コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 小説カイコ ( No.35 )
- 日時: 2012/04/17 22:44
- 名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: kVKlosoT)
- 参照: 眠いー
昼休み。屋上で鈴木と弁当をつっついていた。
放送部の放送が流れている。「一、二年生へ連絡です。火曜日のホームルームは総合超過となります。遠足の予定等は各自で立てるようにしてください。」
我が校では7時間授業がスタンダードだ。だから「放課後あつまろー」っていうのは部活ができなくなる。更に朝も夕もホームルームが無く、一週間に一回だけ火曜の7限にホームルームがあるのだが……
ぬん。いつ話し合えばいいんだ。
班員は男子は俺と柚木君と荒木君と田中君、女子は杏ちゃんと川口さんだった。まぁ、それはいいものの、杏ちゃんとこの前少し喋っただけで、あとは全く喋ったことがない。さらに田中君は出席番号的に近いから分かるが、柚木君と荒木君って、顔も分からないな。
口下手がここで効いてくるとはね。
「あーあ。面倒くせー。」鈴木が大きく伸びをしながら叫んだ。
「え。鈴木ってそういうの好きそうじゃん。女子と話せればそれだけで幸せなんでしょ?」
鈴木はふぅ、とため息をつくと、そのまま後ろへ倒れて寝っころがった。「俺、男子だけの班なんだ。」
「あー。F組もやっぱ作ったかぁ、男子だけ班。ま、女子が少ないからしょうがないよね。」
「だってさ、高橋、考えてみろよ。男子だけじゃ観覧車もプリクラも気持ち悪いぢゃんか。お化け屋敷もつまんないよ。」
その時、左ポケットの携帯が着信を知らせた。初め、鈴木のなのか俺のなのか分からなくて、二人でキョロキョロしてしまった。やっと自分のだと分かり、ポケットから引っ張り出して携帯の背中を見る。
“時木 杏”
……あいつにメアド教えてなかったよな?!
「お、着信?だれだれー女の子だったら許さんぞ。」鈴木が携帯を覗き込んで来た。
「あ、いや違うんだ。別にそういうのじゃなくて、」
瞬間、俺の携帯の画面に伸ばした鈴木の腕がぴたりと止まった。ワザとじゃないのかと思えるくらいに、ぴったりと。携帯の画面を見つめたまま何も言わず、鈴木特有のふざけた表情も消えて大きく目を見開いている。なんか、異常だ。演技じゃない。
「鈴木?」何も答えない。「おい! 鈴木ったら、」
ハッと、今気が付いたかのように鈴木が俺の方を振り返り、大きく開かれた薄い茶色の瞳と目が合った。
「あ?俺、いや。何でもない。そんなハズないよな……」
「そんなハズって?」
すると鈴木はううん、と首を横に振る。「なんでもないからよ!」いつも通りのふざけた笑顔が顔に戻ったが、その笑顔が無理なものくらい俺にだってわかる。
「鈴木!」
思わず、立ち上がろうとした鈴木の手首をつかんだ。鈴木は うん?とおどけたように俺の方へ振り返る。
「やだなぁ、高橋。俺は女のコとしか手ぇ繋がないって決めてんの。それとも俺がイケメンすぎて俺のこと好きになっちゃったとか?」
アハハハハハハと鈴木は陽気に笑った。
気のせいかもしれない。鈴木は本当になんでもないかもしれない。でも、やけに胸が騒ぐのはなんでだろう?
その時、風が吹いて鈴木の食べていたカレーパンの袋が顔に当たった。
◇
それから他愛の無い会話を二言三言交わした後、教室練へと続く階段の踊り場で鈴木と別れ、一人になってから時木からのメールを確認した。
“お前あんまりだな!最悪だな。お前のカイコ、泣いて帰ってきたぞ”
……蚕って泣くの?
なんか泣いてるところ想像すると鳥肌が立つが、泣かせてしまったのなら謝ろう(笑)っていうかどうやって蚕は時木のところまで行ったのだろうか。まさか電車に乗ったりしないよな。蚕が改札通ってたりしたら、少し面白いかも……いや、気持ち悪いだけか。
教室に着くと、川口さんと思われる目の大きい、明るい茶色の長い髪をした人が俺の方に駆け寄ってきた。
「高橋君!みんな待ってたんだよ!」
「へ。」いきなりがっしりと手首を掴まれて、思わず硬直してしまう。
「忘れたの〜え・ん・そ・くだよ。」
「あ、話し合ってたのか。ごめん。」
いやー申し訳ない。みんな集合していたとは。川口さんにぐいぐい引っ張られて教卓の後ろに行くと、男三人と杏ちゃんが居た。
「じゃ、高橋も来たところで全員集合だね。」声をあげたのはその三人の中で唯一顔が分かる、田中君だった。すると川口さんがハーイ!とテンポよく手を挙げ、「まず、自己紹介でしょ。んじゃあ、遅刻の罰として高橋君からねー!」と楽しそうに言った。どこまでも明るい人である。
……はあぁぁ。
ちゃんと俺、やってけるかな。