コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 大嫌い。*実話* ( No.10 )
- 日時: 2011/05/04 09:20
- 名前: 宇莉 ◆I/.b8govos (ID: ByQjFP4v)
第五話**
言葉がでなくなった。
大切そうに抱きしめられている未優。
まるで宝物みたいだった。
ここにいる自分はもっと無意味な気がして私は急いで自分の掃除場所に戻った。
涙なんてこぼれる余裕すらなかった。
***
自分の掃除場所に戻るとみんなも遊び半分で掃除をしていた。
そら、そうだよね…、そう思いながら私はたわしを手に床を磨き始める。
床の黒い黒い汚れをたわしでこする。
まるでさっきの光景を無我夢中で消しているかのようだった。
でもさっきの光景は、何回も何回も私の中で流れている。
さっきでなかった涙が少しでそうになった。
「結莉ー、どうした?」
「んー?」
さっきまで彼氏といた真未が私の変化に気づいた様子だった。
でも、こんなこと絶対言わない…、いや言えない。
私は目をこするふりをして、涙を拭いた。
「目にワックス入って涙でてきたのさ!」
「えっ、大丈夫!?」
「うん、大丈夫だよ!」
我ながら完璧の嘘をついた。
真未は心配そうに私の目を見つめていた。
ごめんね、真未。
私また嘘ついちゃったよ。
私の心の中のどこかで、ちくっと針がささった感覚だった。
心配してくれる友達に嘘をつく私は、床の黒い汚れみたいだ。
さっきの光景が頭に残るのと、友達に嘘をついてしまった後悔とで心に余裕ができなかった。
残りの掃除時間、私は自分の罪とさっきの光景を消すかのようにずっと同じ床を磨き続けた。
***
毎日毎日、未優の話を聞かされると共にその度に言われる一言がある。
「結莉は好きな人いないの?」
きっと未優自身、私の元彼と付き合ってるから未優なりの気遣いだと思う。
「いい人紹介しょっか?」
…いらない。そんなのいらない。
そんな気遣いいらないよ…。
未優の言葉が私にとっての負担になる。
その負担をなくすためには、未優に安心させるしかない。
そう考えた私は未優にいった。
「私、好きな人いるよ。」
未優を安心させる魔法の言葉、と共に自分自身に嘘をついた言葉。
私は何回嘘をついてるのだろうか。
とうとう自分にまで嘘ついたか、川村結莉よ!
「え!?誰?誰!?」
安心が解けたのか、私の言葉に食いつく未優。
「え…と、他中の名前を知らない人。」
「へーっ…、かっこいいの?」
「うん、とってもかっこいいです。」
「よかったじゃん!」
未優の言葉を聞きながら頭には真潮がいた。
この場にいることが耐え切れなくなった私は、未優に「じゃあまたね」といい自分の教室に戻った。
君と、未優が安心できる魔法の言葉。
これで二人は心残りなんてなくなった幸せなんだろうな…。
——本当は偽りの言葉だと知らずに。
第五話** end