コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 二人目 鴨志田彰浩の場合2 ( No.5 )
- 日時: 2011/04/21 01:21
- 名前: 天神千尋 (ID: UAMHtL4A)
ネギが金に執着する理由はただひとつ。
無類の音楽馬鹿なのであるが、見るor聞く専門。CDの購入やライブへの参戦に人生の殆どを費やしている、しかも、パンク専門とあって趣味を同じくする俺と仲良くなるまでにはそう時間はかからなかった。
当時、高校生が働くことができるアルバイトは非常に少ない、というかどんなに探しても元旦の郵便配達くらいしか無い。それに反比例するように時間だけは膨大にある。どうやって遊ぶ金を捻出しようかとモリワキと頭をひねっているとそこにニヤニヤ顔のネギが近づいてきた。
「儲け話があるんだけど、乗らないか?」
月の頭だというのに財布の中身はすでに500円を切っている。登校するための定期代ですら遊ぶ金に消えていった身としはまさに渡りに船、猿の目の前にバナナである。と猿顔のネギがいや、ネギ先生の講義が始まる。
「大手のCD屋に中古で売ってる100円CDってあるだろ?あれを買うんだ。」
ふんふん
「そしてそれを高く買ってくれそうな、小さな中古CD屋に転売すると結構儲かるんだよ。一枚差額が50円として10枚売れれば500円だぜ。なに、さすがに良くわかってないCD屋にいけば中古で100円切る事はないぜ。これ本当!」
これから先、ネギの「これ本当!」という台詞に何度も騙されることになるのだが、当時の俺とモリワキはネギ先生のありがたい講釈をすっかり信じて、放課後は100円CDを買い漁ろうと世界最速の交通機関(当時)ママチャリにまたがり、いそいそと3人で大手中古CD屋へ。
100円CDのワゴンセールを見つけると早速物色し始める。
やまかつウィンクか...こりゃないな。
ん?なんだこれ?バンド名、傀儡ってこれなんて読むんだ?ジャケットを見る限りだと、デスメタル系のバンドかな?
裏をめくり曲名を確認すると「電車」とか「缶ジュース」とか書いてある。まぁ面白いから買っておくかと、腋に挟んでいるとネギが声をあげる。
「おおおおおお!B'zが100円CDで売ってるーーー」
まったく持って流行に疎い俺でも名前は聞いたことがある。音楽そのものに疎いモリワキですら、聞いたことがあるという。これは掘り出し物だと3人で十枚近くのビーズのアルバムを脇に挟む。
だが、無知とは残酷である。
3人揃ってしめて千円という一週間分の昼食代にも等しい金額をはたいてCDを購入して別の大手中古CDショップへと馳せ参じる。
ネギの作戦では、
購入した店
マニアックなCD屋である為、メジャーどころは安く売る
売却する店
一般の大型店であるため、メジャーどころを高く買う
ということで、売却店に到着。ふと、売る予定のCDを一瞥すると普段テレビで見るようなB'zの印象とはずいぶん違ったジャケット写真だなぁ...と思いながら買取カウンターへ。CDを渡すとなにやら伝票のようなものに買取金額を記載している。
期待の面持ちで伝票を走るボールペンを見つめる。
3
ぃよっしゃーーーー3千円!これで明日から昼はパン二個食える!!
0
ふんふん
0
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え?あれ?300円??んな馬鹿なと愕然としている。と俺があることに気づく。
ネギおい!あれビーズじゃなくてピーズって書いてあるぞ。ぱぴぷぺぽのP!おいどういうことだ!
いやぁーーねっ、俺も今気づいた。とネギ。
ねじゃねーーーーよ。意気消沈のわれわれは、それ以外のCDを売る気力も失い、いそいそと帰宅する。
翌日より、3人の昼食はしばらく、白いおにぎりとふりかけ。ごくたまにゆで卵という極貧生活が待っていたことは言うまでも無い。
またしても余談だが、
俺とネギがが、この事件をきっかけにピーズを聞いてすっかりファンになってしまいライブに足しげく通うことになった。
そしてさらに音楽というもの自体にまったく興味を示していなかったモリワキは買ったCDをいたく気に入って、以降ブラックミュージックとディスコミュージックに傾倒していくことになる。