コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

■冷たい風と君の涙 ( No.98 )
日時: 2012/01/28 10:27
名前: ひろ ◆iSQNAQKEEo (ID: xJuDA4mk)
参照: 年越しちゃったぜ!そしてぴったり1500文字!


 ◇ 北路 弥広 / キタジ ミヒロ (♀) | ◇ 月島 洸希 / ツキシマ コウキ (♂)

 ※友達以上恋人未満(BGM♪ミ/ス/タ/ー←)





 ひやり、と喉元を通る風の所為で肌が粟立つ。外れていたコートのボタンを付け直し、北路弥広は隣に立つ友人の顔を覗き見る。
(あと3ヶ月で卒業か……)
 普段あまり深く考えない北路だが、自分たちに残された日々のことを考えると流石にぼんやりと焦りを感じる。この友人とも、あと3ヶ月でお別れ。そう思うとやけに物悲しく感じてしまうのだから、心というものは実に単純である。
 ふう、と息を吐けば白く染まる。今頃自分の鼻は赤々と色付いているのだろう。そんなどうでもいいことを北路が考えていたとき。
「なに、北路。俺の顔見ながら泣きそうな顔して」
「——別に。全然泣きそうじゃないけど」
「じゃあその八の字眉毛はどういうことだよ。あと目に水張ってる」
 にや、と締まりのない笑顔を晒す目の前の友人——月島洸希に、少しの苛つきを覚える北路だった。
(人が感傷に浸ってるっていうのに)
(なあにが、『目に水張ってる』だよ、馬鹿)
(あたしはこんなに、あんたと離れるのが悲しいのに)
 油断したら本当に涙を流しそうになるので、ネガティヴな思考回路はそこまでで留めておく。北路は涙脆いのだ。——他人に見せないだけで。
 北路が黙りこんでしまったため、会話が続かず沈黙が流れる。深々と降り続く雪が、重力に沿うように下へ落ちていく。それを目で追っていた北路の視界が、不意に遮られた。
 ——気付けば、月島が満面の笑みで此方を覗いている。
「——何だよ」
「いや? 北路の目がうるうるしてんなって」
「寒すぎて目ぇやられちゃったんじゃないの、月島」
「ほんとに?」
「本当も何も、あたしには泣く理由なんてこれっぽっちもないし」
 ふ、と軽く笑うつもりだった北路の頬が、何か温かいものに包まれる。疑う間もなく、それは——月島の両手だった。
「な、っ、月島?」


「——なあ、本当に泣く理由ねえの?」


 聞いてきたことはそれだけ。なのに、北路は心を切り裂かれたような錯覚を覚えた。
(——なんで、分かるんだ)
 分かったとしても聞かないでほしかった。月島に心を暴かれたような気がして嫌だった。尚更、言いたくなくなった。
「——なんであたしが泣かなきゃいけないんだよ」
「じゃあ逆に聞くけどさ——なんでお前泣いてんだよ」
「、え?」
 頬が温かいのは、月島の両手の所為だと思っていた。そのはずだった。なのに今、月島の両手は自身の詰襟のポケットに入れられていて、北路の頬には当てていない。
 つまり、北路の頬が温かいのは。
「え、涙——?」
「今気付いたのかよ。はは、まあいいや。とりあえず拭いとけ」
 月島は詰襟の袖で乱暴に北路の涙を拭う。少し乱暴すぎた所為か、北路の顔は益々赤くなっている。
「理由ならあとで聞いてやるから、今のうちに泣いとけよ」
 ——どうせ、あと3ヶ月なんだからな。
 そういって微笑んだ月島に、北路は強めのボディブローを食らわせる。
「い、って! ちょ、何すんだ北路!」
「——あんたの所為だよ、ばーか」
 納得のいかない表情を浮かべる月島に、今度は笑顔を向けられた北路だった。




(もうちょっとだけ、馬鹿やってもいいでしょう?)





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 さて、書きましたけど。ぎゅうぎゅう詰めで見辛くて申し訳ないです。ごめんなさい。
 ちなみに北路ちゃんと月島くんは今書いてる長編の登場人物です。ねたばらし。でもキャラはこんな感じですよ。
 では、久しぶりにあげておきます。