コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

リバーシブル ( No.21 )
日時: 2011/04/18 20:39
名前: 北野(仮名) (ID: vfhHNd5c)

=第十六話=混乱

「龍牙と戦うだと!?お前には無理だ!!」
俺でも勝てないのに・・健史はそう続けた。
「龍牙は超速戦闘どころか、三大奥義の一つ、技の奥義
 心眼を持っておる!貴様ごときがはむかったところで、
 何も変わりはせん!!」
おじいさんも止めにかかってきた。
「三大ってことはもう一つあるんですか?」
基裏が少し話題をずらす。
「ああ、わしでさえ会得していない。
 名を鉄斬り(てつじゃないよ、くろがねだよ)という。
 獲物(武器のことです)が何であろうと、
 鉄と言っておるが、どんな物でも斬ることができる。
 真っ二つにな。そういう奥義じゃ。今となっては、使える者は
 ばあさんぐらいじゃ」
そう言っておばあさんの方を振り返った。
「わしは年齢のせいで出られん」
どうしようもない。そんな風に首を横に振った。
「待てよ、あんたの弟子はどうだ?」
治が思い出したかのように、唐突にそう聞いた。
「確かにあやつは強かった。じゃが、今はどうだか・・・」
次々と希望は消えていく。
健史は勝てないと言った。15歳以下しか出られない。
どうすりゃいいんだよ・・・

「やはり、少なくとも超速戦闘は使えないとな」
宗治がそれだけは絶対にゆずれない、そういう風に言った。
「この中で超速戦闘が使えるのは・・・美千流しか・・・」
伊達の父親が娘に対して、すまなさそうにそう言った。
「私に戦えって!?絶対イヤよ!!龍牙とは組手をしたから
 その強さはよく知ってる!それに私は・・・戦いたくなんか・・・・」
伊達がいきなり、何かにおびえるように泣き崩れた。
泣くと言っても、うっすらと、涙目になっているだけだ。

「頼む、お前しかいな・・」
「絶対イヤ!!もう戦いなんかで恐い思いはしたくない!!」
それだけ言って、乱暴に扉を開け、逃げるようにして、
そこから出て行った。


〜夜〜
足音が部屋に近づいてくる。ゆっくりと、だが確実に・・・
自分の部屋へと向かってきている。
障子に人の影が映る。
「せんぱーい、晩御飯置いときますよー」
この声は紫表だ。時間はもうすでに9時、みんなとっくに
食べ終わっている時間だ。
「ちゃんと食べてくださいねー」
「そうね。私がいないと、明日大変だしね」
嫌味ったらしく、皮肉たっぷりにそう言った。
紫表は自分の身を心配してくれているのに、そんな言い方を
してしまった。
「先輩、一つ相談があるんすけど・・・」
「戦わないって言ってんでしょ!!どっか行ってよ!!」
今は誰とも話したくない。だから紫表を追い払った。








月夜の下、紫表は一人で空を見ていた。
ポケットから小箱を取り出し、手のひらの中に握りしめる。
「何持ってんだ、それ?」
後ろから代介がやってきた。
「ああ・・・これはな・・・」






「へー、おもしれえなあ」
代介が感嘆する。
「強くなりたいな・・・」
ふと口から言葉がもれる。
心の底から強くなりたい、そう思った。
「おまえはもう、充分強いじゃねえか」
「意味が違うよ。体の方だ」
「何をしているんだ、こんなところで」
会話の途中に、健史もやってきた。
「しゃべってた」
「そうか」
単語だけで、代介と健史が会話をする。
「なあ、なんで先輩があんなにまで
 ヒステリー起こした理由知らないか?」
紫表が健史に聞いてみる。
「ああ、昔の話だ・・・」

あれは、雪の降る日のことだった。

                      つづく


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なんかもう、短くてすいません。