ALLジャンルのオリジナル小説、ライトノベル、二次創作、ss小説やイラスト投稿なら「小説☆カキコ」

*・*・*第１話*・*・*

「お父さんっ！お父さ……っ！行かないで！」




——ハッ！またこの夢か……
今の叫び声は妹・日茉莉。これは３年前の銀行強盗人質立てこもり事件だ。私のお父さんは、運悪くその銀行にいた。




————３年前

引っ越してきたばかりの新築。
この家に住んで１回目の日曜日だ。

「じゃ、行ってくるな」

お父さんが靴を履きながら言った。

「どこ行くの？お父さん」

朝からお菓子をほおばっている日茉莉。

「ん？ちょっと銀行にいってくるだけさ、お母さんに頼まれてな」

「お母さん、少し頭が痛くてね。」

体が弱いお母さん。引越しの疲れも出ているのだろう。昨日から寝込んでいる。

「じゃあ、すぐ帰ってきてね、お父さん！」



ごく普通の家族の会話。こんな幸せな家族に、この後悪夢が降りかかるとも知らずに——


プルルルルル、プルルルル　　電話だ。

「はい、岡田ですが。警察が何の用ですか。——え？銀行強盗？Ｍ銀行で。……夫が、夫が行きました！」

『そうなんですよ。あなたの夫が人質の１人としてとらえられてます。しかも、あなたの夫が、我々、警察に通報してくれたんです。犯人達の扱いが悪くなるかもしれません。』

「そ、そんな……。夫は無事なんですよね！どうしてこんなことに……」

『大丈夫です。最善を尽くします。』

ガチャ。お母さんは泣いている。別のお菓子に手をつけている７歳の日茉莉には、状況が把握できないようだ。
つい先ほどまで幸せだった家族。
この事件が彼らの運命を、大きく動かそうとは————