コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- §跳び箱 ( No.24 )
- 日時: 2011/04/03 08:43
- 名前: 祐希 (ID: xJuDA4mk)
【 跳び箱 】
まあ、青春時代の思い出といえば、誰もが恋だの何だのをあげるだろう。
俺だってその中の1人だ。
色恋沙汰の苦手な俺には、そういう機会は一切ないと自負していたつもりだった。
——あの、不思議なやつに出逢うまで。
/
——体育の時間。
男子が妙に格好つけたがる……そんな時間だ。まあ、大方女子にもてたいがための格好つけだ。
その時の俺は、ある意味で人目を引いていた。
言うなれば、不良とかヤンキーとか、そういった類の。
つまり、荒れていたのだ。そんな奴に近づく人もさらさらいねえ。
そんなわけで、俺は暗い青春を1人で過ごしていたわけなのだが。
「あのっ……東宮くん! と、跳び箱教えてくださいっ!」
「……は?」
何だ、こいつ。俺の噂とか知らねえの? まあ、知ってたらわざわざ俺に聞くこともないだろうが。
っつーか、こいついま何て言ったよ? 『跳び箱教えてください』?
——ん? もしかして、こいつ跳び箱出来ねえの?
「お前さ、跳び箱出来ねえの?」
「あ、あは。お恥ずかしながら」
そう言って、少しだけ間をおいて。
俺が何も反応しないことを『はっきり言え』という風にとらえたのかどうなのか、そいつは言う。
「——すみません! できません! あたしあんな高度なこと出来ないです!」
「別に高度な技でもねえだろ!?」
「あたしにとっては高度なんです! そして難しいんです!」
思わず、声を張り上げてしまった俺に、躊躇いもせず張り上げ返すこの女。
——おもしれえ。
そう思ってしまった俺がいた。
それから俺とあいつの、跳び箱レッスンが始まった。
——つか、この言い方なんか嫌だな。レッスンとか俺にいちばん似合わねえだろ。
まあでも、覚えるのは早かったのか、ものの一週間であいつは軽々と8段を飛んでいた。
……って、まじで早えよ。本当は出来てたんじゃねえの?
もう教えなくても飛べるだろう、と最後に俺が教えた日。
つまり、俺とあいつが関わらなくても良くなる——俺との関係が一切なくなる日。
あいつは、この日いちばんの笑顔を見せて、言った。
「あたし、東宮くんのこと、本当は大好きでした!」
言いやがった。しかも、生徒がまだまばらに残っていた。
それなのに、青春というのは恐ろしい。あんなに不良ぶってた俺が、こんなにも熱くなってしまった。
「俺もお前のこと好きだ! 多分、お前よりかずっとずっとな!」
名前も知らねえそいつに、初恋とやらをしてしまった。
俺の青春。跳び箱での出逢い。
「あたしは、東宮くんよりもっと前から、大好きでした! だから、あたしと付き合って下さい!」
その問いに、俺が応えたのは、言うまでもない話だろ?
