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Re: すいぶ!-南梨高等学校吹奏楽部-【部員募集中!!】 ( No.32 )
日時: 2011/05/10 23:13
名前: 夕詠 ◆NowzvQPzTI (ID: w32H.V4h)
参照: http://www.kakiko.cc/bbs2/index.cgi?mode

【harmony.7*Let‘s study!】



「うー……」

放課後の音楽室。
私———落合菜実が音楽準備室に入ると、何やら唸り声が聞こえてきた。
結構早めに来たのでほとんどの人はまだ教室のはず。
だから可能性としては鍵を開けに来る、加賀美先輩の確率が高い。
私は棚の後ろから覗いて見ることにした。

「ん?何て読むのコレー!!」

すると棚の向こうの机にいたのは同じ学年でホルン担当の保谷ことねくんだった。
勉強をしているのか、机の上には教科書やテキストが積んである。
っていうか、初めて勉強してるの見た気がする。
正直、保谷君とは同じ部活で同じ学年なのにもかかわらず、あまり喋ったことがない。
気まずいので音楽室に戻ろうと思い、ドアに手を掛けた。
すると、足元からガタンという大きな音。

「げ……」

足元を見ると譜面台が倒れていた。
当然、保谷君もこの音に気付いただろう。
超気まずい———!!

「誰かいるのー?」

棚の向こうから保谷君の声が聞こえる。
やっぱり気づいちゃってるよー!!

「お、落合です」

あたしはやむをえず返事を返す。
そして棚の向こう側にひょっこり顔を覗かせた。

「あー落合さんか!落合さんも早く来ちゃった感じ?」

フレンドリーに話しかけてくる保谷君にあたしは頷く。
そして、机の上の教科書に視線を移して、

「保谷君、何の勉強してたの?」

「保谷君じゃなくて“こっちゃん”でいいよー!皆そう呼んでるしー」

保谷君は笑う。
こっちゃん、か……。
何かちょっと照れる。

「じゃ、じゃあ、こっちゃん。何の勉強してたの?」

あたしはもう一度同じ質問を投げかけた。
すると、“こっちゃん”に満足したのかこっちゃんはニッと笑う。
だがその表情はすぐにシュンとなって、

「英語ー。でも全然分からないんだよねー」

とペンをクルクル回す。
英語、苦手なんだ……。

なら、

「あたし、教えてあげよっか?」

あたしは髪をいじりながら言ってみた。
すると、こっちゃんは目を輝かせて、

「まじで!?落合さんが教えてくれるなら頑張れる気がするー!」

と天真爛漫な笑顔を向けるのだった。
あたしも笑みを返しながら、ペンを握った。