと上まで続くフカフカしたものを見上げる。
そこで、気づいた。

フカフカしたものの正体は、荒れ地に住むという魔獣、ビッグ・ベアーだった。