コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- リバーシブル ( No.14 )
- 日時: 2011/04/16 14:40
- 名前: 北野(仮名) (ID: vfhHNd5c)
=第十話=伊達流剣術
「ゼェッ・・ハッ・・・・ハァっ・・・畜生・・!」
さっきから10分も経っているのに、一太刀浴びせるどころか、
近づくことすらできていない。
自分たちを連れてきた当の張本人の伊達は
戦うことも疲れることも全く無く、涼しげにこちらを見ている。
「なんだ、その程度か。しょうもねぇな」
相も変わらず伊達以外には辛辣な言葉を言い放つ健史
基りや治たちが汗だっくだくになっているのに、
汗をかくどころか、息一つ乱していない。
「なんつーバケモンだよ」
小島も今となっては諦め口調である。
なにしろ、自分たちは紫表と代介という体力のある連中が
欠けた状態なのだ。それは諦めたくもなるだろう。
「もう時間の無駄だな、一気に片付けさせてもらうよ」
今まで、こちらに手を出さなかった健史にとって飾りでしか
なかった竹刀が治たちに木場をむけようとする。
その場にいる全員の体に殺気が突き刺さる。
遠巻きにして、観戦している一族の者には
なんら影響はないが、すぐそこに立っている
基裏、治、小島、沙羅の四人には研ぎ澄まされた刃を
首筋に突きつけられているかのような重圧が訪れる。
「うっ・・・っつ!!」
声にならない悲鳴を沙羅があげる。
今までのものとは違い、全身から冷や汗のようなものが吹き出す。
「ごめーん、ちょっとあたしトイレ行ってくるわ」
周りの人たちにそう言って、伊達が席を立つ。
「なぁ、みんな。一つ提案があるんだけど」
小島が3人に呼び掛ける。
「こうなったら、みんなで囲んで一気に叩こう。
そうでもしねぇと・・・こいつは無理だ」
小島の提案にみんな浅くうなずく。
少し顔を上下させるだけでも、この重圧の中ではかなりツライ。
だが、絶対に勝たなければいけない今は、迷っている暇は無い。
目に唯一の、小さな希望を持って、健史を取り囲む。
「へぇ、脳みそはついてんだね」
そう言って、健史は構えをとる。
「今だ!!」
小島の掛け声でみんな一斉に襲いかかる。
瞬時に健史はカウンターの体制に入り、剣を振りかぶる。
狙いは、自身が声を出したことで、反応が遅れたみんなより、
半歩前に踏み出している小島だ。
「のろい・・」
振りかぶった剣を前に突こうとしたその瞬間、健史の防具に
衝撃が走った。
(今さらですが、みんな防具着てます。危ないんで)
スパアンッ!!という快音が剣道場に響く。
誰が当てたのかは分からないが、攻撃を決められてしまった以上
剣を納めるほかにとることは無く、手を止めた。
だが、そこまで反射神経が良い人間は、防具を着ている5人の中では
健史だけだった。
さらに三本の剣が健史の防具をとらえた。
健史が振り向いたときには全員竹刀を手元に引き戻し、
すまなさそうな顔をして、自分の方を見ているので、
誰が自分に攻撃を当てたのかは分からなかった。
「ちっ、合格だ。好きにしろ」
そう言い残して剣道場から出て行った。
健史が剣道場を出た時、伊達が走って戻ってくるのとはちあわせた。
「あれ?もう終わっちゃった?」
両脇には、見たことのない二人がいる。
「こっちが紫表君で、こっちが代介君。
もうこの二人の分は試験しなくていいから」
「分かってますよ。相手が4人で負けたんです。
6人だったらなおさら勝ててませんよ」
そして、ふと伊達に言わなければいけないことが出てきた。
「ちょっとこっちに来てください、美千流様」
少しの間紫表と代介には席をはずしてもらう。
「で、話って何?」
伊達が早く聞かせてくれ、というように切り出す。
「実は・・・先ほど戦った時・・妙な感覚がしました。
まるで・・・超速戦闘のような・・」
健史の話を聞いて、伊達の顔つきが変わった。
「何か、心当たりがあるのですか?」
自分では気づいていないが、目つきが鋭くなっていたのか、
伊達にそのことを注意された。
「実はね・・・前にも似たようなことがあったの」
伊達はこの前起きたテニス部の萩原さん事件のことを話した。
「そんなことがあったんですか・・・」
健史はしばらく考え込んだ。
すると、さっきの紫表と言う名は、何か聞き覚えがあるような
気がした。
でも、ただの思いすごしだろうということで、その考えを否定した。
「とりあえず・・・今の問題は、誰が伊達流剣術三大奥義・心技体の
体の奥義、超速戦闘を使えるのかってことです」
超速戦闘、その名の通り、超高速で戦闘する技術のことを指す。
超高速といってもそれは、生半可なものではない。
音速級で、その動きは
超速戦闘を会得していない限り、目にすることはできない。
「そのことについてはまだ他の人には言わないでおいて
私達の思いすごしかもしれないし」
伊達のその一言で、この話題は打ち切られた。
そして、その日はもう、日は西に傾いていた。
続く
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健史君強っ!!