コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

リバーシブル ( No.13 )
日時: 2011/04/15 21:09
名前: 北野(仮名) (ID: OYJCn7rx)

=第9話=大家族

「ハアアアアアァァァァァァァ!!!!!!」
ド田舎の風景の中に竜門中学パズル部一向の怒鳴り声がこだまする。
向いの山に反響し、山彦が帰ってくる。
「先輩が伊達正宗の子孫!?冗談にしては正宗に失礼すぎますよ!!」
「君の今言ったことも相当失礼じゃないかな、紫表君?」
定番の怒りマークを付けた顔で、こっちに近寄ってくる。
だが今回ばかりは黙って引き下がれない。なぜなら、
伊達正宗は超がつくほどの有名な偉人。
こんな顔だけ整った腹黒極悪な先輩に子孫などと言わせては
いけない!紫表はそう決心し、目つきを鋭くして話を再会した。
「ですからせんぱい!じょ・・」
「ごめんなさいは?」
どこから出てきたのかは分からないが、伊達が紫表に向かって
竹刀を振りおろす。もう少しで紫表に命ちゅ・・
「がめんなさあぁい!!」
意思は簡単に打ち砕かれてしまった。(あわれ)


「うおーーーーーーーい、帰って来たぞーーー」
でっかい門を開けるのを男子四人組にまかせて大声で自分が
帰って来たことを家にいる人たちに伝える。
「おー、美千流。来たのか」
最初に出迎えてくれたのは一人の中年の男性だった。
「ただいま、お父さん。こっちのみんなは部活仲間」
先輩の話を聞くやいなやすぐに先輩が父と呼んだ人は
こちらにおじぎをしながらやって来た。
「いつも娘がお世話になってます。
 見ての通りこいつはちゃらんぽらんで頭が春で・・」
「ちょい待ち、やめんかお父さん!」
全力でその恥ずかしい行動を止めにかかる先輩。
さすがに親には頭が上がらないようである。


「あっ、飲み物買い忘れた」
小島が思い出したように声をあげ、しまったなあというように
顔をしかめた。
今は太陽がギラギラと照りつけていて、4月の終わりだというのに、
じりじりいうような暑さが襲いかかってきているのである。
「じゃあ俺と代介で買いに行きますよ」
いきなり紫表が自分から名乗りを上げた。
だが、その隣で代介がなんでおれなんだよ、と
明らかにいやそうな顔をして、目で問いかけている。
「紫表兄、なんなら私が一緒に行こうか?」
「俺が行ってもいいぞ」
「ありがとう。でもお前らだったら時間かかるから
 まだ体力のある代介を指名したんだ」
そう言われてしまっては反論もできなくなり、
結局、代介はしぶしぶついていくことになった。



「じゃ、君達のうち、男子4人はこの部屋、
 女子二人・・この際美千流もあっちの部屋を使ってくれ」
伊達の父親が家の中の間取りを一通り教えた後、
みんなが泊る部屋を用意してくれた。
するといきなり、一人の、自分たちと同年代の少年がこっちに
やって来た。
「おっ、健史(たけし)君来てたんだ」
現れた少年に伊達が声をかける。
「お久しぶりです」
なぜかその少年は伊達に対して敬語を使った。
「なぜに敬語?」
意味が分からないといったような表情を治がする。
「美千流様が本家の跡取り候補。
 つまり、現当主の孫であり、昨年引退した先代のひ孫だからだ。
 分家のおれが敬語を使うのも当然だ」
伊達以外の人間に対する態度がまるで違う。
「分家って・・・ていうか一族何人いるの?」
「30人ちょっとです」
さらっととんでもない数字を答えた。
驚く一向を無視してこっちへ来いというような仕草で
治、基裏、小島、沙羅を連れて行く。

着いた場所は剣道場だった。
いきなり、人数分の竹刀が投げ渡される。
そこにはさっき言っていた一族全員がいた。
「これから試合を始める」
健史の口から予想外の言葉がでたので、みんな(伊達以外)が
目を丸くする。
「はぁ!?なんで?」
「言い訳は無用。一族以外の者は勝てない限りこの俺は
 外部の者を信用しない。
 それが見張りとして育てられた俺の使命だ」
「そういうことは教えといてくれよ」
小島が伊達の方を見る。
「剣を取れ、全員いっぺんにかかって来い。
 一太刀でも浴びせられたら、合格だ」
そうして健史は剣を取る。
「なんなのこの展開?」
基裏と沙羅の言ったことが完全にシンクロした瞬間だった。
      
                  

                            続く