コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- リバーシブル ( No.48 )
- 日時: 2011/05/08 10:59
- 名前: 北野(仮名) (ID: DHMZtM4G)
=第三十七話=説教タイム
午後八時、ようやく家まで戻ってこれた。
辺りは真っ暗でフクロウの鳴き声が聞こえる。
コウモリの真っ赤な目が光っているのも見える。
街灯はもちろんのこと一切なく正直言って闇に慣れていない
治、基裏、沙羅、代介、小島は宗治や伊達についていくのも
かなりしんどかった。
はっきり言って霊魂的なものが見えるより、
闇に包まれて何も見えない光景の方がよっぽど怖い。
静寂が支配するより、怪しげな鳴き声がこだまする方が
背筋に寒気が強く走る。
だがとりあえず家まで戻ってきたら問題は無い。
木製の引き戸をガラッと開けて7人は帰宅した。
「ただい・・」
「遅えっ!!」
伊達の声をいきなり誰かが遮った。
不意打ちを喰らったようにその怒声のボリュームに
耐えきれなくなったみなは目をつぶって耳を押さえた。
ん?この声は・・・
「紫表兄!」
基裏の顔が途端に明るくなる。
そりゃ仕方ないか。今朝いきなりぶっ倒れた兄貴が
ようやく復活したんだからな。
熊に遭遇して心細かったのもあったんだろう、
恐怖を思い出したように、涙目になっている。
「全く、何やってたんだよ。みんな心配してんだぞ」
紫表さーん、と伸治が呼びかけた。
「あの・・・さっき起きたばっかりの紫表君以外にはもう
伝わってるんですけど・・・」
伸治さんと雄太さんが一緒に自分の知っているところまでの
説明を始める。
勝負の始まったいきさつを聞いた紫表はフンフンとうなずいた。
「で、その後は?」
言わない方がいい気がする。
代介のセリフも一字一句間違えずに説明したせいか、
もうかなりキレている。
病み上がりなのに額に血管浮いてるんすけど?
これを忘れていた。
むやみやたらと喧嘩したら紫表が怒るの忘れてたよ!
確かにあそこで勝負から逃げたら怖かったよ!
先輩と代介がさぁっ!
でもね、正直言って熊と紫表の取り合わせの方が
怖いよ。マジで。
つかまず熊アウト。
だってあの二人合わせてようやく熊より怖いくらいだぜ?
そこに紫表、しかもあの神業見た日にキレられてみ?
めちゃくちゃ恐いぞ!ありえない!
「えっとまず・・・」
止めろ!いや止めて宗治さん!
説明しちゃダメ!まじでちょっと待って!
心の叫びむなしくすでに説明は終わった。
あっ、紫表笑ってる。
先輩や沙羅の顔から安心感が感じられる。
だけどあんたらよく見てみ。
基裏が青ざめている。俺も多分青ざめている。
付き合いの長い俺たちがビビってるってことはね、
今とってもマズイ状況なんだよ。そのへん分かる!?
「はいまず治、部長、宗治君こっち来て」
ビクビクしながら歩み寄って行く。
さて、一体何をされることやら・・・
「お疲れ、治」
はい???
「巻き込まれて大変だったでしょう、部長、宗治君」
た、助かった。確かに俺らは引きずりまわされただけだから
怒られなくていいんだ!よっしゃ。
「じゃ、次先輩」
今度は伊達の番だ。なんだって感じで安心しきった顔で
近づいて行く。
「あんた何してんの?」
紫表の顔から笑みが消える。
修羅のような、冷たく怖ろしい表情になる。
もちろんのこと一気に伊達の顔から生気は失われていった。
「先輩なのに何後輩危険にさらしてんの?」
怖い怖い怖い!
もはや先輩を見る顔じゃない!
できの悪いクソガキをにらみつける目だ。
これに委縮した伊達は一瞬にして謝罪の言葉を述べた。
「んじゃ、次沙羅」
さすがにここまで来たら心配だよね。
半泣きになってんもん。
「簡単に挑発に乗るんじゃねぇッ!!」
「はい!ごめんなさい!!」
ついに基裏の番が回ってきた。
これまた元気のない顔をしている。
だが、観念するより他は無く、ゆっくりと歩いていった。
「なんでいきなり命狙いにいってんだ!手足つぶして
身動き止めるぐらいにしろ!かりにも動物園という個人の
ペットみたいなもんだぞ!」
紫表昔っから生き物には優しいからね〜。
おっ、ついにやつの番です。
MVPならぬTBP、
The Baddest Person(最も悪い人)の登場です。
代介!どのように怒られるのだろうか!
「よくやった!」
なんでだよ!
明らかにそいつ一番悪いじゃん。
「いや、一番はそのおっさんたちだ」
そう言われるとそうとしか言いようがない。
その場合、代介は、そのボケどもを愚弄し、
弄び、完膚なきまでに叩きつぶした英雄である。
しかも誰もケガさせなかったし、さっき紫表が言った通り
足攻撃して動き止めたしね!
「以上」
ようやく説教が終わった。
やっと、ゴールデンウィークの中で最も長いであろう
一日が終わった。
続く
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紫表「そういや、おっさんたちはどうなった?」
代介「土下座さして、写真撮ってネット上にばらまいた」
沙羅「ばらまいたのは家帰ってからだけど」
代介「安心しろ!本人たちの了解はとってある」
紫表「無理やりだろ・・・」
沙羅「でも肖像権の問題は起きない」
紫表「あー、もう分かった打ち切るぞ」
沙羅「ストップ!前にも言ったけどしばらくテストのために」
代介「休む」
以上