コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

一人目 近森守男の場合2 ( No.2 )
日時: 2011/04/21 23:45
名前: 天神千尋 (ID: UAMHtL4A)

そんな暗黒時代をお互い共有し、仲良しこよしになったかと言えばそうではなく塾と学校では微妙にコミュニティが異なったのと併せて、私立中学受験組とそうでは無い組に別れ別れとなり、自然とお互いの関係も疎遠になっていった。

ここで少々自分の話。

俺は私立中学受験組。当の本人は受験というか記憶をするだけという試験勉強そのものにほとほと嫌気が差し受験をやめたい旨を母親に直訴するも、今まで塾に支払った料金明細と近所に住んでいる優等生を引き合いに強固に反対...というか半狂乱になった母親を止めることも説得することもできずに、やる気のない心と体でずるずると塾に通っていた。

いよいよ試験当日、初めての受験に緊張の面持ちで席に座っていると試験官の腕章をした、おそらく在校生が緊張を解きほぐそうと、手品を披露してくれた。

受験生は、当たり前の事だが全員小学6年生、初めて目の前で見る見事な手際の手品に「おおおお!」と感嘆の声が挙がった。そこに試験用紙の束を持ったひげ面の先生が入ってくるなり

「試験中にそんなくだらないことしていいと誰が言った!」

と試験官の在校生をぶん殴った。それを見て、

「よし!私立中学にいくのは辞めよう!」

と心に誓い、そこからの受験は全て白紙答案で終えた。ところが、ここで問題がひとつ。

当時私立中学を受験する人間は全学年に多くても5〜6人しかいないそこそこ珍しいことだった。小5から塾に通っている人間は漏れなく頭が良いと勘違いをしてくださっているため、受験に落ちるなんて想定はまったくしていない。挙句に学校内では比較的孤独...あーーえーっと、すみません嘘つきました。比較的どころか友達と呼べる人間はほとんどいなくて休み時間のほとんどを図書館で過ごし、海外物のSFをひたすら読むという暗すぎる人間でした。

そこに、当時の学校の先生が気を使ってか三学期に「さよなら会」なるものを催しするさらには、俺宛のさよなら文集なるものを作成するというまったく空気の読めない催し物を企画しているというじゃありませんか。断固反対の意思を示すも「照れるなよー」というまったく別ベクトルの返事をいただき催されることとなった。

まったく心のこもっていない、

「別の学校でも元気でね!」

というテンプレ挨拶に、

「いや来年の4月にまた会うけどなっ!」

という言葉をグっとのみこんで、ハイという返答をした時、大人の階段を登った気がしたもんです。

そんなTHE腫れ物が、楽しい中学ライフが待っているかというとまったくそんなわけがなく、学校内でも比較的アクティブなグループにいたモリワキとは自然と距離を置くようになったのです。

余談に余談を重ねますが、さよなら文集を受け取ってまっさきに、当時好きだった女子のページを開くと原稿用紙の右半分に

「がんばれ」

の四文字

左半分には、

スヌーピーっぽい犬が書き殴られており、まぁそうだよなぁとため息混じりに天井を見上げたことは内緒です。