コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-【部員募集中!】 ( No.113 )
- 日時: 2011/06/03 23:38
- 名前: 夕詠 ◆NowzvQPzTI (ID: aaVwXSZP)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v
【harmony.19*だぶるりーど!】
前回のあらすじ♪
私、小鳥居渚はファゴットとエレクトリックベース担当の二年生。
コンプレックスは百五十三センチの身長。
それに対して同じパートの同級生、川端下美咲は百七十センチを超えるモデル体型の美人。
隣に立つだけで身長差がハッキリして嫌なのに、美咲はガチ百合だった!
ほぼ毎日美咲からのセクハラ被害を受ける私が逃げる場所はフルートと一緒に練習中のオーボエ担当の二年生、長田楓のもと。
これで一安心!安心して練習———
「だったはずなのに……はず、なのに……」
私は溜め息を吐きながらふらつく。
すると美咲が私の肩を支えて、
「大丈夫?渚」
「……誰が原因だと思ってるんだよ。あと、手離せ。触るな」
私は美咲の手を振り払った。
ん?もしかしたら、二人っきりだから美咲もこうなんじゃないか?
っていうことは早く楓の所に行って三人になれば……
セクハラから解放される!?
そうとなったら行動といわんばかりに私は歩くスピードをだんだん早めていき、ついにはダッシュでフルートパートの練習部屋を目指す。
「ちょっと、渚。歩く……っていうか走るの早くない?」
後ろから息切れした声が聞こえてくる。
いいか、ここで情けをかけたら駄目だぞ、私!!
私はさらにスピードを速めた。
自慢じゃないが、中学時代は陸上部だったので足には自信がある。
ファゴットの練習部屋は音楽準備室の近くの教室だから北棟の四階。対してフルートは南棟の一階の生物室。
そして今は渡り廊下を通過中。
これなら一分もたたないうちに生物室に着くだろう。
「はぁ……はぁ……っ」
そんなこんなで生物室の前までたどり着いた。
さすがに全力疾走で四階から南棟の一回まで来ると疲れるな。
———あ、そういえば美咲!!
私は後ろを振り返る。
すると、
「う、うおっ!近ぇっつーの、馬鹿!!」
振り向いた目の前に美咲の顔があった。
とりあえず近い。
「渚って足早いね」
「そりゃどーも」
美咲の毎回のように発せられる“渚”にいつも通りの返事を返す。
もうこのくだり飽きるっつーに。
とりあえず、このまま教室の前にいてもアレだし、さっさと楓連れて行くか。
私はドアを開けた。
「失礼します。楓いますかー」
一言声を掛けてから教室に入るとそこにフルートの姿はなかった。
そのかわり、隣のクラの教室からフルート、クラ、サックスのメロディーラインが聞こえた。
きっと三パートで合わせているのだろう。
ただそこからオーボエの音は聞こえてこない。
じゃあ楓はどこに……。
「楓ー」
私は一応、楓の名前を呼んでみる。
が、返事はない。
「いねぇのか……ん?」
私が諦めて教室を出ようとすると、机の横から足が出ているのに気が付いた。
何であんなところから足が?
私は近寄って見てみる。
「———……楓」
そこには科学室の椅子を何個か並べたものの上に寝ている楓がいた。
開いた窓から吹き込んだ風で少し癖のある黒い髪がカーテンと一緒に揺れている。
いつも掛けているはずの眼鏡はなく、初めて見た彼の素顔は思っていたよりも整っていた。
なんだかすごく———
「綺麗」
ふいに後ろから聞こえた声にハッとして振り向くとまたもや美咲の顔があった。
「———って思ってたでしょ、渚」
私の心を見透かしたような美咲の言葉に顔が熱くなる。
「そ、そんなこと思うわけねぇだろ!馬鹿かお前は」
つい声を荒げてしまった。
すぐ隣で楓が寝てるのに、何やってんだよ私。
楓、起きてないよな?
私は楓の方を見る。
すると目をこすりながら椅子の上であぐらをかいている楓がいた。
お、起きてらっしゃる———っ!!
「ん……ことりちゃん?何でここに……」
「ことりって呼ぶな!」
私は楓を睨む。
私と楓は中学が同じで“ことりちゃん”とは、その時にクラスメイトが私に付けたあだ名だ。
よくある「あいつ名字長ぇから、あだ名付けて短縮しようぜ」なノリである。
ちなみに私はそのあだ名があまり好きではない。
何だか可愛い感じがして私には似合わないような気がするからだ。
だが何回言っても楓は人の話を聞いていないので未だにあだ名で呼んでくるのがムカつく。
「へぇー……“ことりちゃん”ねぇ」
私の後ろで美咲が呟く。
「ことりちゃんとか可愛いんだけどーっ!!」
そう言いながら満面の笑みを浮かべた美咲は私に抱き着いた。
私の背筋が凍る。
そんな光景を見て楓は、
「相変わらず川端下さんとことりちゃんって仲良いよね」
……こんのド天然が!!
「仲良くないっつーの!!つか、離れろ馬鹿!!」
私は今日一番の大声で言った。