コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

リバーシブル ( No.23 )
日時: 2011/04/20 18:03
名前: 北野(仮名) (ID: kBbtVK7w)

=第十八話=STARTING TO BATTLE

5月1日、朝7時、廃工場にて。

カツッカツッカツッ、と人が近づいてくる足音が聞こえる。
金網に囲まれた、広い空間、そこで龍牙は待ちかまえていた。
誰が来るんだ?

美千流か?

健史か?

そんなことを考えながら、ただ剣を持って、放置されっぱなしで、
市も処理するのを諦めた、数十年前には働いていたであろう
大きな機械の上に寝そべっていた。
窓ガラスが割れ、風が通り抜けるので、少し肌寒く感じるが、
決闘の前にはそれぐらいで充分だ。

ギィィッという耳障りな音がする。
ふと扉の方を見ると、閉めていた戸は全開になっていた。
「来てやったぞ」
人が一人だけ入ってくる。
逆光のせいで、顔は良く見えないが、
声で誰かの判別はついた。
「てっきり、多対一で来ると思ってたのにな」
またあの不快な音を発して扉が閉まる。
そこに立っていたのは、一昨日利用させてもらった烏丸紫表。
「本当にお前でいいのか?一人でいいのか?」
とりあえず、こいつの冷静さを欠く、そのために、龍牙は
紫表を挑発した。     ゃ←ふりがな
「なめるなよ。それに一人で闘らなかったら、勝ったとは
 言えないだろ」
扉のすぐ脇にある階段から一段ずつ下りてくる。
そして、一番下まで下りた後、金網の扉から入った。
紫表が入った瞬間に扉は閉まり、錠がかかった。
鍵は龍牙が持っている。これで、目の前の男を倒さない限り、
紫表は出ることが出来なくなった。

いきなり、さっきとは違い、大勢の足音が聞こえてくる。
「おい紫表!お前何やってんだ!」
最初に入ってきたのは一人の中坊。蟹原から名前は聞いている。
治というやつだ。
そしてゾロゾロと、あの忌々しい一族の連中がやってくる。
「龍牙!きてやったぞ!勝負しろ!」
健史が物凄い剣幕で吠える。
「お前たちの代表者はここにいるじゃないか」
そうして、紫表の方を指差した。
「お前は人数を指定しなかった。何人で行ってもいいだろう!」
「てめえはどうしようもねえ臆病者だなあ。
 でも、このガキ自らが一人で闘うと言ったんだ、すっこんでろ」
あんのバカが・・・そう言って紫表をにらみつける。
「武器も持たずに何をしておる!負けたいのか!」
うっとおしい師匠のじじいまで出てきやがった。
「ハハハハハ!!残念だったな。お前たちの希望はついえた。
 このガキつぶしたら大人しく」
一旦言葉を切って剣を手に取る。
金属製の刃がギラリと光る。
「家の土地・・・よこしやがれ」
右足を引いて、戦闘態勢に入る。
「丸腰相手に真剣じゃと!?お前に誇りは無いのか!?」
ばばあの方は諦めたのか、黙ってことを静観している。
「誇り?捨てたさ」
そう言った龍牙はみなの視界から消えた。
「超速戦闘!もはやこれまでか・・・」
龍牙の姿が紫表の背後からいきなり現れる。
紫表はまだ、前を向いている。
反応なんかできているはずは無い。
そう思った龍牙は一気に踏み込んだ。
「後ろだ、危ない!」
あの治とかいうガキも叫ぶが、もう遅い。
どうせ反応できたところで、丸腰のあいつに防ぐことなんか
できやしない。
「散れっ!!」
そして、思いっきり刀を振った。





ガァンッ



剣が何かに当たる感覚がする。
刀身は、どこからともなく現れた木刀に行く手を阻まれた。
よく見ると、その木刀は紫表の背中を斜めに横断するようにして、
刀を止めている。
もちろんその木刀を持っているのは紫表だ。
「てめえ・・んなもんどこに、何っ!」
木刀の側面には片目に眼帯をつけた龍の紋章が刻まれている。
その龍の目には、見る者の士気を凍てつかせる、
そんな迫力を持っている。

「・・・龍紋木刀」
紫表が龍牙を見据え、向き直る。

「これがおれの、力の証だ」

そう言って、切っ先を相手に向けた。


                            続く


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やっと・・・ここまで・・・たど・・り・・・つい・た。

けっこう長かったね、うん。