コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- リバーシブル ( No.16 )
- 日時: 2011/04/17 11:21
- 名前: 北野(仮名) (ID: vfhHNd5c)
=第十二話=不穏な影
「兄貴、例のデカ屋敷の前を通ったときに
いい話を聞きましてね」
長身のやせ細った男が暗闇の向こうにいる自分の上司に
業務連絡をする。
「なんと、あそこには今、客人、それもハッキングと暗号解読の
天才がいるそうなんです」
黙りこくっている主に指示されてもいないのに、
事細かに報告する。それほどこの男の忠誠心は強いのだ。
「こいつら使って今、同時進行している計画を一気に進めましょうよ」
テンションが上がっているので、興奮した拍子に身を乗り出し、
半歩踏み出した。
人目につかないことを考慮して、古びた廃工場に立てこもっているので
足を地につけたときにおもいっきりガラスを踏んでしまい、
ガシャァンという大きな音がし、足元で粉々に割れて辺りに飛び散る。
飛び散った破片のうちの一つがふくらはぎをかすめ、
無駄に切り傷を作ってしまった。
「あ痛ぁっ!」
ふと見るとうっすらと赤い液体が流れ出てきている。
「てめえはバカか。さっさとそこの絆創膏はっとけ」
暗闇に隠れている男がようやく声を出した。
「ま、その二人は利用させてもらうかな。おい、蟹原に連絡しろ」
蟹原とは、この男がしょっちゅう連絡を入れている情報屋だが、
長身の男とはなかなか反りが合わず、正直毎度毎度こいつの力を
借りなくてもいいじゃないかとひそかに思っている。
「では、連絡しておきます」
そういってポケットから携帯電話を取り出した。
「にしても風呂でかいなー」
くじで決めた順番通り風呂に入る。最初に入るのは治だ。
人二人ぐらいならすっぽりと、多少無理をすれば五人ぐらい
いっぺんに入れそうなほど大きい湯船。
だが、シャワーと洗面器が一つずつしかないことが、
一人用の風呂であり、決して大浴場ではないことを物語っている。
「風呂の大きさは家のサイズと比例すんのかね〜」
そんなどうでもいいことを言ってみたりする。
いつもなら風呂でしゃべったりなんかすると、声が反響する
ものだが、この家の風呂は独立した建物になっているので、
横幅、縦幅、高さはゆうに二メートルはあるので、
反響と言えるほどのものは起こらない。
湯船はヒノキでできていて、昔ながらの良さが感じられる。
木製の風呂は普段の疲れどころか、心の汚れも洗い流して
くれるような気がする。
「治ー、時間ねーからおれもう入るぞー。
でかいって聞いたから、代介と部長も一緒だ」
紫表の声が聞こえる。三人だったら調度入るかな、
と思ったが、交互に体を洗っていけば、二人ずつ
大分ゆとりを持って湯船につかることができるな。
そんなことを考えている間に、三人が入って来た。
たった今、自分が考えた通りのことをやろうとしているのか、
小島だけがシャワーのとことへと向かう。
「うーし、じゃあ俺は上がるわ」
そう言って治は出て行った。
小島が体と頭を洗い終わって、代介が体を洗っている間、
紫表は古びた紙のことを思い返していた。
あれは、本当にあん・・
そんなことを考えている間に、ガラッと風呂の戸が開いた。
体を洗い終わった代介と小島が風呂から上がろうとしていた。
「あとお前だけだから次の人達呼んでくるわ」
そう言って、小島は出て行った。
紫表も体を洗い終え、いざ風呂から出ようとしたとき、
三人ぐらいの男が入って来た。
一人は背が高めの大学生ぐらいの人、隣は背が低めの30代前半ぐらいの
人、もう一人はあの健史だった。
健史以外の二人も、伸治が宝について詰めよってきたとき、
後ろに一緒にいたので、見覚えがあった。
軽く会釈をして出て行こうとすると、大学生に、声をかけられた。
「いよぉ、紫表だったっけ?俺は宗治(そうじ)よろしく」
大学生に続いて、背が低い人もこっちへ来た。
「私は雄太(ゆうた)といいます。以後、お見知りおきを」
「あっ、よろしくお願いします」
紫表は深々とお辞儀をした。
「そうかしこまんなって。にしても驚いたな」
この後宗治は今まで言われたことのない、そしておそらく
二度と聞かないであろう褒め言葉を口にした。
「こんな利発そうで、かっこいいやつが美千流の後輩とは
思えないな」
これを聞いたときにはさすがに吹き出してしまった。
「冗談じゃねえぞ」
顔は笑っているが、ウソをついているようには見えない。
まあとりあえず湯ざめする前に上がることにした。
続く
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自分の文章力の無さにびっくりする
今日このごろです。