コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 小説カイコ ( No.90 )
- 日時: 2012/07/11 21:18
- 名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: LWvVdf8p)
- 参照: 友達が駅前にチャリ置いといたら罰金2万円だったってwww
「は?」
「あ、いやあの、えっと、うちの陸上部のマネージャーやってみない?っていう……っていうかやって下さいませんか?というか。」
自分のチキン具合に悲しくなる。身を投げたい。
田中君はというと、しばらくキョトンとした後にすがすがしすぎる笑顔を俺に向けてきた。
「えーと、そうだなぁ。俺やったことないからできるかどうか分かんないけど。高橋のお誘いだし、どーせ暇だし。見学だけでも行ってみようかな!」少し、照れ笑いしながらもじもじとそう答えてくれた。
「ありがとう、ほんっとありがとうっ!」
握手を求めると田中君は笑いながら「大袈裟だなぁ。」とか言いながら応じてくれた。
放課後、部室に田中君と一緒に参上すると短距離メンバーと中距離メンバーが勢ぞろいしていた。
「おー高橋、遅かったな。」
小久保がシーブリーズを顔(!)に塗りながら話しかけてきた。小久保の周りには数々の制汗剤の缶だのシートだのが転がっていて、こいつの人格を顕著に示している。ちなみにこいつのお陰で陸上部の男子部室は常に華やかな香りに包まれている。
鈴木と張先輩は窓べりに寄りかかって何やら話し込んでいて、飯塚と佐藤先輩はなぜか弁当を今頃食っていた。小久保のミントの匂いと弁当の臭いが混ざって凄まじいことになっている。
そんなこんなで、みんなそれぞれの事情に熱中していて俺たちの方へ注意を向ける人は一人もいなかった。
「あのー!!みなさん!」
俺が声を張り上げると何事かとみんなこちらへ振り返ってきた。
「こちら、田中君が今日陸上部を見学していくそうです!」田中君が横でよろしくお願いします、とニコニコしながら言った。
「ああん?高橋、お前マネージャーは?ちなみにE組女子は俺のスマイルをもってしても全滅だな……」
「ストーップ!鈴木、田中君はマネージャー志望なんだな。」胸を張って答えると、田中君は相変わらず横でニコニコしていたが、部室全体がシーンとなった。小久保はシーブリーズを塗っていた手をそのままに、あんぐりと口を開けている。
シーンとなっている中、田中君がいきなり自己紹介をはじめた。
「D組二十五番、田中誉志夫です。高橋から誘われてマネージャーやろうかどうか迷ってたんだけど、みんないい人そうだし雰囲気いいし、やっぱりここのマネージャーやりたいです。あ、俺じゃ駄目かな?」
シーン
二、三秒間が開いた後に、一番早く我に返った佐藤先輩が慌てて応答した。
「そ、そんなことないよ!むしろ本当にマネージャーやってくれるの?本当に?ありがとう!田中君、本当にありがと!マジで困ってたとこなんだよ!」佐藤先輩は嬉しさのあまり田中君の肩をがっしりと掴んで、ブンブンと揺すっていた。
それから、二、三テンポ遅れて、部室中でおっしゃー!という歓声が起こった。
その後、部活が終わった後に “祝☆田中君歓迎パーティー” ということで近くのコンビニでみんなでフライドチキンを買って食った。まあ、ただ単に腹が減ってたっていうのもあるんだろうが。
「いやー、しかしヘタレ高橋がよくやったよ。俺さぁ、マネージャー=女子ってイメージしかなかったから最初びっくりしちゃった。」鈴木がファンタの缶を飲みほしながら言った。どこまでもムカつく奴だなこいつは。
「そーだ、田中君のことは何て呼べばいいかな?俺、一応みんなのことは下の名前で呼ぶようにしてるんだけど。」佐藤先輩がチキンをほおばっていた田中君に聞いた。
「ん〜、じゃあ 〝スター" でお願いしますっ。」
「え?」
みんなで「何で?」とはもってしまった。
「だから、俺の名前ホシオだから星!、みたいな?」
思わずみんな一斉に吹いてしまった。マジでその発想は無かった。
みんなに笑われて、田中君はもじもじと照れながら頭を掻いている。「さすがにスターはもじりすぎたかなぁ。じゃあ、ほっしー で!」
そういう訳で、その日から田中君のあだ名はほっしーとなった。