コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

四人目 野田弘樹の場合3 ( No.13 )
日時: 2011/04/28 01:08
名前: 天神千尋 (ID: UAMHtL4A)

俺が近づくと、ステレオタイプのヤンキーはノダの財布をけつポッケから抜き取り今まさに、恐喝完了といった雰囲気だった。まぁこのまま見てみぬ振りをするのも寝覚めが悪いので、助けようと一歩踏み出したところヤンキーが振り回した腕が俺の顔面にクリーンヒット、裏拳気味のその攻撃に目がちかちかしてそのままうずくまることになった。まぁ慣れないことはしないに越したことはないという典型である。

ところが、その場はそのまま収まらなかった。

ヤンキーがノダの財布から千円札を抜き取ろうとした瞬間、突如ノダが吼えた

「俺はその金で"なかよし"を買うんじゃーーーー!」

朦朧とする意識を振り払い片目を上げるときれいな内股をヤンキーに決めているノダの姿があった。返す刀で二人目を払い越しでなぎ払い最後の一人には綺麗な背負い投げを決めた。肩で息をしていたが、ハッと気づくと打ち捨てられた財布を慌てて拾い、中身を確認してほっとした表情を見せたノダ。その目線の先に片目を押さえる俺の間抜け面があった。

「どした...んですか?」

助けるつもりが助けられる形になったその状況をどう説明していいかわからず

「やぁノダ。奇遇だね!」

というあまりにも見た目にそぐわない返事を返すのが精一杯だった。その後、腫れ上がってきた片目を見て状況を理解したノダはちょっと待っててと一言を残してコンビニに入っていった。

場所は変わって近くの公園。ノダが買ってきてくれたアイスを目に当てながらベンチに腰掛けている。

「なぁノダ、さっき言ってた"なかよし"ってなに?」

「ああ、あれねセーラームーン載ってる雑誌」

......っえ?一瞬何をしゃべっているのか良くわからず、理解するまでに数秒を要した。セーラームーンって言った?セーラームーンってあのセーラームーン?と言うと

「え?知ってるの?見てる?ねぇ見てる?面白いよねぇ。佐藤君はどれが好き」

どれと言われても...なんとなくしか見た事無いからわからないと言おうかと思ったがあまりの勢いにそんな事も言えず、

「あぁ...えーっと...まぁ青いのかな?」

と適当にお茶を濁そうとしたら、先方は我が意得たり!とさらに勢いをましてセーラームーンの青について熱く語りだした。

そう、ノダはパンク好きのアニオタという重病患者だったのである。その後も一時間ほど会話をすると、アニメキャラのクリアファイルを持って道場に行った際に、件のセーラームーンの青を馬鹿にされて大暴れをして先輩に怪我をさせてしまい、全員から無視されるようになった為、道場を辞めたという話などをものすごい勢いで語った。

かく言う俺もジャンルは違えど漫画は大好きだったので、お互いが知っているマニアックな漫画の話や、インディーズのパンクバンドの話などで大いに盛り上がった。第一印象は根暗なトトロという印象だったが、話してみると非常に明るく面白く、心の中のノートに記載された『根暗なトトロ』と記載されたところに二重線を引いて、改めて

『陽気なトトロ』

と記載した。

翌日、綺麗に青タンを作った俺は散々教室で馬鹿にされた。そして、改めてモリワキとネギに昨日の出来事と、ノダの趣味・性格を説明した。これが俗に言う『ノダなかよし事件』として語り継がれることになる。

その後のノダは全天候型いじられキャラというクラス内の立ち位置を確立することになるのだが、それはまた続きで。