コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

リバーシブル ( No.34 )
日時: 2011/04/27 20:24
名前: 北野(仮名) (ID: x1YwoWnh)

=第二十六話=決着からの・・・



廃工場内にて、龍牙と紫表の決着はとっくについていた。
勝者は、言うまでもなく紫表。それも圧勝であった。
真剣を持ち、ボロボロで、五体不満足な龍牙と比べ、
紫表は傷一つ負っておらず、汗一つ浮かべず、息一つ乱していない。

「もういいだろ。あんたの負け。さっさと先代を解放しろ」

鎖帷子(くさりかたびら)を龍牙は身に着けていたが、
無残なまでにも斬りさかれている。

「鉄斬りの前にそんなの意味無えよ」

技の奥義『鉄斬り』、紫表が龍紋木刀を受け継いだ理由もそこにある。
現当主が片割れ、零花の剣技を全て受け継いだとは、
それすらも会得しているということである。

「なぜ、お前は・・こいつらのために戦える?」

あいつの弟子だから、そんな単純な理由で片付く問題ではない。
そんな理由で片付けられるほど、リスクは小さくはない。
それなのに、なぜ・・・

「簡単な話だ。この場所は俺を救ってくれた。心の傷を癒してくれた。
 恩返しがしたい。そんだけあれば、闘う理由には充分すぎる」

ふと、昔のことが龍牙の脳裏をよぎる。
孤児だった自分を拾ってくれたじじい、そして
忌まわしいあの事件。
あれさえ無ければ、今頃俺も向こう側にいたのにな。
そんなことを考えだし、改心しようと思ったその時、
ふととてつもなく重要なことを思い出した。

「ヤバい・・・・・」

このつぶやきにその場の者はみな反応した。

「いきなりどうしたんだ?」

紫表が目の前の男の心情を察したのか、さっきまでとは違った
目でそっちを見る。
そして、思いついてみたことを流れに乗せて確認するように
こう尋ねてきた。

「結局お前、政府のデータ使って何がしたかったんだ?」

それは、重要な出来事に直結していた。
龍牙はとりあえず、ことの顛末を語り出した。

孤児だった自分は、この世界が嫌いだった。
伊達家に来るまではの話だが・・・
伊達家での修行の日々は本当に楽しかった。
一生のうちで一番充実していた時間だっただろう。

だが、ある時を境に、その暮らしも終わりになる。

伊達家からも逃げなければならなくなった龍牙は復讐を決心した。
自分を追い出したこの家だけではない、
孤児という境遇に陥れた、国に対して。

伊達家への復讐は、今やっているこの行為だ。
そして、国への復讐は・・・

自衛隊戦力の強制機動、つまりミサイルを無理やり発射させる
というもので、そのための暗証番号が、
データベースに入っているのである。
そして、そのための準備どころか実行作業すらももう終わっていた。

「早く止めないと・・・」

その場にいる人間の表情が凍りつく。
為す術は無いが、何とかしないといけない。
そんな中、冷静に行動できる人間なんて・・・

「私が・・・止めます」

人々の中心から、手が挙がる。
その場所に、みなの目が集まる。

「私がまいた種なんです、だから私が」

止めます、とはっきりと、力強く沙羅はそう言った。
目からは真っ直ぐに、そう簡単には揺るぎそうもない、
絶対的な自信と使命感がうかがえる。
確かに、この中でこの状況を打破できる人間は沙羅しかいない。

それに何より・・・


沙羅が自分からやると言った。
つい前日にあんなことがあったというのに、気にせずまた
立ち向かおうとするその強い意志は、誰も止めることを
許されない。

「パソコン使います。集中するんで」

沙羅が起動済みのパソコンを開き、プログラムを起動する。
ウイーン、という機械音がして沙羅の意識はパソコンの中に
吸い込まれていった。

「話しかけないでくださいね」

という一言を残して。

コンピューターの液晶にアルファベットの羅列が現れては
また別の文字が現れ、また文字の波が埋め尽くす。
沙羅の目には全く現実世界の景色は入っていない。
カタカタカタカタ、とパソコンのキーボードは次々と叩かれる。
セキュリティのブロックが現れては消え、ひたすら奥へと
突き進む。

そして、最後のガード用のプログラムが起動した。



          SHUTING GAME



それだけの文字が表示され、突然インベーダーゲームみたいな
画面になる。どうやらこのゲームをクリアしないといけないらしい。

「ゲーム類はパス〜」
そう言って沙羅が現実の世界に帰ってくる。

「てかこのゲーム・・・ムズくね?」

治が目の前の画面を絶望的に見詰めた。



制限時間残り30分


                       続く



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あー、バトル終わったぁ〜
いつもの頭使う展開に戻そ〜