コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

■だいすき ( No.79 )
日時: 2011/11/14 18:56
名前: ひろ ◆iSQNAQKEEo (ID: xJuDA4mk)
参照: 花瑚さまのお話が可愛すぎて自分の書きたくない……


 お馴染みの着信メロディが流れて、わたしは慌てて携帯を手に取る。 ——この着信音に設定しているのは、ひとりしかいないから。
 携帯を開き、耳に当てる。

「 もしもしっ 」

 言葉が返ってこない。 あれ? おかしいな。 確かに着信音鳴ったんだけど。 着信音だってあの人ひとりだけの音だから、間違えないのに……。

「 あちゃあ……これメールだった…… 」

 恥ずかしい間違いをしてしまう。 顔が熱い。 それもこれも全部あの人のせいだ。 返信するときに愚痴ってやろう。
 見当違いな考え方をするわたしに、メール画面の文字が飛び込んでくる。 果たしてそこには何と書かれているのか。

『 だいじなことを いいわすれてた 』

 全部ひらがな。 ひらがなの需要はどこにあるのだろう。 しかも、大事なこと? 何を言い忘れていたのか、予想もつかない。
 結局そのメールに返せないまま、次のメールがきた。 着信音も同じ。 だから、またあの人から。

『 いちばん たいせつなのは 』

 さっきのメールの続きなのか。 でも、それにしたって意味が分からない。 何故ひらがななのかも分からない。 わたしは頭を傾げて綴られた文章を読み直す。 ——何回読んでも分かりません。
 また、携帯が震える。 着信音はまた同じ。

『 すがおの 』

 四文字。 何を伝えたいのか、あの人は。

「 わたし、馬鹿だから分かんないですよ…… 」

 気付けば独りごちてしまっていた。 だって本当に分からない。
 「 だいじなことを いいわすれてた いちばん たいせつなのは すがおの 」
 ——すがおの、何だ? 何が続くのだろう。 メールひとつでここまで頭を使わせるなんて、あの人は……。
 そこまで考えて、また着信が鳴る。 もう聞き慣れてしまった。 一日に四回も鳴るのだから。 メールボックスを開いて、画面を見つめる。

『 きみだけ 』

 やっぱりさっぱり分からない。 こうなったらあの人に電話した方がいいのか。 そう思い、メール画面を消して、履歴を開く。
 すると、今度こそ待ち侘びた着信音。

『 もしもし 』
「 もしもし? 」
『 メール、見た? 俺さ、めっちゃ頑張ってあれ書いたんだけど 』
「 理解できませんよー! わたしずっと読んでたけどさっぱり! 」
『 まじでか 』

 ははは、とあの人が笑う声が携帯のスピーカーから流れてくる。 ちくしょう、理解できなかったことがそんなにおかしいのか。 唇を無意識に尖らせ、わたしは半ば自棄になりながら言い放つ。

「 それでっ、あのメールの意味は何なんですかっ! 」
『 んー、じゃあ、ヒントだけ 』
「 もーっ! 」
『 大丈夫だって。 分かる分かる 』
「 ……ほんとですか? 」
『 うん、簡単だもん 』

 携帯の向こう側で、にっこりとほほ笑んでいるあの人が見えた気がした。 ——いや、気のせいだ。 あの人は絶対にやにやと締まりの無い顔をしているに決まってる。 わたしの馬鹿さ加減にきっとにやけているに違いない!

『 さっき送ったメールの、いちばん最初の文字だけ繋げて読んでみて 』
「 いちばん最初? 」

 −だいじなことをいいわすれてた
 −いちばんたいせつなのは
 −すがおの
 −きみだけ

 だ い す き

「 だいすき…… 」
『 実は結構無理やりなの。 でも頑張ったよ? 俺ボキャブラリー少ない割に 』
「 なんですか…… 」
『 え? 』
「 気障すぎますよ…… 」
『 それを言われるとごもっともなので返す言葉もございません 』
「 ——でも嬉しいです 」
『 もういっかい言って! 』
「 いやです 」

 急に自分が言った一言が恥ずかしくなって、少しだけ後悔。 いやはや、思ったことをそのまま言ってしまうと駄目ですね。 お口にチャックしないと。
 そろそろ通話を切ろうと、ボタンに手を伸ばす。

『 大好きだよ、お前は? 』

 声が聞こえた。 わたしは当たり前のように、平然とした声で返す。

「 好きに決まってるでしょ 」

 ぷちり。 通話を切った。
 どうやら頬の熱はしばらく冷めなさそうだ。 それまで何をして過ごそうか。
 返信をしていなかったことに気付いたわたしは、足りない頭であの人と同じことをしようとメールボックスを開いた。



                           だ  い  す  き




 *うーん、何かやっぱりスランプ。