コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

うんこを煮るにいたったアホ4人を取り巻く人々の場合 ( No.8 )
日時: 2011/04/23 23:08
名前: 天神千尋 (ID: Q.36Ndzw)

4人目のレジェンド野田を紹介する前に重要人物を紹介していきたい。

モリワキの父ちゃんの話

再び時は遡り小学生時代。俺とモリワキが前述の塾でまだ仲良くしていた頃。
塾の授業で大魔神を筆頭にその他個性あふれる先生方に愛の鞭という名のケツバットや孫の手ビンタをくらって、痛む顔や腿をさすりながら自転車をこいでいる時。

数少ない自販機と街灯の明かりを頼りに、暗い道に目を凝らしながら大声でくだらない話に花を咲かせていた。

曰く北条政子ってなんだか俺の母ちゃんに似てるよな
曰くモリワキの父ちゃんが昔、飲み屋で絡まれたヤクザに一本背負いをお見舞いした
曰く大魔神が塾長の息子を病院送りにした

などなど、塾からの帰り道は話題に事欠くことがない周りの人間に関する情報交換をしていた。すると後ろを見ながら先頭で自転車をこいでいたモリワキが、ドン!という音と共に不意に視界から消えた。

急いで交差点に入り、右を見るとモリワキが車に轢かれていた。

のわっ!!も...もりわき!!大丈夫か?と言うとモリワキ。むっくり体を起こす。そして自分の自転車を見てみるみる顔面蒼白になる。前輪がベッコリ凹んだ自転車までよろよろと歩み寄ると一言、

「やばい、父ちゃんに怒られる!」と頭を抱えだした。

んーーーっと...無事なんだな?と俺。なんか膝が痛い、擦りむいたみたい。と、うっすら血のにじむ膝を見下ろす。車に真正面から轢かれて無事でいる小学生って一体...と思いながら、当の車を見ると86(頭文字Dの主人公が乗っている車です)のボンネットが漫画でしか見たことが無い人型にベッコリ逝っていた。そして、車内からくわえタバコでスーパーサイヤ人みたいな金髪のお兄さんが、今まさに降りようとしてきたところだった。顔を見ると青筋を立てて、タバコを千切れんばかりに噛んでいる。

あ...こ...殺されると思って逃げようと振り返ると、前輪が凹んだ自転車を肩に担いで全力疾走しているモリワキが小さく見えた。おいおいおいと、俺も自転車の前輪をサイヤ人とは反対側にターンさせると全力でペダルを漕いだ。するとサイヤ人全力疾走で追っかけてくる。文字通りデッドヒート捕まったら殺される!!という思いで必死にペダルを漕いで何とかモリワキ宅まで辿り着き、モリワキの家に入ると丁度、モリワキ父ちゃんも帰ったところらしく玄関でばったり鉢合わせた。

俺とモリワキそして肩に担がれたぼろぼろの自転車を順番に見つめるモリワキ父ちゃん。

あまりにも不思議な姿をした二人に声をかけようとする父ちゃんにちょっと待ってと言う意味をこめて右手を出して、ぜーぜーと息をついて会話ができるようになるまで数秒。
いち早く息を整えた俺が「あの」と口を開いた瞬間、ピンポーンピンポーンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンとインターフォンが連打される。明らかに怒りを表現する音である。竦みあがる俺とモリワキをそっと押しのけて父ちゃんが玄関の扉をあけて外へと向かう。そして、パタンと扉が閉まると同時にインターフォンの連打がやみ、モリワキ宅が静寂に包まれる。

そこでようやく気づいたのかモリワキが肩に担いでいた自転車を下ろす。
お互い顔を見合わせて「どどどどど...どうしよう!!!」「けけけけ...警察呼ぼう!」などとやり取りをしていると、扉の向こうから

シュバッ!ドッ!へがぁ!

という小気味よい三拍子が聞こえてきた。恐る恐る扉をそーーっと開けると、背中をしたたかに打ってノビているサイヤ人と終わった終わったと手をパンパンはたいている父ちゃんの姿があった。扉からそっと顔を出している我々に向き直ると「んで?何があった」

しどろもどろになりながら、俺とモリワキが身振り手振りを最大限に駆使して事情を説明すると、
あごをさすりながら思案顔で「んーーまぁどっちもどっちだな。」
と一言を我々に残してサイヤ人を助け起こしに行った。

「修理代いくらだ?」
「あ”?たぶんあれくらいだとボンネット全換えだから20万だよ!」
「じゃあ、どっちもどっちだからハイ」と財布から10万円を取り出すと放り投げて玄関に戻ってきた。ようやく息子であるところのモリワキを見ると
「お前、めまいとかしないか?」
「いや、別に」
「じゃぁまぁ大丈夫か。早く寝ろよ!佐藤君もな!」
と俺をジロリとにらんでリビングへ入っていった。

小学生時代にあったこの事件をきっかけにその後とてつもない出会いがあるわけだが、その話は続きで。