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Re: リバーシブル ( No.22 )
日時: 2011/04/19 20:39
名前: 北野(仮名) (ID: vfhHNd5c)

=第十七話= memories in the snowy day

それは、美千流様が7歳、俺が6歳だったときのことだ。
その頃は、まだ美千流様の母上もこの家にいた。
美千流様の母上は、聡明で、才色兼備、超速戦闘の歴代最高の
使い手だった。
名を、彩子(さやこ)様と言った。
美千流様は彩子様に憧れ、必死で鍛錬を受け、超速戦闘を会得した。
血のにじむような特訓だったと聞いている。
まあ、そのおかげか、美千流様は歴代最年少だったという。
調度そのころに、現当主の両名が、弟子二人を、
顔を合わせずに、バラバラで鍛えていた。
おばあさまの方の弟子は、美千流様よりも、
一つか二つ幼く、稽古の初日から超速戦闘を発現させたらしいから
一族最速に過ぎないがな。


ある冬の日のことだった。
美千流様と彩子様が、買い物に出かけていたときのことだ。
その日は、とても雪の強い日だった。
積雪はすさまじく、辺り一面は、白銀の世界だった。
10センチほど掘っても、地面が見えない、それだけ雪は強かったんだ。

俺はその場にいた訳じゃないから、話の内容までは分からないが、
その日の夕食の話でもしていたのだろう。

事件にまきこまれたのは、帰り道だったらしい。
今龍牙がいると思われる廃工場に、
銃を持った殺人犯が潜伏していたらしい。

その日は、何度も言うように、雪が強く、廃工場の前を通るのが
一番安全な道のはずだったんだ。

御二方は、その廃工場の前を通ってしまった。
それだけだったら良かったのだは、運悪く、調度工場から
出てきたその殺人犯とはち合わせてしまった。

それから先はあまり覚えていないらしい。
かすかに覚えているのは、超速戦闘で、一時優位に立った彩子様が、
美千流様に銃口がむけられた瞬間に
「逃げて!!」と叫んだこと。
自分を抱きかかえている母。
そのまま自分をかばってたおれる母。
白と赤の混じり合う混沌。
サイレンの音。
犯人の抵抗。
怒りでわれを失い、警察をさしおいて攻撃したのか、
道端でその男をなぐりつける自分。
大量にあざのできた顔で命乞いをする犯人。
それが、過去の全てだ。



「先輩の母親って・・・その時に・・・」
「違う、三年前に家をでて、世界を放浪してらっしゃる」
「ハア!?今の話聞く限り、銃で撃たれてなく・・」
「んな訳あるか、超速戦闘の使い手だぞ。
 人一人かばって急所を避けるくらいできる」
予想外の言葉に紫表は目を丸くする。
代介はというとそんな重苦しく話すんなよ、
とでも言いたそうにして、じっと睨みつけている。

よくよく思い返すと、健史は、生きていた頃、ではなく
この家にいたころといっていた。

「つまりその時死ななかったんだろう?なのになんであんなに
 戦いを恐れてんのさ?」
代介はそこだけが解せないといった顔で首をかしげる。
「自分のせいで負わなくていいケガを負わせてしまった。
 その懺悔(ざんげ)の念だろう」
その辺は聞かされていないのか、あえて聞いていないのか、
だろうと言って仮定形にした。
「もう寝ろ。明日は早い。あいつは人数は制限しなかった。
 こっちは15歳以下総出でかたをつけるぞ」
そう言って自分の部屋に帰ろうと、健史は踵(きびす)を向けた。
「ああ、そうだ」
思い出したようにくるりとこちらに振り返った。
「お前と双子の女、基裏と言ったな。あいつ、超速戦闘の才能
 あるとかなんとかで、今日、おじいさまに鍛えてもらったらしい。
 俺の防具を最初にぶったたいたのもあいつだ。
 あいつも明日、最前線で戦うらしいぜ」
そう言って、今度こそ自分の部屋に戻って行った。


「基裏も出るのか・・・」
紫表はポツリとつぶやいた。
「覚悟、決めねえとな」
そう言って、その日は終わった。



〜朝〜
ドタドタドタドタ、という音がして目が覚める。
昨日、泣き疲れて眠ってしまったようだ。
布団には、まだ涙の跡が残っており、ぐっしょりと濡れている。
「先輩!!起きてください!!」
「だから私は戦わないって言ってるでしょ!!」
「そうじゃないんだ!!!」
基裏の顔が青ざめている。
二日前、基裏たちの母親が、拉致されたとき以上だ。
「紫表兄が・・・どこにもいないんだ・・・」
伊達が、瞬時に反応して、目を丸くする。
「紫表君が!なんで・・・」

袴(はかま)に着替えた代介もやってくる。
手には、東京から持ってきた弓を持っている。
良く見ると、その弓には、八つ頭のある蛇の絵が描かれている。
「紫表からの伝言です。
 相談しようと思ったんですが、そのヒマは無くなりました。
 俺は龍牙と戦います、だってさ」
「相談って、あのとき・・・」
昨日、強引においはらってしまったことを思い出す。

代介は自分に言われたことも思い返していた。

「明日(つまり今日)のことは俺に任せろ。
 ただ、そのあと三日間のいざこざは頼んだぞ」


「三日?ハッ、四日やってやるよ」
そう言った代介は玄関に向かって歩いて行く。
「ちょっと、どこ行くの!?」
伊達が代介を引きとめようとした。だが、
「臆病者が止めんじゃねぇよっ!」
痛いほどの殺気をほんの一瞬だけとばす。
しかし、その一瞬の殺気だけで伊達は凍りついた。
「確かに俺は超速戦闘は使えねぇ、でも戦える。俺にはこれがある」
手元の弓を高らかに上げる。
「これは、師匠からもらった俺の誇り」
それだけ伝えると、今度こそ、玄関の方に向かって行った。
「ちょっと、矢も持たずにどうするの?」
「なんとかなる」
そう言って、角を曲がり、視界から消えた。



                      続く



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やべ、バトルシーンどうしよう!?!?