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Re: 小説カイコ ( No.114 )
日時: 2012/07/25 08:18
名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: FX8aUA2f)
参照: 今日から3日間、部活なし!

うちの学校にホームルームの時間はない。よって、いきなり一時間目から始まるわけなのだが……

一時間目、古典。

これは一時間目から寝てしまいそうだ。定年間際の古典の先生は、教壇に微動だせず突っ立ったまま、催眠周波をクラス中に放っている。
しかも俺としたことが筆箱を忘れてしまった。申し訳ないが、シャーペンはほっしーに貸してもらおう。

「ねぇ、ほっしー。ごめん、悪いんだけどさ、何か書くもの貸してくんない?」
ほっしーは芝居っぽく、しばらく自分の筆箱をガサガサとあさった。「あー、ごめん高橋。俺シャーペン一本しか持ってないんだよねぇ。右隣の人に貸してもらったら??」

ニヤッと笑うほっしー。人畜無害そうな顔をしておいて、末恐ろしい奴である。しょうがないな、今井に借りよう。
しかしその今井がなぜか居ない。あ、あいつは級長だから出席表を取りに行ってるのか。
後ろの柚木君は静かに本を読んでいる。ちなみに柚木君とはこの前、鎌倉遠足で一緒になったが一回も話したことが無い。話したことがない人にいきなり「シャーペン貸して?」はちょっと気が引ける。

そんなこんなでどうしようか悩んでいると、ほっしーが俺を跨いで杏ちゃんに声を掛けた。
「柏木さーん、なんか高橋が筆箱忘れたらしくてさ、俺、貸す分持ってないから貸してあげてくれない?」
すると杏ちゃんは愛想よくシャーペンと消しゴムを二つセットで貸してくれた。両方とも茶色とピンクの、お上品な柄だった。

「あ……ごめんね。ほんとありがとう。ほんっと申し訳ない。」
「いやいや、そんなに気にしないでよー。かわりに私が忘れた時は高橋君に借りるから。」

イタズラっぽく笑う杏ちゃん。輝かんばかりである。
ほっしーが横でニヤニヤしているが、そんなことは気にしないことにしよう。うん、気にしたら負けだ。

そういう訳で、今日の授業は七時間全部、いつもの数倍楽しく受けられました気がした。まさにこれは魔法のシャーペンである。
ちなみに、申し訳ないので消しゴムは頑張って一回も使わなかった。絶対字を間違えないように持っている集中力の全てを駆使した。


その後の放課後の部活で、ほっしーがさんざん俺をネタにしたのは言及せずとも十分であろう。


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七月も下旬、だんだんと蒸し暑さが増してきた。
今は、子供たちは全員、小・中・高と学校へ出払っている。そうだ、振り込みは今日までだったけ。郵便局に行かないと。

久々に自転車で行こうと思った。確か、任史が去年まで使っていたのがあるはずだ。……運動不足気味なのは十分に承知なのでね。

玄関を出ると、ちょうど目の前の道路を大急ぎで走っている女の人がいた。
「あれ?拓哉くんのお母さん……切崎さんですよね。どうかされたんですか?」

数年ぶりに見たが、この人は拓哉君のお母さんの切崎さんに違いない。でも、こんなに急いでどうしたのだろう。
「く、車!  車出して下さい、お願いします、お願いします………」
「え?」

「中央病院!」切崎さんが大声で叫んだ。「お願いしますお願いしますどうかお願いします………うちに車無いんです、どうかお願いします……」

よく分からないが、何か尋常じゃないことが起こったらしい。急いで車のカギを取って、車を開ける。

「中央病院ですね!?」
「はい、ど、どうか……どうか急いで……」今気づいたが、切崎さんは小刻みに震えていた。

震える切崎さんを助手席へ案内し、
アクセルを踏んで、私はできる限り急いで中央病院へと向かった。