コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: リバーシブル ( No.19 )
日時: 2011/04/18 18:25
名前: 北野(仮名) (ID: vfhHNd5c)

=第十四話=怒り(1)


その日は普通の一日になるはずだった。
確かに先輩の家に来ているから不通ではないとも言える。
だが、今起こっていることお比べると、何も起こっていないのと
ほとんど同じだ。

朝起きると、すぐに着替えて出てくるようにってここの家の人に
言われた。だから、昨日のうちに用意しておいた服に急いで着替えて
出て行った。

家の前まで来ると、パトカーと警察手帳を持った男女のペアが見えた。
何か事件でも起こったのだろうか?
今から思うと、そんな悠長なことを考えていた。
何が起きているのか分からず、ただ、呼ばれたからという理由で
そこまで行った。

そして今、私の腕は、金属製の、銀色に光る輪っかで拘束されている。
これが何かなんて誰かに聞くまでもなく分かる。
信じたくないがこれは・・・手錠だ。
手錠がかかっている手首の部分がひんやりと感じられる。
それが、まぎれもなく、今手にはめられている手錠は
金属製、つまり、本物だということを物語っている。

「では、車にお乗りください」
警察の人のその一言でハッと我に帰る。
一体私が何をしたって言うの?
なんで連れて行かれないといけないの?
(本来、14歳未満の沙羅は逮捕されませんが、
 気にしないでください)
私が何をしたのかはついさっき言われた。

政府のデータベースに潜入して、重要情報を漏洩させた。

でも私はそんなことはしていない!!

お父さんから送られてきたアドレスを頼まれたから
多少強引な手を使ってこじ開けて、
パスワードを入力して、中に入っていたデータを
見ずに、転送しただけ。
送られてきたアドレスを・・・

「ふざけんな!沙羅がそんなことする訳ないだろ」
治と紫表、そして代介が同時に叫ぶ声が聞こえる。

その時ようやくある重要な事実に気付いた。
あのアドレスが・・・政府のデータベースだったんだ。
あの時、おかしいと思ったんだ。
お父さんが理由もなく、こんなことを頼むなんて。
多分、お父さんのパソコンがハッキングされて、
いや、それは無い。あのパソコンのセキュリティプログラムは
私が設定した。
あのセキュリティが解けるなら、私に頼まなくてもできるはずだ。
おそらく無理やり使ったんだろう。

「それだったら俺も共犯だ!!暗号を解いたのは俺だ!!」
紫表の口から凄い言葉が出る。
信じられなくて、私は目を丸くする。
「何、それは本当かい?だったら君も一緒・・」
「詳しくはこれを見ろ」
紫表が警官のしゃべっているのを横柄に遮り、ポケットから
携帯電話を取り出す。
「これが昨日、母さんの携帯電話から俺に送られてきたメールだ」
そのメールには、今の自分の状況よりも、はるかに
ひどい内容だった。
「基裏に電話して聞いてもらったけど、とりあえず母さんは
 無傷だったらしい。そして・・・」
私達の寝ていた部屋の方から伊達が走ってくる。
脇には、私のパソコンを抱えている。
「これが昨日、沙羅の父さんから来たメールだ」
そこには、自分が何も知らずにこんなことをした訳の
決定的な証拠が残っていた。
昨日来たメールの履歴だ。
昨日のメールの内容が、一字一句間違えず、そのまま残っている。
「これが何を意味しているか、分かってるよな」
紫表の殺気が周りにいる者全てに感じられるほど大きくなる。
その対象は、その場にいる誰でもないが、行き場を失った殺気は
警察へと、矛先を変えた。
「早乙女・・沙羅を・・・・無罪とするよう、許可がおりた」
10分後、男の方の警官が朗報を告げた。
まだ紫表にビビっているのか、逃げるようにして帰って行った。