コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 小説カイコ ( No.51 )
- 日時: 2012/04/29 23:49
- 名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: ijs3cMZX)
- 参照: 書き直してます。。。
なんとも言えないね。この感じ。
昨日の大雨のせいか、マンホールの蓋はまだ湿っていた。二人でしゃがみ込むように中を覗いてみたが、真っ暗で何も見えない。ふと、後ろを振り向くとさっきまで居たあの黒猫はもう居なくなっていた。
「でさ、どうすんの。」鈴木の声が地底へと反響した。電灯に照らされて、二人分の影が地面に伸びる。
「飛び、降りる。」
「??」
「だからこっから飛び降りる。この前は突き落とされたけど。」
鈴木は まじか、と顔を見合わせてきた。
「優柔不断で草食系男子の象徴のような高橋君がなんてアバウトな!じゃあお前が先に降りろよ。経験者なんだろ。」
「……ッ、おいっ!」
もう鈴木なんて信じねー!!(二回目)
なんとアイツは俺の背中をいきなり押して、俺をマンホールに突き落としたのだ。さすが時木の弟。
闇の中へと落下。落ちていくときに感じるあの、喉にせり上がるような気持ち悪さが体中に駆け巡る。
「うわああああああああああああああああああああああああああ!!」
って叫びまくったけど、たいした距離落っこちなかった。前回のようにバスン、と音がして、全身が地面に打ち付けられる。
しばらくすると、よこでストンと軽い音がして、(前にもこんなことあったよね?)鈴木が猫みたいに軽やかに着地してきた。思わずさっき見た黒猫を連想してしまう。コイツ体重ないんじゃないか。
「鈴木……お前体重何キロ。」
「六十キロ台後半だけど?健康的だろ!」輝くばかりの笑顔である。これが巷でウワサの鈴木君スマイルか。
俺たちが着地したのは前とは違い、水色のブルーシートの上だった。マンホールの中にしてはやけに明るくて、窓もあって、窓の向こうは澄んだ青空が広がっていて……
……ん?
思わず眉毛が変な方向に曲がってしまう。ここで一旦、今までの過程を整理しよう。
今は確か、夜の八時だ。
なのに、窓の外には青空が広がっている。
そして、ここは地下のハズ。
なのに、窓から空が見える。
……で、このブルーシートである。
「鈴木、ここってさ、」まさか、まさかと思うけど。
「……ああ、なんか部室っぽいな。」
なんと、4丁目のマンホールから落下して、我が陸上部の部室に着地したらしい。意味が分からん。だってこの前、時木に落とされたときはいかにも地下って感じがする、黄色い光を放つ電球がぶら下がってる場所に落ちたはずなのに。
「あ、高橋、時計見てみ。」
鈴木が連絡黒板の上に据え付けられている緑色の時計を指さした。六時五十分。まあ、空が青いところを考えると、朝の六時五十分だろう。なんてこっちゃ。全くもって意味が分からない。……ちなみに俺の腕時計はデジタル文字で 20:08 を表示している。さらに意味わからん。
ぬーん、としばらく考え込んでいると、部室のドア越しに誰かの話す声と足音が聞こえてきた。……たぶん人数は二人で、男の声だ。
「あ、誰か来るぞ。やばい、高橋、隠れろ!!」鈴木がとっさに掃除用具入れの中に隠れた。俺はロッカーと壁の間の微妙な隙間に隠れることにした……って埃やべえ。思わず咽込みそうになったが、両手で抑えてなんとか堪えた。
ガチャン、とドアの開く音がした。
「〜〜〜、〜〜〜〜?」
「〜〜、〜〜〜〜。」
謎の二人が何か喋っているが、コソコソ話していてあまりよく聞こえない。誰も居ないはずなのに、よっぽど秘密の話をしているらしい。一体こんな早い時間に誰なのだろう。
その謎の二人の正体を確かめるべく、音をたてないように頑張って体を捻じ曲げ、床とロッカーのスキマから覗き見た。よし、これでなんとか……
「………ッ!?」
なんと、なんと、その二人は。
俺と鈴木だった。