コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

リバーシブル ( No.17 )
日時: 2011/04/17 16:50
名前: 北野(仮名) (ID: vfhHNd5c)

=第十三話=罠

風呂から出ると、また沙羅がパソコンをいじっていた。
カチャカチャカチャカチャと、パソコンいじりに熱中している
沙羅は何の話も聞いていないことが多い。
だから何をしているのかは終わってから聞くことにしよう。
なんか知らねーけど、男子が横から見るとバイキンを
見るような目で見やがるって代介も言ってたしな。

ブルルルルルル・・・

手の平の中にあるマナーモードに設定した携帯電話から
バイブ音がなる。
一体誰だろうと思って開くと、母からメールが届いていた。
そこにはなぜか問題が載っていた。

QUESTION(問題)

私は割らなければいけない、だが、折ってしまっては元も子もない

私は建てられるものである、つなぐものである

私は隅を指さして呼ばれる。断じて中心にはいない

私の名を五文字で答えよ

はあ?なんだって母さんこんなメール送ってきやがったんだ?
あの人俺や基裏と違ってパズル作んのも解くのも苦手で
大っ嫌いだって言ってたじゃねえか。
しかもなんかパッと答えでねえし・・・母さんにしては
出来過ぎじゃないか?

そんなことを考えながらふと、あることに気づく。
まだメールは下に続いているのだ。
紫表はそのまま、電話の下ボタンを押しまくった。
するとそこには、驚愕の文字が打たれていた


10分以内に解け。じゃねぇと、てめぇの母さんがどうなるかな?


風呂から出たばかりで火照っていた顔から、一瞬にして
血の気が失せる。
紫表の異変を感じ取ったのか、基裏と治がやって来た。
だが、紫表はそっちを見ずに、一番下にあった画像を開いた。

写真に写っていたのは、縄で縛られている自分の母の写真だった。
唯一の救いは父親が海外に長期出張に出ていて、
これ以上の犠牲者が出ないということである。

その写真を見た基裏は自分の母が縛られている状況に
紫表と同様に顔から血の気が引いている。
対して治はどう声をかければいいのか分からず、
動揺するのと、非人道的な行動に対する怒りをたぎらせて、
複雑そうな顔をしている。

この騒動を聞きつけたのか、家じゅうの人が集まってくる。
これを見て、最初に反応をしめしたのは代介だった。
「これは・・・GCOSIQじゃないのか・・・」
G…government 政府の
C…code       暗号
O…of        〜の(A of BでBのAという意味)
S…seacret      極秘の
I…information    情報
Q…question     問題
流れるように代介が解説する。
簡単に言うとGCOSIQとは、政府の重要な情報の載っている
データ保管庫のロックを解除するパスワードを答えとする
クイズだ。
だが、このクイズは出題から10分で変わり、それに伴って
パスワードも変わる。
なんでこんなことをしているかというと、
徹底した防犯、加えて、政治家達が忘れた時用の対策だ。

「なんだ・これはどういう意味だ?」
あちこちでみんなが考えだす。
だが、紫表の頭の中ではもう答えはだいたい出ていた。
では、紫表はなぜそれを送信しないかというと、最後の条件を
満たしていないのと、そんな重要なパスワードを人に教えて
いいのかということだ。

つまりこれは割って使う物、何かと何かをつなぐ建造物、
そして、隅を別の言葉であらわせばいいのだ。
その答えはおそらく・・・


            はし

割り箸は折ったら使えないし、橋も端も二つ目と三つ目にあてはまる。
だが、これはたった二文字だ。
「くっそ、あとちょっとなのに・・」
焦れば焦るほど、時間は無駄に過ぎて行く。
時計の針がチッチッチッチッと動く音が聞こえる。
残り時間はあと三分。

「ローマ字だったらHASIで四文字なのにな」
伸治が最大のヒントを偶然つぶやいた。
「・・っっ、それだ!」
紫表は携帯電話に答えを入力する。
「ヘボン式ローマ字で打てばよかったんだ。答えは・・


          HASHI


そう入力したあと、一瞬手が止まる。
こんな重要なものを送っていいのか?
何に使われるか分からないんだぞ!!

でも・・これまで育ててくれた人の命とは天秤にかけられない。
紫表はメールを転送した。

数分後、メールが帰って来た。
「コングラッチュレーション!よい働きだった。
 もう君の母は開放したからきにしなくていい



P.S 明日、君に敬意を表して、直接電話しよう」
返ってきたメールには、ただそれだけが書かれていた。
「あ〜終わった。ところでこれ何の騒ぎ?」
ようやくパソコンの世界から帰ってきた沙羅が
こっちにやってきた。
「そっちは何してたんだ?」
「いきなりお父さんからメールがきて、あるアドレスを
 教えるからそこをハッキングしてパスワードを入れてくれって」
なんだか怪しい、普段の紫表ならそう思っただろう。
だが、こんなことが起きたら、さすがの紫表でさえも限界だ。
動揺の次に動揺が襲い、正常な判断などできるわけがない。
「わりい・・・おれもう寝るわ」
そう言い残して、紫表はフラフラと歩いて行った。


〜翌日〜
いきなり、伊達家の前に警察がやってきた。
警察は沙羅の元までやって来て、信じられない、
いや、信じたくないようなことを俺達に告げた。
「早乙女沙羅、政府のデータ保管庫にハッキングして侵入し、
 無断で極秘情報を閲覧した罪で逮捕状が出ています
 署までご同行をお願いします」
そして、何が起こっているか今いちピンときていない沙羅の手首を
鋼鉄の輪っかがつかんだ。


                         続く

GCOSIQ(ジーコシックと呼んであげてください)
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  いや、まあ確かにある映画をモチーフにしたよ
  ここまで似たようなことのなるとは思わなかったから・・・