コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 小説カイコ ( No.181 )
- 日時: 2011/11/20 20:59
- 名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: hTgX0rwQ)
- 参照: スーパーカリフラジュリスティックエクスペリドーシャス。
朝。いつも通り眠い。そして体がだるい。明日から両親の実家の山形へ里帰りなのに、こんなんで俺、大丈夫だろうか……
電車に揺られながら、あの夢の女の子のことを思い出していた。着物を着てたし、何かの映画かドラマで見た子なんだろうか。
うーん。でもあんな子見たこと無いよなぁ。
そんな事をうつらうつら考えているといつの間にか電車はいくつも駅を通過して、たぶん地元の我島岡から数えて八個目の駅に着いた。乗客の乗り降りが一通り終わって扉が閉まると、トントン、と後ろから右肩を叩かれた。誰だろうと思って斜め後ろを振り返ると杏ちゃんだった。
「高橋君、おはよ。」杏ちゃんが小さい声で挨拶してきた。その後ろには柚木君まで居た。
「あ、二人ともおはよう。ここ最寄りの駅なの?」電車の中でこの二人に会ったのはこれが初めてだった。
「ううん、柚木君はここだけど、私の地元はもっと学校の近く。明日からの三連休で山形の方に行くんだけど、その準備で親戚の家に泊まったの。」
後ろで、柚木君が「俺たちいとこだから……」とボソボソと付け加えた。
なに、二人はいとこだったのか。なんか悔しい。というか三連休に山形って……
「…え、マジで。俺も明日から山形行くよ。両親が出身だからその縁で。」
すると杏ちゃんは えーっ、と目を大きく開いて驚いた。「本当に!? 山形のどこらへん?」
「うーんと、よく分かってないんだけど、庄内じゃなくてめっちゃ内陸の方。俗に言う奥羽山脈ってやつ……かな?」
「うっそ、私たちもだよ! 何てところ?うちの所は瓜谷村ってとこ。」
「瓜谷?なんか聞いたことあるな……俺んとこは神蟲村ってところ。でも最近合併したとか何とかって……」
「うっそー!?」杏ちゃんは少し大きい声を出した。「すっごい偶然だね!瓜谷から神蟲までって、確か車で三十分もかからないよ!あれだよね、神蟲村って毎年、蟲神神社でお祭りがあるんだったよね。私一回も行ったことないんだー 今年こそは行きたいな〜。」
「あ、俺の叔父さんそこの神社の神主だよ(笑) 名字違うけど。」
「……もしかして衣田さん?」柚木君が首を傾けた。
「うん。衣田さん。っつーか世の中狭いもんだね。こんなところで繋がるとはね。」
「ええっ!」杏ちゃんがまたもや大きな声を出した。「あれ、達矢くんって衣田さんの娘さんと結婚したんだよね。」
すると柚木君がうん、と頷いた。「まだ式は挙げてないけど。兄貴、籍は入れたって言ってた。あ、達矢って俺の兄ちゃんね。」
びっくりした。入学してから今の今まで喋ったことの無かった柚木君とこんな接点があったなんて。
「じゃ、じゃあ、俺のいとこと柚木君のお兄さんが夫婦だってこと!? うわぁ、世の中本当に狭いね。あ、そういえば柚木君ってどこの中学出身?」もしかしたら、中学でも接点があったかもしれない。
「第一西中だけど……引っ越しする前は茨城の中学校に行ってた。」
「へぇ、茨城か。」そういえば鈴木の実家も茨城だったな。「何て学校?」
すると柚木君は少し照れた。「えっと…国立F大学付属中……」
「えーっ、そうだったんだ!かなりエリートじゃん!」杏ちゃんが興奮して言った。
茨城県、国立F大学付属中……どっかで聞いた名前だな……
「あ、」思い出した。あれだ、時木の通ってた中学校だ。
その時、俺の脳裏に浮かんだのは時木の記憶の中のある男の子の映像。小学校の教室で、中学受験のためにあいつが黙々と勉強をしていた時の映像だ。
“杏ちゃんってさ、毎日頑張ってて偉いよね。”
そう、時木に声をかけた男の子が居たはずだ。たぶん、あれは時木にとっての初恋だったんじゃないかなぁ(笑)
……ってそんなことじゃなくて。あの男の子、そう言えばやけに柚木君に似てないか……?
「あのさ、柚木君。」なぜか心臓がとてもドキドキした。「柚木君のお兄さんって……19歳とか20歳とかそこらへん?」
柚木君は おお、と声を漏らした。「大正解。この前ジャスト20歳になったところ。何でわかったの?」
俺は、この時柚木君の言葉を半分も耳に入れてなかったと思う。
杏ちゃん、柚木君、俺、鈴木、そして時木。
まるで今まであった出来事がカチリ、と音を立てて繋がったようだった。
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【解説】
久々の更新のくせにめっさ展開速くて分かりにくいと思うのでここで解説(笑)
164年前にカイコ(太一)が住んでいたのは瓜谷村、そして化衣ちゃんが住んでいたのは神蟲村です。
そして現代。主人公の高橋の両親の出身地が神蟲村、そして杏ちゃんと柚木君親戚一家が瓜谷村出身だったてことです。
そして柚木君のお兄ちゃん(達矢)と高橋のいとこの衣田(娘)さんが恋仲で、
柚木君一家はもともと茨城県に住んでおり、その時に達矢兄さんは時木と小学校のクラスメートだったということです。(時木の記憶 >>73)
嗚呼、この設定を出すのに半年もかかってしまった……(笑)
作中にちょくちょく出てくる謎の柚木君の存在に対して違和感を感じていた方はけっこう多くいらっしゃったのでは。
まとめとしては、柚木君は決して影キャラではなかったということです(・ω・´)!
- Re: 小説カイコ ( No.182 )
- 日時: 2012/12/27 23:18
- 名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: geHdv8JL)
- 参照: スルメ喰いたい。
「じゃあお兄さんの名前は……柚木達矢さん?」ガタンゴトン、と電車が大きく揺れた。
「ああ、」柚木君が頷いた。「そうだよ。そのまんまだけど。ところで高橋君は何しに行くの? 俺らは普通に夏行けなかった分の墓参りだけど。」
「俺は神子(ミコ)さんやりに。つーか生まれて初めて行くんだよね。その衣田さんって人にも超小さい頃に会ったことがあるくらいで、ほぼ初めて会うようなもん。本音言うとちょっとめんどいな(笑)」
「わー、高橋君が神子さんやるの!?」杏ちゃんが笑った。「私ったら、あれ女の子がやる仕事だと思ってた。」
それ、鈴木にも言われたなorz 隣に立っているおじさんが大きなくしゃみをした。
「俺もよく分からないんだけど、なんか神子さんって未婚の人しかやっちゃいけないらしくてさ。んで、去年まで例の衣田さんの娘さんがやってたらしいんだけど、結婚するらしいから俺に順番が回ってきた……ってところ?らしい。あーホント自分でもよく状況を分かってないんだ。妹が中学に入ったら妹がやる予定らしいけど。何が何だか……」
本当、自分でもよく分かっていないのだ。
数日前にいきなり我が高橋家に一本の電話がかかってきた。電話の主は俺の叔父さん、すなわち母親の兄である衣田さんからだった。しかも用は俺にあると言う。
一体何の用だと思って電話にでると、「どーもっお久しぶり。衣田礼治でしたー。任史〜、今年から神子(ミコ)さんどうだやー。」と物凄い勢いで衣田さんは話し出したのだ。
聞いたところによると、衣田さんは蟲神神社という神社の神主さんらしい。らしい、というのは俺は生まれてこのかた、あまり親戚やいとこと言った類に会ったことが無かったからである。この衣田さんも記憶が無いくらいに小さい頃にしか会ったことが無い。
それで、何が何だか分からないまま、断る理由も思いつかずに神子さんを引き受けることになってしまった。昨日、最近話題の東北新幹線に乗るべく切符を買ったばかりだ。
十年以上昔に一回だけ行った山形である。正直無事に辿り着ける自信が無い。
「あ、あのさ。」ちょっと恥ずかしいけど迷って大変な目に合うよりはマシかもしれない。「俺、実はずっと前に家族で行ったきり山形行ったこと無くてさ……一人で辿り着ける自信無いんだよね。一緒に着いて行っていい?」
「もちろん!あ、でも柚木君とこのお母さんが連れてってくれるから……」
「俺んちは全然オッケーだと思うよ。新幹線だよね?」柚木君が吊革をぎゅっと掴んだ。
「ああ、新幹線。ほんっと、ありがとう。超助かったよ。」
よかった。これで何とか衣田さんのところまで行けそうだ。
に、しても。
神子さんって一体何をやるんだか……