コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: =桜陽炎と空蜻蛉= ( No.22 )
日時: 2011/05/09 18:56
名前: 生死騎士 (ID: mk2uRK9M)
参照: 憐君の雑学知識はとっても微妙です。

「で?これからどーすんの?」

棗が遠くを指差しながら、言う。

「あの街まで行ってみる?」

「・・・それ以外にどうしろと?」

「だね☆」

・・・絶対こいつ、地獄に堕ちてもこんな調子だろ・・・
とか思いながら、丘を降りる。
途中で、見たこと無い動物やら鳥やらがこちらに視線を向けてきた。
やっぱり俺らの世界とは違うようだ。

ただひとつ言えることがあった。
それは、どの動物たちも身体の一部分が桜色をしている、ということ。
──そう、俺の右眼のように。



        ***



街は人でごった返していた。
祭りでもあるのか、建物と建物の間には色とりどりのフラッグが吊るされている。
俺達は互いにはぐれないように確かめあいながら、行く当ても無く道を進んだ。

待ち行く人々の会話に耳を澄ませると、このお祭り騒ぎはこの国の皇女の誕生日のせいだということが分かった。
もうすぐ自分達が歩いているこの大通りも皇女の馬車やらなんらやが通るため、通行が規制されるらしい。

何かだるい時期にこっち来ちゃったな・・・とため息
混じりにそっぽを向く。

そのとき。

なんとなく視線を彷徨わせた路地の奥に、「こんなところに居るはずがない」人物の影が見えた気が、した。

「!!?」

バッと顔をあげて、目を凝らす。

・・・いる。

「俺の眼を綺麗だと言ってくれた、あの子」の姿。
影で真っ黒なシルエットしか見えないけど、確かにあの子・・・。

後先考える暇もなく、俺の体は動いていた。

「えっ・・・ちょっ、憐!!」

後ろで皆が止めるが、俺の足は止まらなかった。

一目散にさっきの路地に走りこむ。
そこに彼女の姿は無い。

何処に・・・
何処に行ったんだ・・・!?

「×××」・・・ッ!!

辺りを見回してみるが、それらしき影は無かった。
見間違い・・・?
でも、確かに・・・!?

混乱する俺に皆が走り寄ってくる。

「どうしたのさ、イキナリ!!何かあったの!?」

心配そうにミチルが俺の顔を覗き込む。
気がつけば汗びっしょりだった。

「顔色、悪いよ・・・?」

俺は浅い呼吸を繰り返しながら、これだけ呟いた。



「・・・あの子が、居たんだ・・・」