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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ▽ 碧い空に手を伸ばして / 短編集 ( No.173 )
- 日時: 2012/12/24 20:46
- 名前: 花瑚 (ID: caCkurzS)
【ふゆび】
「寒いね」
私は手袋の上から冷えきった手をさすりながら空を見上げて、そう呟く。
「寒いな」
彼はチェックのマフラーに顔をうずめて、はぁと息を吐きながら頷く。
彼の息が白く吐き出されるのを視界の片隅に捉える。その上でちいさくちいさく星が輝くのを見た。
私と彼はそれ以上会話を続けることはなく、淡々と歩を進める。世界が私と彼の足音だけで支配されたような、気がした。
60秒前。口を開いたのは私だった。
「ねぇ、」
「……ん?」
小さく問うた私を至極間抜けな顔をした彼が見下ろす。
私は突然立ち止まって彼の方を見上げた。彼も少しびっくりしたような顔をして立ち止まる。15cm上にある彼の目と私の目がぶつかる瞬間、———世界が静寂に包まれた。
30秒前。
「すき」
静寂の中で私の口から溢れたのは、とても単純な二文字の言葉。
彼は、ぱちぱちと目を瞬かせると真っ暗な空にはぁ、と息を吐きながら。
「俺も、すき」
彼の口から溢れたのもまた、単純な二文字の言葉。
10秒前。
「手、繋ぐか」
彼が私を見て言う。寒さで鼻の頭を赤くしながら。
「そうだね」
私は少し笑いながら、手袋を取って。
1秒前。
冷たい手と、少し冷たい手が重なる。体温を分け合いながら、先程よりもゆっくりと歩を進める。
「寒いね」
「寒いな」
私と彼はそう呟いて、これさっきもやったな、なんて顔を見合わせて笑う。
私と彼が繋がるにはこれで充分なのだ。
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