コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: リバーシブル    ( No.61 )
日時: 2011/06/14 21:28
名前: 北野(仮名) (ID: upXvIKCB)
参照: 決めた。笑いは捨てる。戦闘を取り戻す。

=第四十九話=最早大戦争





「らぁっ!」

爽が竹刀を健史に向けて振り下ろす。
風を切り、空を裂いてその顔面へと襲いかかる。
顔のど真ん中を捕えようとしたその時、
健史が爽の手を竹刀で弾いた。
突然走る痛みに驚き、顔をしかめ後一歩のところで
攻撃を中断する。
爽の手が止まり隙が出来た瞬間に健史は攻撃に出た。
弾かれた方の手の痛みを紛らわせるために
プラプラと振っていたので
竹刀は片方の手でしか持っていなかった。
その不安定になっている刀身に健史も自分自身の
竹刀の刀身をぶつけた。
ミシミシと悲鳴を上げ、爽の竹刀は湾曲する。
完全に折れて使い物にならなくなる前に
爽の腕の方が耐えられず、そのまま空中に投げだしてしまった。
くるくると回転し、地面に着地する。
カラカラと小石と共に愉快な音を奏でて竹刀は爽の
手元から離れていった。

「はあぁっ!」

健史は野球選手がするように思いっきり
バットの代わりに手に持っている竹の刀を振りかぶった。
一旦武器を取り戻そうとバックステップをした
爽と一瞬で間合いを詰める。
そして、地面と水平になるように一直線に
竹刀を振りぬいた。
インパクトの瞬間、少しでも衝撃を減らすため
衣服を纏っている腕をクロスさせて防御する。
さらに威力を減らすために全力で後ろに飛ぶことで
相対速度を減らし、勢いを殺そうとする。
それでもなお、そこそこの威力な上、
ジャンプしてしまった以上、地に足をつけている時と
比べて軽々と吹っ飛んでしまうことにより、
戦闘能力抜群の健史の一撃に楽々と投げられてしまった。
爽が空中で半回転する。
一旦そこで回転は止まったが、勢いをつけて
爽はさらに半回転した。

ドッパアぁんッ!!

川に叩きつけられた爽が巨大な水しぶきを上げる。
爽は石の敷き詰められた地面ではなく
川の水をクッションとするためにやや勢いをつけて
後ろに跳んだのだ。
しかも、着水の瞬間きれいに受け身までとって。
はっきり言ってこの一撃は表面上は成功したが、
実際の爽へのダメージはあまり無かった。
ビシャビシャと舞い上がった水は石の床の上に散布する。
そして、びしょ濡れになったこと以外は何も無かったかのように
ゆっくりと水面から爽は現れた。

「化け物かこいつは・・・」

悔しそうに健史はチラとさっき弾きとばした竹刀を見る。
まだ竹刀に人が近づく気配は無い。
今の内に武器を取り戻される前に自分が回収しておこうと
それの下へと駆けだした。
だが、そこに一人の障害が立ち塞がった。

「爽が打たれ強いのは当たり前よ。しょっちゅう私に殴られてるから」

普通のものより少し短く、質量も小さく振りまわしやすい
自分専用の竹刀を持って天が健史を突破しようと出てきた。
正直威力だけなら健史自身より天の方が強い。
剣自体の重量が小さい分と自分の筋力の無さを
振りおろすスピードで補助している。
今基裏を除いて最も超速戦闘に近いのは天のはずだ。

「閃遁!」

超速戦闘の弟分のような技、閃遁。
特殊なステップを踏むことで通常の何倍もの速力で移動できる。
ただし、超速戦闘とは違い、莫大な体力を必要とする。
だが、すでに大分近づいていたので、
それほど多くの力は必要としなかった。
三メートル程度の間合いを0.1秒で詰められる。
そんな短い時間で反応できるほど人間は
反射神経は凄くない。
簡単に懐に入ることを許してしまった。
容赦の無い一閃の斬撃が健史の左腕を狙う。
ただでさえ自分のすぐ傍までの侵入を許してしまった以上
これ以上下手を踏む訳にはいかない。
ギリギリ二の腕を掠めるような感覚でなんとか一撃を回避する。
その時若干着ている服が切り裂かれる。
まじで竹刀かどうか聞きたくなる。
その時に健史は少しバランスを崩してしまった。
その偶然出来た隙を見逃さず、チャンスに変えるため、
天は、さっき攻撃に失敗した刀を今度は顔を狙って振り上げようとした。
しかし、健史はその場に転倒することもいとわずに
ほんの少しだけ地についている足をぐっと浮かせて
不安定な状態で蹴りを放った。
天の竹刀を持っている方の腕にミシミシと食い込み
爽と同様に吹っ飛ばした。
爽のような身軽さの無い天は空中で勢いを追加するなんて器用な真似は出来ない。
石の絨毯に叩きつけられそうになった天は
凄まじいスピードで地面に剣を叩きつけた。
その一撃の威力は自身が床に打たれるそれよりも大きく、
その衝撃をほとんど無効化した。
そして、そのえげつない打撃で、陥没したそこに着地した。

「お前も化け物か・・・」
「あんな適当な蹴りで人を軽々と吹っ飛ばすのもどうかな?」
「違いない」

闘いはさらに激化していった。



________________________________________



紫表「なんでクエなんて必要なんだよ?」

代介「セレモニーのため」

紫表「なんの儀式だよ・・・」

代介「作者の笑い取ること諦めた記念」

紫表「っへえ・・・そうか。その方が無茶ぶりへるからいいや!」

代介「そして作者は謎ときに戻したいと思っている」

紫表「別にいいよ」

代介「当初の予定を変えてな」

紫表「!?」

代介「バトル予定より早く復活」

紫表「待て!俺まだ筋肉つ・・」

代介「最初の方はそんな強くないらしいから!大丈夫!」

紫表「なんでお前は楽しそうなんだ!?」

代介「元々戦闘狂ですけど何か?」

紫表「すいませんした・・・」

Re: リバーシブル    ( No.62 )
日時: 2011/06/15 22:11
名前: 北野(仮名) (ID: .Sn.90J4)
参照: 脱線じゃない。本筋に戻ったんだ。

=第五十話=予想外な人物が・・・



ドゴッ!

振り回している物が竹刀だと信じられないほど
凄まじい一撃が地面をえぐる。
威力こそ中々のものだが、速力は大してない。
閃遁を使われない限り大概の攻撃には全て健史は反応出来た。
なんだかんだ言って女子の天はほとんどスタミナが尽きかけている。
閃遁どころか竹刀を振り上げるだけでやっとだ。
動きの精彩は欠け、振り下ろした剣もフラフラと頼りない。
額に汗が浮き、べったりとその長めの前髪を貼りつけていた。
視界を遮るその鬱陶しい前髪を片手で払いながら
川へと駆けだした。

「何をするつもりだ?」

ジャブジャブと水面を踏みつけ膝が浸かるぐらいの
深さのところまで走って行った後、ほんの少しの間だけ
動きをぴたっと止めた。
チャプンと綺麗な音を立て、流水に剣の切っ先を入れた。
ゆっくりとその剣を右側にスライドさせる。
竹刀が天にとって完全に真横に来た時、
天の方から攻撃を仕掛けた。
反動を付けてその場で大きく、そして素早く回転する。
自身の回転と共に切っ先は水を強くかき混ぜる。
あまりの衝撃に白い泡が生じ、それにより濁った水は
竹刀に絡みつき、それが振り上げられた時
巻き上げられ、一筋の刃と化して真っ直ぐに健史に突っ込んでいった。

「水刃!」

一般人よりかは遥に優れた動体視力や反射能力を持つ健史でも
ギリギリ反応できるかできないか、それほどのスピードで
透明な刀は襲いかかって来た。
横に長くやや角度をつけて飛んで来ているので、
しゃがむより他に回避する方法が無い。
意識するよりも早く、自分の本能でそのように回避する。
頭上を通り越える時、チュンという甲高い呟きが聞こえた。
ふと気付くと目の前をパラパラと黒い繊維状のものが舞い散っている。
途端に腕に針で刺されたような小さい痛みが走る。
完全に回避したつもりだったが避けきれていなかったらしく、
とても小さい三センチ程度の浅い切り傷ができていた。
その皮が浮き、白く見える筋からはやや淀んだ
紅い液体がうっすらと滲み出ていた。

「波!チェンジ!」

気付いたときにはもうすでに天の姿は無かった。
その代わりに現れたのは頭の軽そうな印象を放つ女子。
ああいう頭が少しおかしいタイプは苦手なんだよな。
それだけ考えて竹刀の柄をぎゅっと強く握りなおした。
三対一って今さらながら不利だよなあ。
後悔するのが大分遅かった健史は完全に相手を嘗めていた。
だが、それはかなりの間違いだった。

「まかせろ、天!手負いだったら私でもいけるさ!」
「甘く見てくれてんじゃん」

コロコロと竹刀の先端で踏み出す位置の小石をどける。
今、一歩踏み出して間合いを詰めようとしたそのとき、まさかの出来事が起きた。
波の姿がフッと霧のように消える。
気付いた時にはもう後ろに回り込まれていた。
実際我が目で確認した訳ではない。
だが、いきなり消えた姿と背後に出現した圧倒的な存在感。
それらを繋ぎ合わせると、信じられなくてもそれしか思い浮かばない。
背中から胸にかけて重い衝撃が突き抜ける。
ただでさえ痛手を負っていた健史にとってこれはすぐさま体力を奪った。
その威力に圧され、為すがままに前方へと倒れ、転がりそうになる。
とっさに前転して体全体に衝撃を分散させてダメージを軽減させた。
一回転した後、即座に地に足を付ける。
そのまま敵を見据えるため体を捻って横向きに回転した。
ジャラジャラジャラっ!と下に散らばる石を巻き込んで
靴と地面との摩擦で吹っ飛ばされる勢いを殺した。
今の一撃はかなり効いた。
おそらく服を脱いだら青い痣ができていると思う。
少し集中を緩めると意識が飛んでしまいそうなほど、
体中の力という力を奪われた。
目の上の肉が重く感じられる。
指の関節が鉄のようだ。
息は辛く肺は焼けるように熱い。

「閃瞬光迅(せんしゅんこうじん)か・・・」

閃瞬光迅、閃遁の応用技。
特殊なステップを必要とする点は同じだが、
こちら側のステップは力よりも技術を必要とする。
習得までには時間がかかるが、一度覚えると閃遁より便利。
ただ、一つだけ補足すると、どちらも速力は
超速戦闘の足元にも及ばないということだけだ。
それほどまでに奥義とは圧倒的存在、そしてそれを信じられない速さで
開花させた美千流と紫表は天才と言わざるを得ない。

「ギブアップする?」
「するわけ・・」
「健史、選手交代だ」

いきなりそこに姿を現したのは宗治。

「続きは俺がやる。休んでてくれ」






                     続きましょう



_________________________________________



紫表「一つ質問がある」

代介「何だ?」

紫表「俺が付いてきた意味は?」

代介「俺一人だと何かと不安だろ?問題起こしそうで」

紫表「自分で言うか?普通」

代介「その辺の自覚はちゃんとあるよ」

紫表「ところでどうやって持って帰る?」

代介「車輪付きクーラーボックス」

紫表「あれ?意外にまともだったな」

代介「二人がかりで押さないと動かんがな!」

紫表「それって当然俺も・・・」

代介「あ、おじさんここ入れて」

紫表「あの俺筋肉つ・・」

代介「あざーす。そら行くぞ。てか帰るぞ」

紫表「マジ?」

Re: リバーシブル    ( No.63 )
日時: 2011/06/18 21:37
名前: 北野(仮名) (ID: YA8nu/PY)

=第五十一話=ところであの人たちは・・・





その頃、今まで全く出てきていないEチームの猛、海淵、伸治の
三人は他の人に紛れて着々とヒントを集めていたのだった。
だが、そこに一つの壁が立ちふさがった。

「ヒントは集まったけど、分っかんねえっ!」

なんとヒントは全て集まっている。
だが、脳力的に決定打に欠けるこのチームは
全く暗号が解けないのであった・・・・・







「はっ!」

河原での闘いはまだ続いていた。
閃瞬光迅を使いこなし、猛スピードで宗治に攻撃するが、
波は一切傷を付けることができないでいる。
それどころか、段々と動きを捕えられるようになってきてしまった。
どれだけ本気でステップを踏もうと、
背後から襲撃しようとことごとく回避される。
これではまるで・・・

「解せないか?」

大学で剣道部に入っている宗治は、
普段から剣を振るっている健史並みに竹刀は扱いなれていた。
しかも、ただ振り回して闘う健史とは違い、
剣技と言うに相応しい華麗な立ち回りと技術。
戦闘と呼ぶよりも芸術。
師から受け継がれた剣技には、ただ力任せに振り回すのではない
圧倒的な強さがあった。
だが、それにしてもこの動きは出来過ぎだ。
一体どういう・・・

「教えてやるよ。俺んちは昔、超が着くほどのド田舎に
 あってよう、学校行くたびにいちいち森を抜けないといけなかった」

宗治が、自分の身の上について語り始めた時、
またしても、波は超スピードでスゥッと姿をくらませた。
シュンシュンと、風を切って駆ける音が耳に入る。

「だけどそこは薄暗くてな、慣れるまでは簡単に歩けねえ」

波が地面を踏むたびにその踏みつけた地面が軋み、
砂が舞い上がり、石が飛び散る。
その荒らされた後は宗治を中心にきれいな真円を描いていた。
突如砂の舞い散るペースが上がる。

「そんな環境で育ったせいだ、嫌でも開いちまった」

波のスピードはまだまだ加速する。
さっきよりも今の方が、今よりも一秒後の方が、
刻一刻と時が進むにつれて少しずつ、確実にフルスピードまで近づいていく。
そして、そのスピードが最高潮に達した瞬間に
ようやく波は動いた。
今まで、タンタンと軽く地を蹴るようにしていたのに対し、
じゃりじゃりと砂を蹂躙し、重く地面を蹴り飛ばした。
最大威力で突っ込むための最後の加速、
完全に宗治の死角、背後に位置したその瞬間に
構えを取り、一気に踏み出したのだ。
まだ宗治は前を向いている。
反応するどころか自分の姿は見られていない。
これならいける、そう思い、両肘を曲げて
頭上に大きく振りかぶった。

「心眼がな」

前を向いて、剣先を地面に押し当てるような構えを取っていた
宗治は、さきほど天が水を巻き上げたときのように
素早く半回転する。
回転と共に真上に竹刀を振り上げる。
二つの動きを同時に行っているので、
実質上は斜めに高速で剣を振り上げるような形になった。
超高速で振り下ろされる波の竹刀の刀身に
宗治が自分の竹刀の刀身をぶつける。
お互いの武器同士がぶつかり、動きを止めた瞬間に
この二人の実力は同じのようだと、そこにいた全員が思った。
だが、片方の人間は全員が思っているよりかは強かったのだ。
波が動きを止めたのは剣撃をぶつけあったその刹那だけではなかった。
正確には体全体が動かない訳ではない。
腕だけだが、麻痺をしたようにピクリとも動かないのだ。
そのことに動揺し、関係の無いところも委縮して
さらに動きが取れなくなってしまった。

「シェイクドロップ(振動雫)」

シェイクドロップ、宗治が高校生のころ編み出した新たな型。
極微量の気を精製し、薄く薄く剣に纏わりつかせる。
斬撃の瞬間にその極微量の気を伝うように
相手の体に注ぎ込み、相手の体内の気を自分の注ぎ込んだ気で
暴走させることにより、行動の自由を奪い、動きを止める。
極微量の気のみを使うので、極微量の水である雫を名前の一部に
使っているのである。

「お休み〜」

宗治が波の肩に直接刀身を押しつけた。
そして、ぐっと気を注ぎ込んだ。
瞬く間にその気は波の全身を駆け廻り、完全に動きを止めた。

「決着だね」



                       続く




________________________________________




代介「そろそろ決着着きそうだな。帰るか」

紫表「お前、ちゃんと持て」

代介「そう死にそうな顔をするな。まだ行けそうじゃないか」

紫表「あとどんだけ歩くと思ってんだ?」

代介「大丈夫帰りは行きと違って電車」

紫表「なんでこんな目立つときに電車を・・・」

代介「だって疲れるじゃん」

紫表「行きはなぜ歩き?」

代介「トレーニング」

紫表「お前の個人的な理由かよ・・・・・」

Re: リバーシブル    ( No.64 )
日時: 2011/06/19 20:20
名前: 北野(仮名) (ID: YA8nu/PY)

=第五十二話=決着(1)




「さて、これで最後ね」

竹刀を振り回してコウモリの群れを蹴散らした伊達は
最後のヒントを手に入れた。
伊達は他の者にヒントを見られないよう健史を守備に配置して
自分と宗治で残りの手掛かりを探していたのだった。
途中で健史一人では大変だろうとのこりが後二つになったところで
宗治に加勢するように指示を出したのである。

「さて、みんなのところに戻ろうかしら」






波があっさり倒されてからも、相変わらず
宗治の一方的な展開であった。
例え、相手が二人がかりで襲いかかって来たとしても。
疲れ切り、手傷を負った中学生二人がいくら頑張っても
経験豊富で無傷の大学生に勝つのは不可能だった。
最終的に波がされたのと同じようにして気を注がれ、
地面に伏してしまった。

「さて、次はそっちだけど・・・」

ここで宗治はどうしようか悩むことになる。
目の前にいるのは三人の、一族ではない客人の方々。
それも、到底喧嘩すらしそうにない連中である。
手を上げるには忍びない。
かといってスルーしてヒントの情報を漏洩させる訳にも・・・
やっぱり結局の話気を注ぎ込んで動きを止めるしかない、
そういうことになる。

「んじゃ、ちょっとその辺に倒れてもらいま・・」
「ストップ!」

振り向いたとこにいたのは伊達だった。
どうやら全ての手掛かりは集めつくしたらしい。
全部のヒントを手に入れたということは今目の前にある
あれはもう守らなくてもいいということだ。
下手に手を上げずにすんだ、ラッキーと思って
集合したヒントを見た。
一通り、ヒントを横に並べてみた。

一つ目…「ト」と「た」

二つ目…「二」と「み」

三つ目…「イ」と「も」

四つ目…「ハ」と「の」

五つ目…「へ」と「し」

六つ目…「ホ」と「ぎ」

七つ目…「ロ」と「ん」




「ん?並べてみるとこれ案外楽勝じゃね?」

右から左へとズラッと並んだその七枚の紙片を見て
宗治は一瞬にして気がついた。
だって高校入ってすぐに国語でこれを少しだけ
授業でやったから。

「何になるんだ?」

傷つきボロボロになった体を引きずって
健史は休憩を止めてやって来た。

「そういやお前が言ったんだったな。これ多分並び替えだ」

一つ目のヒントを手に入れた時のことを思い出す。
たった一つでも何か分からないかと、解き方を考えた時だ。
健史は、片方の文字が順番を表し、
もう片方の文字をそれに沿って並び変えると
答えが出てくる、確かにそう言った。

「ただし今それを言う訳にはいかねえ。そこで聞かれてっからな」

親指を立ててだるそうに沙羅や治たちの方を指差した。
確かにここで聞かれると先を越されそうで危ない。
とりあえずは宗治に着いていくことにした。





「さあて、どうするよ」

三人組が行ってしまった後、波達が倒れているそばで
治、沙羅、小島は作戦を練っていた。
連中の推理が外れたらいいのだが、あっていたら負けになる。
いや、もういっそのことヤツらを失格にする方法があれば・・・

「部長ー、いい案出たんすけどー」

ありかなあ?と言いたそうな表情で小さく治が挙手した。

「何?」
「代介が言ったこと覚えてます?」
「誰に行ったことだ?」
「伊達先輩」
「えーと、ああ〜」

確かにそれはちょっと不味いな・・・
だがまあ水辺だし・・・負けるよりいっか!






                      続く

さて、こいつらが取る策とは一体!?
いやまあやや昔の話に答え出てるけどね!


________________________________________



紫表「・・・視線が痛い」

代介「・・・・・(無言)・・・・・」

紫表「・・・生臭い」

代介「し—————ん」

紫表「お前もこっち来いよ」

代介「・・・・・(無理不可却下)・・・・・」

紫表「くそぉっ!!」

電車の中でクエを詰めたやや生臭い匂いを放つ
クーラーボックスを支える紫表。
代介はというと確かに支えてはいるが
ボックスと窓の間に位置しているので
電車内の人からは死角になっている。
これが後十五分ほど続くのであった。

Re: リバーシブル    ( No.65 )
日時: 2011/06/20 19:18
名前: 北野(仮名) (ID: suMEt.SO)

=第五十三話=決着(2)



「で、結局答えは何なの?」

いつの間にか誰かは知らんが罠に引っ掛かりまくってくれたせいで
大分安全になっている山中を駆け足で急ぎながら
伊達は宗治に話しかけた。

「ああ、アナグラム(並べ替え問題)だったよ」

淡々と、時折設置されっぱなしの罠を焦らずスッと回避して
その問いに答えた。

「並びの順は?」
「いろは歌だ」
「えーと・・・ああ〜」

いろは歌というとあの有名な奴だ。

『色は匂えど 散りぬるを 我が世誰ぞ 常ならん
 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ 酔いもせず』

「本当だ、片仮名の部分がイロハニホヘトになっている」
「お前体大丈夫か?」

宗治がまだ息が上がっている健史をいたわる。
本当のところ、宗治は波と闘っている時、意外と強いなと感じた。
いくら慣れているとはいえ、奥義無しで閃瞬光迅の相手は辛いだろう。
閃遁なら、疲れが溜まるから間合いを詰められるだけで
超スピード状態は解かれる。
だが、閃瞬光迅だと、負担はほとんど0に近い。
普通の運動と、ステップを意識すること意外大差ない。
よって、攻撃が終わるその瞬間までその凄まじいスピードを維持できる。
しかも、衝撃の威力は物体の重さに速さをかけたものだ。
必然的に速度が想像を絶する状態の超速戦闘系の状態で繰り出した
一撃は神がかった一撃になる。

「大丈夫、感覚はマヒしてきたもう痛くない」
「絶対に病院に行けよ、終わったら」

ほっとくとこいつは限度を知らずに頑張るからなぁ・・・
不安と心配の入り混じった目で傷つき、大変そうな従弟を見た。

「ま、そうやって並べ替えると『も』『ん』『の』『み』『ぎ』『し』『た』
 になるってことだ、だから今家に向かってい・・」
「なるほどのう」

どこからか強大な気配を感じる。
あまりの強力さにどこにいるのかが特定できない。
これほどまでの存在は・・・二人しかいないな。
突如沸き起こった焦りが冷静さを欠かせる。
ザァッ・・と風が吹き荒れる。
ざわざわと恐れるように草木は揺れた。
向かい風を受け、髪がなびいている。
だが、今はそんなこと感じ、認知している暇などない。
とりあえず分かっていることは、気を放っているのは
さっきの声から考えて大地様。

「さて、稽古を始めようかの」

肌に当たるそよ風が、勢いを増す。
肌に当たる錘のような気も、その重厚さを増した。
のどを抜ける空気が少なく、息苦しく感じる。
高校時代に出た剣道のインターハイ決勝よりも
遥に強いプレッシャーと緊張感。
昨日の熊が大人しく、可愛く見えるほどの恐怖。
気を抜いたら・・・即敗北。

「稽古って言うからには手抜いて下さるんですよね?」
「当然じゃ。足止めにとどめといてやるわ」

ようやく押し殺されそうなオーラが抑えられる。
大気の奔流も収まり、急速に風も消えた。
周りを包み込んでいた気は、本人が立っているであろう
一点に集まって行った。
今になって気づく、なぜ自分は心眼を使わなかったのか、
そんなの決まってる。思いつかなかったから。
よくあることだ、恐怖に囚われて判断を見失うことは・・・

「美千流、走れ。稽古って言うぐらいならお前には付けないだろ」
「まあね」

小さくぼそぼそと、向こうさんに聞かれないように
耳打ちをするように呟いた。
純粋な自然の風が吹いたのを合図に行動に移った。
心眼で特定した場所に気を纏わせた竹刀を叩きつけんと走りだす。
閃遁も、閃瞬光迅も無い自分には不意打ちしかない。
全霊の力をこめて、木を打撃した。
しかし、いざその攻撃が当たるというその瞬間に、気配が消える。
超速戦闘だ。
その一瞬後に竹刀は木のみを叩き折った。

「まだまだじゃの」
「くそっ・・・」

だが伊達はもう消えた。
作戦としては成功だ。

「じゃ、稽古つけてもらおうかな?」
「よかろう」






                         続きます

Re: リバーシブル    ( No.66 )
日時: 2011/06/21 21:54
名前: 北野(仮名) (ID: gwo7dxKL)

=第五十四話=決着(3)



野山を鹿の様に走る一つの影、
時折作動する仕掛けもものともせずに次々とその持前の
スピードで回避し、突き進む。
周りに足の速さを合わせる必要のない今、
この者の本来のスピードが出ている今、
その速度は相当なものだった。
空気を切り裂くように、すいすいと人間業ではないようなほどの
身軽さと技術で先へ先へと進む。
普段から伸ばしている長い髪が、抵抗を受けてサラサラとなびく。
地面に足跡すら残さないほど軽やかに走りながらふと思いうかんだことを口にした。

「こんな本気で走るのはいつ以来かな?」

確か・・・あれがあった少し後だから、
七年ぶりぐらいになるかな・・・

「あれ」と心の中で出した時、目は他人には分からない程度に細くなっていた。
輝いていた瞳にも、うっすらと淀みが浮き出てくる。
そのことを思い出しただけで、視界がぼやけてきた。
もう気にしなくていいと言われたというのに。

「ごめんなさい」
「しつこい童は煙たがられるぞ」
「誰!?」

いや、そんなの聞かなくても口調から察するに零花様に違い無い。
大地様は宗治と闘ってるしね。
悪いけど、足止め喰らう訳にはいかないんだ。
踏み出す足に今まで以上の力を込める。
ここまで来たら痕跡を残さないよう足音や跡を残さないなんて
言っていられるわけが無い。
タンッと足元を踏みつけて伊達はその姿を消した。
またしても七年ぶり、超速戦闘だ。
そんなにも歳月が経っているというのに、腕は一切衰えていない。
ただでさえ、超速戦闘の名手の娘であるということと、
幼くしてそれを開いた天才だということを暗示していた。
もはや奥義は体に、遺伝子に沁みついている。

「どう?久々の私の超速戦闘は?」

足跡代わりに地に落ちた木の葉を蹴りあげ、
凄まじいスピードで麓へと、突進するような速さで
斜面を駆け降りる。
一つの葉の塊が宙に浮いたかと思うと
道しるべを示すように一瞬にして百メートルほどその光景が並んだ。

「中々、と言ったところかの?」

その後を尾けるように零花も超速戦闘で後を追う。
木の葉の塊が、二つずつ交錯する。

「やっぱり当主様は速いね」
「もっと速いやつがおるわい」
「紫表君ね?」
「もう一人おる」
「お母さん?」
「もう一人おる」

そんな速さだというのに舌をかむことなく悠々と会話をする。
さっきから、二人の差は縮まっていない。

「気になるな—、誰?」
「逃げおおせたら教えてやろう」
「そっか、じゃあ当主様は手ぇ抜かないでね、私も本気で行くから」

伊達の目の色が変わる。
さっきの感傷的なものでもなく、それまでの遊びを楽しむような目でもない。
勝負を、試合を楽しんでいる目だ。
おそらく体育祭みたいな感覚だろう。
好戦的な野生の目、それを見ることができたのはたった一瞬だった。
気付いた時にはもう大分遠くまで行っていたから。

「本気などさっきから出しておったわ。
 あやつはいつ本気を出したら自分自身が紫表より速いことに気づくんじゃ」

ついに伊達は自分の心眼の可視距離から外に出た。

「末恐ろしい二人じゃ。基裏もそうじゃがな」




                      続く




_______________________________________




紫表「やっと帰ってこれた」

代介「お疲れ、筋肉痛なら休んでたら良かったのに」

紫表「言った筈だ言った筈だ言った筈だ言った筈だ言った筈だ言った筈だ言った筈だ
言った筈だ言った筈だ言った筈だ言った筈だ言った筈だ言った筈だ言った筈だ
言った筈だ言った筈だ言った筈だ・・・・・・・」

Re: リバーシブル    ( No.67 )
日時: 2011/06/23 20:22
名前: 北野(仮名) (ID: 7BFkVMAM)

=第五十五話=決着(4)




「御到着っと。当主様はいい感じに捲けたかな?」

伊達家の目の前にたどり着いた伊達は、ゆっくりと門に
近づいていった。
一人じゃ中々開けられないほど大きく、巨大な木製の
外から考えて、手前側に引き開ける門。
昔から思っていたことをはっきりと言おう。
デカすぎ、無駄に。

「さ・て・と、右下だったよなー」

真ん中に立って余裕そうに、ほんの数秒見上げていたが、
すぐに視線を落として右側を向いた。
そこには、ガムテープでプラスチックの板が張り付けられていた。
それに手を掛けようとしたしたその時、

「あれ?何してんすか先輩?」

声をした方向に振りかえる。
まず目に映ったのは大きなアルミのような金属が外装になっている
一つの直方体。
でっかいクーラーボックスみたいだ。
中から魚の放つ特有の生臭いような潮の匂いが漂ってきている。
どうやって運んだのか考えながらその容器の下方を見た。
大きい車輪が付いている。
確かにこれなら重くても運べるだろう。
運んでいたのは二人の後輩。

「何って・・・答えが分かったからここに来たのよ」
「え?分かったの?(うわ〜絶対ウソだ〜)」

あからさまに嫌そうというか信用していないというか
ムカつく目でこっちを見てきた。
こいつはいつになったら自分を先輩だと思うんだ?
()の中の心の声だって聞こえてるんだからな!
胸のうちで愚痴愚痴と呟きながら、目の前にいる代介を睨んだ。
っていうか・・・

「紫表君・・・体、だいじょ・・」
「大丈夫に見えているならあなたは眼科か脳外科に行った方がいい」

ダメだ、生気がない。
今にも倒れそうな目をしている。
普段ちゃんと敬語使ってんのに面影がない。
ストレスの塊だ。
足震えてるし、腕も重たそうだ。

「いや、休んどけって言ったのにどうしてもって・・」
「死ね消えろ果てろ帰れ還れ最低人間引きずりまわし鬼畜外道」

一体何があったのであろうか?
最早紫表が紫表ではない。
おそらく代介が事情を話さず連れて行って結果的にこうなったのであろう。

「何がそれに入ってるの?」
「クエ」
「何を?」
「『食え』じゃなくて『クエ』だっつの(バッカじゃないのー?)」
「紫表君、こいつ殴っていい?」
「俺にやらせて下さい」
「筋肉痛が何を言うか(出来るわきゃねーだろ)」

だったらなんで引きずりまわしたんだ、紫表の泣き寝入りの文句が
聞こえてきたような気がした。
っていうかこいつちょいちょい心の声を入れるのなんとかしてくれないかな?
超ムカつくんですけど。

〜♪〜♪〜♪

ポケットに入れていたケータイが鳴った。
着信音から考えておそらくメールだろう。
アドレスを調べると、沙羅のパソコンからだった。
題名は「代介に見せて下さい」だった。
正直手渡したくないが、渡すしかないだろう。

「代介、これ読んで」

そして代介に、メールを読ませた。

「はーい、先輩失格〜」

それを見た瞬間、心底嬉しそうに笑った。

「はあ!?なんでよ!?」

貸したケータイを代介からひったくった。
そこに映っていたのは短い文章と一枚の画像。
まず文章から、



—————こんなのが見つかったけど・・・どうする?


そして次に画像だ。
そこに映っていたのはさっきまで宗治と健史が
波や天、爽と対決していた場所だ。
ただ一つ違うのは・・・

「なんで看板が灰になってんのよ!」

自分たちがいた時にはまだあった看板、
それが、真っ黒に燃え尽きていた。

「白々しいな、白状しようぜ、せ・ん・ぱ・い」

最高に嫌味ったらしく代介は先輩と言った。

「待って!これは私じゃ・・」
「知りませんよそんなこと。ヒント燃えたらあんたら敗退。
 始まる前にあんたらOKしたっしょ」


そんなこんなでCチーム失格




                             続く

Re: リバーシブル    ( No.68 )
日時: 2011/06/25 21:31
名前: 北野(仮名) (ID: /fPmgxgE)

=第五十六話=決着(5)




伊達たちのチーム脱落、さて優勝は誰の手に?


                  ◆◆◆




「さてと、そろそろ本気出しますか」

沙羅が背中に担いでいるリュックサックから愛用のノートパソコンを取りだした。
そして、カタカタと次々に、流れるようにキーボードを叩いていく。
0と1だけが大量に羅列していたり、変なアルファベットが洪水にように
流れ出てきて、画面内を埋め尽くす。
つい一昨日の、GCOSIQを解いた時のことを思い出す。
あの時も、こんな感じで画面上を文字が走っていた。
パソコンに向かっている時の沙羅の目はいつも真剣だ。
大切な人と一緒にいるように楽しそうでもあり、
誇りを持って取り組んでいるようにも見える。
だからこそたまに思う、一体この技術をどこで手に入れたのであろうかと。
こんなものは、独学でなんとかなるようなものではない。
まるで、プログラマーか本物のハッカーに習ったような腕前だ。

「で、一体何作ってんだ?」
「短期間&効果時間の短いコンピューターウイルス。これでGCOSIQの
 元締めのサーバーにアクセス、そこのプログラムを利用して
 答えを出してもらいます。
 大丈夫、基裏ちゃんが簡単に作ったと言ってたんで
 効果は一秒あれば充分だと思います。
 後十五秒で作ります!だから、邪魔しないでくださいね」

得物を見つけた鷹の様に、目はカッと見開かれた。
キーを叩く指のスピードがさらに上がる。
邪魔をするどころか、そんなことをすることすら
考えさせないような気迫と雰囲気がそこには漂っていた。
何かの職人の技の様に、素早くミスの無い正確な技術、
多分こんなことを自分がしたら指が上手く動かないだろうな、と
治が思ったそのとき、

「出来ました、アクセス履歴があるんで速攻で片付けます」

そう、沙羅が言った五秒後には答えは画面上に出ていた。

                “もんのみぎした”

詳しい解説も下に出ていたがそんなのは後だ。
二股に分かれた川の岸から、伊達家に向かって進み始めた。




                   ###


「地味に・・・重いな」

その頃紫表、代介、基裏、伊達はクソ重いクエと格闘していた。
クエは知っての通り、バカでかい魚である。
だから当然のごとく超重い。
30キロとかあんじゃねーの?って感じ。多分もっとある。
だって四人がかりでも結構キツイから。

「とりあえず台所まで持ってくぞ。そしたらおろせる」
「なんでそんなに余裕なんだお前は?」
「何言ってんだ、お前も普段なら楽勝だろ?」
「まあ・・・ねえ・・・」
「てかな、このクエの半分ぐらいの重さのあのクーラーを倉庫から
 一人で引っ張り出したんだからな、俺は」
「いいから早く運ぼうよ」

このままでは会話が終わらず、立ち止まったままだ、
そう思った基裏は、紫表と代介にさっさと進むように促した。




                    %%%




「よし、ようやく見えてきたぞ」

小島が二百メートルほど先に見えた伊達家を指差した。
もうすでに日は落ちかけている。
西の空を、雲を鮮やかに太陽は赤く照らしている。
そのところどころに黒い鳥が点々と飛んでいる。

「もう夕方かあ」

疲れたように治はため息をついた。
今日はずっと歩きっぱなしだったから無理もない。
多分明日は筋肉痛だと思う。
棒のような足を引きずってようやく門の目の前に着いた。
赤い光を受けて、プラスチックに包まれた何かが輝いている。

「あれだ!」

沙羅がそれを見つけ、駆け寄ろうとしたその時、

「ん?何これー?」

突如中から出てきた少女がそれを拾い上げた。
それと共に代介も中から出てきた。

「弓のにーちゃん、これ何?」
「あー、それを最初に見つけた人が勝ちって遊びやってたんだ」
「じゃあ私の勝ち?」
「・・・もうこの際面倒くさいからそれでいっか」
「やったね、鈴未の勝ちー」






優勝者はまさかの人でした・・・・・・




                     続く


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負け犬の遠吠えコーナー



治&小島&沙羅「なんでだよ!!!!」




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作者の独り言

GW編早く終わらないかな・・・