コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 小説カイコ ( No.15 )
- 日時: 2012/04/30 22:50
- 名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: ijs3cMZX)
- 参照: 課題/(^o^)\終わんね
ぎぃゃぁぁあああああああああああ!!
軽く死ぬかと思った。叫びまくった。
しかしすぐにバフン、と大きな音がして自分の体がマンホールの冷たい底に打ち付けられる。
けれどそこには新体操で使うような真っ白な超やわらかいハンペンみたいなマットが敷いてあって、どうやら怪我はせずに済んだらしい。軽くゲロりそうだけど。さらに地上までの距離を見てみると、2mも無い感じだった。
数秒すると、背後でトスンとまるで猫みたいに軽い音がして奴(謎の中学生)が着地してきた。
マンホールの中は以外と明るい。たった一つ、電球が天井から吊るされていて、それが黄色を帯びた光であたりを照らしているようだった。天井にぽっかりと空いたマンホールの出口から見える空は、まるでそこだけ丸く切り取られたようで、上から眩しい朝日が降り注いでいる。
「洞窟みたいだな……」
空気はひやりと冷たかった。あたりを冷静に見まわしてみると意外と奥行きがあり、どこまで続いているのか知らないが、前後に続く通路はとても長くて薄暗い。通路の先は真っ暗で、どこが通路の終わりなのかどこまで続いているのかは全く見当も付かない。
「おい、お前。」
「え?」
一瞬、好奇心が祟ってこの中学生のことを忘れていた。そうだった、こいつに落とされたんだった。……つくづく自分の呑気さに笑える。
そいつの顔をよく見れば、女の子だった。かなりボーイッシュな感じの顔つきで、髪は肩につくかつかないかくらいだ。ぱっちりと開かれたまるで吸い込まれるような瞳は大きく、言ってみればけっこう可愛い。
「昨日、幸せだったか?」
その子は急にそんなことを聞いてきた。
「え、いや別に。」
するとその子は満足そうに僅かに口角を上げると、ふーんと相槌を打った。右手の人差し指を顎の先に当てて、斜め上の方を意味ありげに見上げている。整った横顔が、上から差し込む朝日に照らされて、白く輝いている。
それから少し長めに瞼を閉じた後、ゆっくりと俺の方に振り返った。
「そう。じゃあアンタは今日からカイコマスターだ。」
「え……蚕マスターって言った?」
「昨日、変なもの見たろ。」唐突な質問が再び飛んでくる。
「え?」
「分かってるよ見たんだろ。おい、なんだった…?」
変なもの、と聞かれてまっさきに思いついたのが、昨日に見た“カイコ”という文字だった。
けども、相変わらずこの突拍子もない少女の質問の意味が分かるはずもなく、俺は完璧に混乱した脳ミソで少女の質問にとりあえず答えることにした。
「えーっとね、いっつも行ってるサイトがあるんだけど、そのサイトの中のいろんな文字が“カイコ”になってたな。あとそのサイトに熊のキャラクターがいるんだけど、それが芋虫を握ってたりしてたぐらいで、、んと……あとはいつもと変わりないかな。」自分でも途中で何を言っているのか分からなくなってくる。
しかし少女はこれで満足したらしく、うんうんと頷くとまた喋り始めた。
「そうかそうか。そんじゃ、説明してやろう。カイコマスターについて」少女は一息付くと、気持ちよさそうに大きな伸びをした。「昨日のそのサイトでお前は勘違いしているみたいだが、カイコマスターっていうのは、昆虫の蚕とはあまり関係ない。」
「……あまり?」
「察しの通り、少しは関係があるという事だ。まぁ、その話は一段落してから話そう。カイコマスターは様々な方法でランダムにこの国に在住している者の中から選ばれる。お前が選ばれた方法は“ネット選出”だろう。まぁ、そんな事はどうでもいいが———— カイコマスターというのはお前の知っている言葉で表すなら……うーん、まぁ人助けと言ったところか。私もカイコマスターに救われた身だからな。その活動内容は契約終了後にしか伝えられない。ああ、収入は約束するから安心しろ。」
……はぁ。
朝から変な奴に捕まってしまったようだ。あれかな、こいつは最近流行の厨二病ってやつかな。何ともメイワクな。
「へぇ、そうなんだ」とりあえず、返事をする。
「もう帰れ。人が来る。」
「え?」
「帰れと言っている。そこにハシゴがあるだろ、登れば地上に出れる。助けが欲しいなら手伝ってやるが?」