コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 恋をするノダ1 ( No.18 )
- 日時: 2011/04/30 13:55
- 名前: 天神千尋 (ID: VmcrDO2v)
高2の6月。
衣替えもあり、薄着になる女子。
それをみて毒づくことしかできない我々。それもそう、理系クラスには女子はいない。どんなに見回しても白いセーラー服を拝むことはできないのである。
そりゃ一部の野郎は彼女なるものがいると言う噂があったが、なにせモテない上に雌との接点を遮断されているので、彼女がいると言おうものならそれ相応の扱いを受けることを覚悟しなければならない状況にあった。では浮いた話がまったく無いといえば嘘になる。好きな人の一人や二人はいる、だがしかし我々にできる事といえばごくたまに階段ですれ違う際に目で追い、通りすぎざまに香る女子が放つ良い匂いを肺にたっぷに溜め込むくらいである。
そんな状況の中、一人頬杖をついてしきりにため息を漏らす、態度少女マンガ、見た目慢★画太郎がいた。
ノダである。
あまりにも様子のおかしいノダに「どうしたんだ?」と話しかけても「あ?ああ、なんでもない」とまた溜息、お昼になっても食事をしない様子である。いよいよ病気かなんかかと心配になった俺がノダを呼び出し、いつもの三人が問いただすこと数分。ついにあきらめたのかノダが重い口を開いた。
- 恋をするノダ2 ( No.19 )
- 日時: 2011/04/30 16:24
- 名前: 天神千尋 (ID: VmcrDO2v)
第二校舎の鍵が閉まって入れない屋上への階段、その踊り場が学校での我々のスペースだった。人気も無いそのスペースで、いつもはネギ主催のノミ屋まがいの競馬配当金配布や、銘々持ち寄った最上級のエログッズ品評会など高尚なイベント事に使用されるそのスペースに集まった四人。
少しやつれた顔で上目使いで俺たちを見渡すノダ。
「とりあえず気持ち悪いからその乙女チックな上目使いはやめろ、なっ」
と早速鋭利に突っ込むとまた溜息。とそこで、モテない成りに経験豊富なネギが切り込んだ。
「まさかとは思うがお前好きな子でもできた?」
と突然ノダがネギの首を猛然と絞め始めた
「誰に聞いたーさぁ誰だーーーー!!!!」
「いや、お前の態度見てたら...ってまじ無理だ!し...じぬ...!」
突然の行動に泡を食ったモリワキと俺で
「おいおい、そのままだと本物のオランウータンになっちまうぞ」
「誰が見てもバレバレな態度だったぞここ数日」
と必死に宥め、やっと手を放すとそのまま崩れるように四つんばいになった。
「こんなにキャラクター以外で人を好きになったのはじめてなんだよぉぉぉぉ...」
と涙ながらに訴えるノダ。「言っておくがアニメキャラは人じゃないぞ」という突っ込みをそこにいる全員がグッと飲み込んで詳細な事情を聞くことにした。涙ながらに震える声でノダが詳細を語りだしたが、興奮しているのか話があっちゃこっちゃ飛んで理解不能だったので、以下にまとめてみる、俺の突っ込みが随所に入る読みにくい文章になるがそれはご愛嬌。
きっかけは一週間前に通学する時、電車に乗り込もうとした時なんだ。家にはビデオデッキが3台あって(補足するとノダんちは金持ちである)、明日録画するテレビ番組をどれにしようか悩みながら(深夜アニメの時間が重複するからな)電車に乗り込もうとしたら踏み外してホームに腰掛ける状態になってしまった。(まぁホームから落ちなかったのは日ごろから腹部に脂肪という名の貯金を貯めてたからな)ところがそれに気付かず電車の扉が閉まり発車しそうになった(まぁそういう人生だよな人の事いえないけど)ノダは必死に体を電車とホームの間から引き釣り出そうとするが、どうにもならない。周りの人も手伝ってくれない(あーあるある俺も)万事休すという所で、警報機がけたたましく鳴り出した。
そして、柔らかい手がノダの左手を掴み引っ張り上げようと持ち上げられた、振り返ると近所の女子高生が(んだと!!!)必死の形相でノダの腕を引っ張っていた。その後、警報に気づいた駅員が数人駆け寄りノダを何とか引っこ抜き事なきを得た。
翌日より同じ時間の電車に乗り合わせている、その女子高生と挨拶やホームで待つ間短い会話をするようになったうちに好きになってしまった。(普通思うんですけどそのシチュエーション男女逆じゃね?)
と、ノダがここまで語ったところで、詳細をノートにまとめた俺、モリワキそしてネギは、5時間目が始まる直前の教室、教卓をダンっ!と叩いて注目を集めたところで、ノダを教卓の脇に立たせる。そして高らかに宣言した。
「みんな!!!聞いてくれノダが恋をした!!!」
全員が見を剥く。
「ひいては、相手女子高生の見た目や制服の形状、詳細をまとめたプリントを今からコピーして渡すから情報提供よろしく!!」
どどどどどどおおおおお!!!!!と物すごい歓声が起きる。理系クラスという男所帯の暑苦しい男達はモテない馬鹿の味方をするという一点においてはもんの凄い結束力を発揮するのである。
ノダは教卓脇に立たされた時、わけのわからないといった顔をしていたが、突然の出来事にアワアワとしていた。
翌日より急遽、対策本部が設置され相手女子高生改め被疑者(ここでは何故か被疑者と呼ばれていた)の情報が次々と舞い込んでくることとなった。
名前:高木由香里
最寄り駅:我々と同じ
とここまで情報が集まってきた所で嫌な情報が入ってきた。クラスでたった一人、彼女がいる事を公言しているモテ男、山口が
「知ってるけどそいつ彼女の友達で、結構イケイケな娘だよ。」
との事。ノダが話す被疑者の印象はノダフィルターが掛かっていたため誰しも清純派を想像していたが、どうやら違うらしい。
その後も、我が校の先輩と過去付き合っていた。やら、過去に新宿で補導されたことがあるらしいやら、きな臭い情報が舞い込んできたが、完全に恋する乙女と化しているノダにこの情報を提供する事はできなかった。
そしてさらに二日後。
被疑者女性がイケイケの半ヤンキーであることがわかった我々は、この戦は完全なる負け戦であることを早々に悟り、フラれる事でたったと諦めさせようと、ノダを煽りに煽った。そしていよいよノダが決意をする。
「わかった!告白する」
本土決戦に臨む日本兵の様な形相で放課後高らかに宣言をすると、一路最寄り駅へと向かった。勿論クラス全員(部活所属者もサボって)付いていったことは言うまでもない。
- 恋をするノダ3 ( No.20 )
- 日時: 2011/04/30 16:30
- 名前: 天神千尋 (ID: VmcrDO2v)
被疑者の帰りを強襲しようという作戦で最寄駅に向かう我々。すでに被疑者がどれくらいの時間に帰ってくるかリサーチ済みの我々は、山口が隠し撮りした被疑者の写真を胸ポッケに駅へと向かう。
普段であれば電車で向かうところだが、自転車通学の人間が多いと言うことで、それぞれ自転車に二人乗りをして決戦の地へ向かうこととなった。最初、俺の後ろにノダが乗っていたが、あまりの体重差に自転車がウィリーしてしまい告白どころか大事故が発生しそうであったので、俺の自転車をノダが漕ぐことになった。
道々、後輪に立ち乗りをしていると、ノダは極度の緊張の為か無言。俺が掴む両肩はずっと震えていた。ノダの背中が見る見る汗ばんでいく。そして駅が見えてきた頃には土砂降りの雨に打たれたように汗びっしょりとなっていた。駅のロータリーに辿り着くとノダが急ブレーキをかけ全員を振り返り止れというジェスチャーをする。
緊急事態が発生していた。
高木某なる被疑者が駅に居るではないか!!
我々はばれないように、駅の向かいにあるデパート裏に回りこみ、そこから駅を見渡せる歩道橋へと向かった。
一方ノダは前日寝ずにしたためたラブレターを両手に壊れかけのロボットのような足取りで駅へと向かった...ように見えた。ニ、三歩踏み出すと足を止めてしまい我々を振り仰ぐと
「やっぱ無理!!」
と口パクで我々に訴えかける。ここまできて、不戦敗させるわけには行かない。こんなに面白いイベン...(おっと本音が)ではなく、ここまで協力したのだから、とりあえずどうであれ結果を知りたいのである。クラスの連中全員で
「いけっ!!!」
「告白せずに戻ってきたらコロす!」
「骨は拾ってやる」
「後で、信濃屋の牛丼大盛りおごってやる」
などなど全力で後押しをする。するとゴクリと一回喉を鳴らす様子を見せると、再び件の女子高生へ向けて一歩また一歩と踏み出していく。登山かっ!という突っ込みを入れたくなるほど、遅々として歩みを進めないノダに口パクで罵詈雑言をぶつけながら、被疑者の様子を見ていた山口が何かに気づいた。
「ん〜〜...なんか、高木の様子おかしくない?」
全員が被疑者を見る。何やらピンク色の紙を持って改札を見て時計を見てはモジモジとしている。そして、改めてノダを見ると高木を見てはモジモジ、を繰り返しながらゆっくりと近づいている。
同じような紙を両手に持ち、同じような態度...。
「あっ」
と全員で同じ答えが閃いた瞬間に被疑者が動いた!そしてノダも動いた!
改札を出てきた、我が校でも三本の指に入るイケメンの先輩に向かってトテトテ走る被疑者、
被疑者に向かってどたどたと汗を撒き散らし走るノダ
被疑者が先輩に辿り着くと何かしらを告げて手紙を渡す。
ノダが遅れて走り込みその先輩に何かを告げて手紙を渡す。
......っておい!!!
と全員で突っ込みを入れてしまった。放心した笑顔で駆け戻ってくるノダ。
「彼女どんな顔で受け取ってた?目つぶっててわかんなかったけど、やっぱ嫌な顔してた?やっぱそうだよねぇ。それにしても風邪ひいてたのかな?ずいぶん低い声だったな。」
開放感と達成感に包まれた笑顔のノダに対して全員唖然としていた事は言うまでも無い。
その後、
高木某こと被疑者は無事、三年の先輩と付き合う事となったが早々に別れたらしい。先輩はといえば「ホモ殺しのモテ男」という二つ名を得ることとなる。
ノダはあまりの出来事に告白後、三日間寝込む事となった。そしてその日を境に電車通学を辞めた。
この出来事が「哀戦士」事件として語り継がれることになる。
やっと長いプロローグが終わる。こっからは、最終的にポリス沙汰へと発展する事件についての話、この物語の根幹部分「うんこを煮る」男達の話へと移りたいと思う。本当にひどい内容となります。覚悟はよろしくて?